4 / 29
浮気は堂々と
しおりを挟む結婚後も伊織の浮気は続いていた。
そして、金剛家の人間も恵麻には冷めた態度を取る。
「私の存在って…」
誰もいない和室の真ん中に三角座りしながら、両膝に顔を伏せる。
今日も金剛家の人間と会うことがあったが、使用人以外誰一人として恵麻に声をかけようとせず、声をかけても無視をされる
嫁いでからそんな毎日が続き、ポジティブであることに自信があるはずなのに日に日にいつか見捨てられるのではないかという不安が募った。
このような対応をされていることを知っていながらも伊織は放置しているのだから余計だ
しばらく膝に顔を埋めながらぼーとしていると、戸が開かれそこには伊織がその姿に不審そうな目を向けた。
珍しく仕事を早く切り上げてきた伊織に対して、嬉しさから笑顔が浮かび、立ち上がって伊織の元に駆け寄る。
いくら冷たくあしらわれても伊織を愛することには変わりはない。
夫が早く帰ってきてくれることに心が躍った。
「え?恵麻ちゃん?
こんなとこで何してるん??
座敷童子かと思ってビビってもうたわ」
「申しわけ」
口癖になってしまった謝罪の言葉を言い切る前に、伊織が言葉を遮る。
「謝らんでいい
で、この部屋使いたいからちょっと出てってもらってもええ?」
伊織の後ろにいたのは美しい女
露出の激しい派手な色のワンピースを着た女は伊織の広い背中に擦り寄り、部屋の中にいた恵麻を睨みつけた。
これからこの人と…
伊織が早く帰ってきた理由をその瞬間悟った。
「……承知しました」
小さく頷き、伊織達の方を見ることなくスッと横を通り過ぎる
伊織は恵麻が横を通り過ぎる瞬間、眉間に皺を寄せ不機嫌な顔になっていった。
「鬱陶しいねん…」
小さくつぶやいたその声は恵麻の耳元で何倍にも大きくなって響いていく。
荒々しい音を立ててしまった戸の奥からは2人の声が聞こえてきた。
恵麻の目の前は浮き出てきた涙によって霞み、体をふらつかせながら歩いていたせいか家の柱に大きな音を立てて体をぶつけてしまい、恵麻はその場に倒れ込んでしまう。
その音が響いた直後、伊織が部屋の戸が勢いよく開き、恵麻を見て目を丸くした。
伊織の着ていた着物は情事が始まろうとしていたのか乱れていて、引き締まった体がチラチラと見え、恵麻はその色気から視線を斜め下に逸らした。部屋の奥では下着姿になった女が恵麻を睨みつけていた。
8
お気に入りに追加
81
あなたにおすすめの小説
[完]僕の前から、君が消えた
小葉石
恋愛
『あなたの残りの時間、全てください』
余命宣告を受けた僕に殊勝にもそんな事を言っていた彼女が突然消えた…それは事故で一瞬で終わってしまったと後から聞いた。
残りの人生彼女とはどう向き合おうかと、悩みに悩んでいた僕にとっては彼女が消えた事実さえ上手く処理出来ないでいる。
そんな彼女が、僕を迎えにくるなんて……
*ホラーではありません。現代が舞台ですが、ファンタジー色強めだと思います。
【完結】昨日までの愛は虚像でした
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
公爵令息レアンドロに体を暴かれてしまった侯爵令嬢ファティマは、純潔でなくなったことを理由に、レアンドロの双子の兄イグナシオとの婚約を解消されてしまう。その結果、元凶のレアンドロと結婚する羽目になったが、そこで知らされた元婚約者イグナシオの真の姿に慄然とする。
【完結】婚約者を譲れと言うなら譲ります。私が欲しいのはアナタの婚約者なので。
海野凛久
恋愛
【書籍絶賛発売中】
クラリンス侯爵家の長女・マリーアンネは、幼いころから王太子の婚約者と定められ、育てられてきた。
しかしそんなある日、とあるパーティーで、妹から婚約者の地位を譲るように迫られる。
失意に打ちひしがれるかと思われたマリーアンネだったが――
これは、初恋を実らせようと奮闘する、とある令嬢の物語――。
※第14回恋愛小説大賞で特別賞頂きました!応援くださった皆様、ありがとうございました!
※主人公の名前を『マリ』から『マリーアンネ』へ変更しました。
【完結】巻き戻りを望みましたが、それでもあなたは遠い人
白雨 音
恋愛
14歳のリリアーヌは、淡い恋をしていた。相手は家同士付き合いのある、幼馴染みのレーニエ。
だが、その年、彼はリリアーヌを庇い酷い傷を負ってしまった。その所為で、二人の運命は狂い始める。
罪悪感に苛まれるリリアーヌは、時が戻れば良いと切に願うのだった。
そして、それは現実になったのだが…短編、全6話。
切ないですが、最後はハッピーエンドです☆《完結しました》
イケメンな幼馴染と婚約したのですが、美人な妹に略奪されてしまいました。
ほったげな
恋愛
私はイケメン幼馴染のヴィルと婚約した。しかし、妹のライラがヴィルとの子を妊娠。私とヴィルの婚約は破棄となった。その後、私は伯爵のエウリコと出会い…。
婚約者が他の令嬢に微笑む時、私は惚れ薬を使った
葵 すみれ
恋愛
ポリーヌはある日、婚約者が見知らぬ令嬢と二人きりでいるところを見てしまう。
しかも、彼は見たことがないような微笑みを令嬢に向けていた。
いつも自分には冷たい彼の柔らかい態度に、ポリーヌは愕然とする。
そして、親が決めた婚約ではあったが、いつの間にか彼に恋心を抱いていたことに気づく。
落ち込むポリーヌに、妹がこれを使えと惚れ薬を渡してきた。
迷ったあげく、婚約者に惚れ薬を使うと、彼の態度は一転して溺愛してくるように。
偽りの愛とは知りながらも、ポリーヌは幸福に酔う。
しかし幸せの狭間で、惚れ薬で彼の心を縛っているのだと罪悪感を抱くポリーヌ。
悩んだ末に、惚れ薬の効果を打ち消す薬をもらうことを決意するが……。
※小説家になろうにも掲載しています
痛みは教えてくれない
河原巽
恋愛
王立警護団に勤めるエレノアは四ヶ月前に異動してきたマグラに冷たく当たられている。顔を合わせれば舌打ちされたり、「邪魔」だと罵られたり。嫌われていることを自覚しているが、好きな職場での仲間とは仲良くしたかった。そんなある日の出来事。
マグラ視点の「触れても伝わらない」というお話も公開中です。
別サイトにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる