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繋がりはあっという間に

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数日後

恵麻は金剛家の当主である秀仁の元へと向かった。


「秀仁様、失礼致します」

「なんだ」


部屋の奥に座る秀仁の背筋はピンとのびて、全く隙を感じさせない。
座っているだけなのに厳格な人だということが伝わる。


「お話があるのです」


恵麻は全てのことを話す。


「そうか
ならお前にもう用はない
この家を去れ
あいつには別の女を当てる」

「……はい
今までありがとうございました」


恵麻は秀仁に子供ができにくい体であり、妊娠する可能性が極めて低いという現実を秀仁に告げた。

秀仁は恵麻の話に表情一つ変えることなく、この家を離れることもすんなりと受け入れた
恐らく、恵麻がこんな話をしなくても家から離すことを考えていたのだろう。

長い付き合いであったのに、特に話すこともなくすぐに部屋を出る。

恵麻の覚悟はもう決まっていた。

すでに自分の欄だけ書き終えていた離婚届を引き出しから取り出す。
ここ数日間、何とかして伊織のそばにいれないかと悩みを巡らせたが、結局は出ていくという答えに辿り着いてしまう。
それ以外の選択肢がないのだ。

子供が産めなければ、いても意味がない。
そんな世界を選んだのは自分だ。
部屋の机に離婚届を置き、普通ならその横には婚約指輪が添えられるものだろうが、恵麻は伊織にそんなものはもらっていない。

結婚も突然だった。


「なあ恵麻ちゃん、今日これ書いといて」

「…はい?」


部屋で畳に片肘を付いて頭を支えながら寝ていた伊織が着物の裾から取り出した白い紙
それを渡すと、伊織は寝返りをうち恵麻に背向けた

渡された紙が何かの重要書類なのかと思いながら開くと、そこには婚姻届と記された紙に伊織の美しい文字で名前や本籍やらの情報が記されていた


「伊織様!これって…!!」

「ええからはよ書いて
うっさいねん」

「はい!!」


ぶっきらぼうな態度をとる伊織に対して笑顔を浮かべながら、寝そべる伊織に近づき見た目は細いながらも筋肉質な広い背中にそっと手を添えた。

この人の側に一生いれる。
たかが紙切れ一枚で結ばれた契約であったが嬉しさで脳が興奮してしまい、その日の夜は眠れなかった。

つい昨日のことのように記憶が蘇り、表情を曇らせた。
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