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第一幕:双翼の出会い
012弱者の枷の外し方
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「面白い訳があるか!!」
本気の思いをからかうように零した言葉だ。
ヒトが食って掛かるのは仕方がない。
しかし我にも言い分がある。
<お前にとっては意味があるのだろう。
だが我にとっては未知の話で、興味を惹く話でもある>
「俺を馬鹿にしているのか?」
<全くその気は無いが……ただ馬鹿ではあると感じている>
「なんだと!?」
語気が荒くなるのは怒りの証拠だろうか。
すぐに感情が…表情に上っているようにも見られる。
まぁ、種族の違う我ではヒトの感情の機微など…いや、相手が竜でも我には分からんか。
ともかく現実を突きつけてやろう。
とても鋭く、厳しい現実というものを。
<我に挑んだ相手の中で、一番『厄介』だと感じたのはお前ではない>
「ッ!?」
我の言葉にびくりと身を震わせる。
背筋が凍るような、過去に追い詰められる度に感じた、ヒリつくような危機感をヒトに見る。
やはり求める強さを否定される言葉は身に沁みるものなのかもしれないな。
<お前は確かに強い。
そしてその強さはヒトの中で群を抜いてはいるが、所詮その程度だ>
「…厄介だと思ったのはどんなやつだ」
<複数人で構成される『パーティ』と呼ばれる集団だ>
「………」
ふむ…我の答えに無言で応じる、か。
気付いてはいても認められないのかもしれん。
やはりこの現実はヒトには厳しすぎるものだろう。
<お前のように個でどれだけ何でもできても、対応の幅には限度がある。
強度、反応、範囲、選択肢…いくら強くとも、個での限界はすぐそこ…そうだな、種族の限界・格差とでも言えば理解が及ぶか?>
ヒトは前足を強く握って我の言葉を聞く。
我が憐憫の眼差しを向けていることにも気付いているかもしれん。
そこには脆弱さを抱える、ヒトの限界が横たわるからだ。
<その限界を集団で乗り越えるようでな。
それぞれが持つ技術もさることながら、集団から繰り出される『選択の幅』には常々驚かされたものだ>
「だが…ッ!」
<だがお前の考えも分かる。
比肩するだけの味方が存在しないから、仕方なく、個で戦っているのだろう?>
反論を許さず、重ねるように言葉を掛ける。
そう、ヒトという種族の範疇において、こいつほど個として強い者は居ないのだ。
初めて我から『逃げ帰った』のは伊達ではないわけだな。
「だったらその分余計に俺が強くなるしかないだろう!」
<お前よりも強いモノを前にして使う言葉ではないな>
「ならどうしろと!」
我がヒトを『殺す気』で戦えば、逃げ帰ることなど一度として叶わない。
たとえば竜をも引き裂く空間圧縮を使えば一瞬だ。
この火山ごと燃やせば、逆に冷やせば、埋めれば、潰せば…本当にいくらでも方法があって、そのいずれもが死へと導ける。
正確には『ヒトを含めた一帯を殲滅できる』と言うべきかもしれんが、これを『個で防ぐ』ことはほぼ不可能だ。
特に『範囲を守る』なんてのは更に輪を掛けて不可能事に分類されるだろう。
個体数が多く、それぞれの差も大きいこの種族は、殊更に『多様性』に優れるといった歪さを抱える。
我のところに来た者達が総じて『例外』だと考えれば、そういう結論にも至る。
反面、ヒトとは種族としてそれだけに弱く、限界も低いのだろうともな。
個では大敗を喫するその種族格差を、集団へと問題をすり替えて方法を模索した。
それは単に手数や方法に加え、出力が個とは全く変わってくる。
そういえば幻惑魔法とやらで洗脳されかけたことがあったか…。
ある意味で弱者が強者の背後を突くための技術の一つと言えるかもしれんな。
しかしいくら技術を、道具を、そして体躯を鍛えたところで、圧倒的な力の前では無意味になる。
確かに数も力の一つだが、我を倒すために数万の輩を集めたところで、範囲の全てを薙ぎ払えば良いだけの話なのだから。
要は相手取る敵戦力の総量よりも勝っていれば良いだけ。
後はその差が有利・不利の条件が介在する程度であれば健闘もできるだろう。
それこそ勝負は時の運というように、勝つ可能性も出てくる。
しかし結局のところ、ヒトという『弱者の枷』を外さない限り、今の我には脅威ですらない。
そんな些細な問題よりも重要なのは、我以外に負けてもこいつは死ぬということだ。
その敵が、我より強かろうが弱かろうが関係ない。
こやつが負ければ…いや、負けずとも、そして相手の強さなど関係なく死ぬ。
かの種族は、矮小で、脆弱で、狡猾で、凶暴で、強靭で、そしてやっぱり何処までも脆いのだ。
そんな『答え』を見出して感じる。
喧嘩相手を失くすのは嫌な気分だ、と。
そして今までと同じように、我は我が思う通りに行動する。
<うむ、仕方がないから我が共に行こう>
そう、これがヒトが問うた「どうすればいい?」に対する一番の解決策なのだからな。
本気の思いをからかうように零した言葉だ。
ヒトが食って掛かるのは仕方がない。
しかし我にも言い分がある。
<お前にとっては意味があるのだろう。
だが我にとっては未知の話で、興味を惹く話でもある>
「俺を馬鹿にしているのか?」
<全くその気は無いが……ただ馬鹿ではあると感じている>
「なんだと!?」
語気が荒くなるのは怒りの証拠だろうか。
すぐに感情が…表情に上っているようにも見られる。
まぁ、種族の違う我ではヒトの感情の機微など…いや、相手が竜でも我には分からんか。
ともかく現実を突きつけてやろう。
とても鋭く、厳しい現実というものを。
<我に挑んだ相手の中で、一番『厄介』だと感じたのはお前ではない>
「ッ!?」
我の言葉にびくりと身を震わせる。
背筋が凍るような、過去に追い詰められる度に感じた、ヒリつくような危機感をヒトに見る。
やはり求める強さを否定される言葉は身に沁みるものなのかもしれないな。
<お前は確かに強い。
そしてその強さはヒトの中で群を抜いてはいるが、所詮その程度だ>
「…厄介だと思ったのはどんなやつだ」
<複数人で構成される『パーティ』と呼ばれる集団だ>
「………」
ふむ…我の答えに無言で応じる、か。
気付いてはいても認められないのかもしれん。
やはりこの現実はヒトには厳しすぎるものだろう。
<お前のように個でどれだけ何でもできても、対応の幅には限度がある。
強度、反応、範囲、選択肢…いくら強くとも、個での限界はすぐそこ…そうだな、種族の限界・格差とでも言えば理解が及ぶか?>
ヒトは前足を強く握って我の言葉を聞く。
我が憐憫の眼差しを向けていることにも気付いているかもしれん。
そこには脆弱さを抱える、ヒトの限界が横たわるからだ。
<その限界を集団で乗り越えるようでな。
それぞれが持つ技術もさることながら、集団から繰り出される『選択の幅』には常々驚かされたものだ>
「だが…ッ!」
<だがお前の考えも分かる。
比肩するだけの味方が存在しないから、仕方なく、個で戦っているのだろう?>
反論を許さず、重ねるように言葉を掛ける。
そう、ヒトという種族の範疇において、こいつほど個として強い者は居ないのだ。
初めて我から『逃げ帰った』のは伊達ではないわけだな。
「だったらその分余計に俺が強くなるしかないだろう!」
<お前よりも強いモノを前にして使う言葉ではないな>
「ならどうしろと!」
我がヒトを『殺す気』で戦えば、逃げ帰ることなど一度として叶わない。
たとえば竜をも引き裂く空間圧縮を使えば一瞬だ。
この火山ごと燃やせば、逆に冷やせば、埋めれば、潰せば…本当にいくらでも方法があって、そのいずれもが死へと導ける。
正確には『ヒトを含めた一帯を殲滅できる』と言うべきかもしれんが、これを『個で防ぐ』ことはほぼ不可能だ。
特に『範囲を守る』なんてのは更に輪を掛けて不可能事に分類されるだろう。
個体数が多く、それぞれの差も大きいこの種族は、殊更に『多様性』に優れるといった歪さを抱える。
我のところに来た者達が総じて『例外』だと考えれば、そういう結論にも至る。
反面、ヒトとは種族としてそれだけに弱く、限界も低いのだろうともな。
個では大敗を喫するその種族格差を、集団へと問題をすり替えて方法を模索した。
それは単に手数や方法に加え、出力が個とは全く変わってくる。
そういえば幻惑魔法とやらで洗脳されかけたことがあったか…。
ある意味で弱者が強者の背後を突くための技術の一つと言えるかもしれんな。
しかしいくら技術を、道具を、そして体躯を鍛えたところで、圧倒的な力の前では無意味になる。
確かに数も力の一つだが、我を倒すために数万の輩を集めたところで、範囲の全てを薙ぎ払えば良いだけの話なのだから。
要は相手取る敵戦力の総量よりも勝っていれば良いだけ。
後はその差が有利・不利の条件が介在する程度であれば健闘もできるだろう。
それこそ勝負は時の運というように、勝つ可能性も出てくる。
しかし結局のところ、ヒトという『弱者の枷』を外さない限り、今の我には脅威ですらない。
そんな些細な問題よりも重要なのは、我以外に負けてもこいつは死ぬということだ。
その敵が、我より強かろうが弱かろうが関係ない。
こやつが負ければ…いや、負けずとも、そして相手の強さなど関係なく死ぬ。
かの種族は、矮小で、脆弱で、狡猾で、凶暴で、強靭で、そしてやっぱり何処までも脆いのだ。
そんな『答え』を見出して感じる。
喧嘩相手を失くすのは嫌な気分だ、と。
そして今までと同じように、我は我が思う通りに行動する。
<うむ、仕方がないから我が共に行こう>
そう、これがヒトが問うた「どうすればいい?」に対する一番の解決策なのだからな。
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