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しおりを挟む美沙が小さな声でつぶやいたが琥珀にはところどころしか聞き取れなかった。ふさふさのまつ毛に縁取られた目を細める。
「は?なんて?はっきり言えよ」
「琥珀くんはどう言うつもりなのっていったの。
いつも慶也にべったりして。
幼馴染だからって流石にどうなのかな?関係に甘えすぎじゃない?
好きなのはわかるけど、流石に恋愛感情とかじゃないのよね?そうだとしたら…」
「そうだとしたらどうなんだよ」
琥珀は美沙の言葉に動揺することなく、ブレザーのポケットに手を突っ込みヘーゼル色の瞳で美沙を睨みつけた。
「はっきり言うけど気持ち悪いんじゃないかな?
慶也には気がないのにずっと付き纏って
そんなの迷惑極まりないんだから、いい加減に気づいた方がいいよ」
「けど、慶也は別に何も…」
美沙にだけは弱いところは見せたくないと思いつつも、美沙の言葉にいつものような軽快な口調で言葉を返せない。
それはそんなことはないと否定しつつも頭の隅では捨てきれずにいた思いだったからだ。
「ずっと一緒にいてわかるでしょ?
慶也はすごく優しいの。慶也はずっといえないと思うから私の方から言うけど。
唯一の幼馴染を邪険に扱えないんだよ。琥珀くんの存在が迷惑かも知れないのに。
慶也のそんな性格をわかってて、邪魔をしてくる琥珀くんは一番性格悪いよね。」
美沙は感情を荒げることなく淡々と告げる。
「あと、琥珀くんはもしかしたら慶也が私と仕方なく付き合ってると思うかも知れないけど、今度、向こうから誘われて2人きりで旅行にも行ってくるんだ」
美沙はそう告げながら徐々に口角を上げていく。
その言葉を聞いて、琥珀の胸は締め付けられるように痛む。
慶也は今まで恋人に対しては消極的で自分から何かアクションを起こすことはなかった。
そのため、今までの彼女たちには慶也が本当に自分のことを好きなのかわからないと告げられることも多かった。美沙もどうせ慶也と同じ扱いを受けていると思っていた琥珀は衝撃を隠せない。
もしかしたら美沙とはこのままずっと付き合って結婚をして子供が産まれて…なんてしたくもない想像をしてしまった。そんなわけないかと思いつつ可能性が捨てきれない。自分には訪れることのない未来。
それくらい慶也がそんな行動に出るとは思えなかったのだ。
「帰りは慶也と一緒に帰るからこのジャージも返しておくよ」
美沙は突然、微笑みを浮かべると、琥珀の腕の中にあったジャージに手を伸ばして力強く腕を引き、自分の腕の中に慶也のジャージを収める。その微笑みには慶也の恋人という余裕が含められていた。
琥珀に背中を向け、早足にその場を去っていった。
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