せめて1話だけでも。orz

RaRi/daruma

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2章 既に狂っていた歯車の露見

9話 嚆矢の法

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「さて、じゃあ戻ろうか」


 刀祢とヤルダバオトは現在、最初に降り立った森の中の草原にて刀袮の鞄を取りに来ていた。


「宿ってどこをとるんだ?」


「あー、無料の所があるからそこに泊まるよ」


「ほーう、そんな所があるのか?」


「うん。冒険者ギルド正式名称ラスオイキ王国直下冒険者統括ギルドっていうんだけどね。まぁ、名前の通り国が運営してるんだよ」


「ふーん、つまり国運営で初心者待遇してくれてるってことか」


「そうだよ、まぁあとあと払わされるんだけどね」


「ふーん、そういうことね」


 ♦♢♦♢


 宿屋


「二人で一部屋か二部屋どっちでもいいんで、安い方お願いします」


 そう言うと宿屋の男は無愛想に鍵を渡し「階段上がった右の部屋」とだけ告げる。


「ありがとう御座います。よし、行こうか」


 ヤルダバオトが扉をあけて中に入る。以外にも中は広くベッドも二人分ある。


「タダにしてはなかなかいい部屋だな」

「まぁ宿屋ここは後で払わされるけどね。まぁすぐに辞めちゃったら払わないんだけど」


「あ、だからいい部屋なのか」


「うん、そう言うこと」


 そうか、出世払いだから後で根こそぎ持ってかれるってことなのか。国もなかなかやるな。


「さて、僕は夜ご飯買いに行ってくるから刀袮はそのさっき貰った本読んどいて」


 そう言うと鞄の中から一冊の本を出す。まぁまぁな重量があるし結構ボロボロだ。


「ん?この本って中何が書いてあるんだ?かなりうす汚れてるけど」


「これは、貸し出して初心者の皆が読んでるからね。これでもいい素材使ってるんだよ。

 まぁこれは初心者向けの説明書みたいな感じでいろんなことが書いてあるよ」


「そうなのか。じゃあ読んどく」


「じゃあ行ってくるね。鍵もってくから」


「ん、了解。行ってら」


 そう言われるとヤルダバオトは外へ出て行った。


「ふぅぅ。今日は、濃厚な一日だったな」


 そう、一息つき大きなため息を吐く。


「さてと、本でも読むかな」そう思い刀祢は、まぁまぁな重量のある初心者本を手に取ると、目次から読み始める。


 この本について、周辺地図、周辺魔獣出没地とその特性、周辺薬草植生地とその特性、、、そんな風に続いていく目次の中で刀祢はある単語を探す。

 あっあった。183ページ、魔法について。ここだ。刀祢は目的の単語を見つけて183ページを開き読み始める。


 魔法、、、魔力(→183)を使い、生物、物等に本来ない力を与える。魔法には、〈身体魔法〉(→183)、〈属性魔法〉(→183)、〈空想魔法〉(→183)の三種類に分けられる


 魔力、、、生命活動において無くてはならない物。魔法(→183)を使えない者でも必ず持っている。


 〈身体魔法〉、、、魔力(→183)を、体の一部又は、全身に流し体の筋力を増大させたり、体を硬化させたりする。主に、前衛職(→216)等が好んで使う。他に〈属性魔法〉(→183)〈空想魔法〉(→183)がある。


 〈属性魔法〉、、、魔力(→183)を解放できる杖(→245)や指輪(→245)、カード(→245)等に流し解放し解放した瞬間に、解放した魔力を精霊(→85)に与えその力の片鱗を借りる。

 属性は、基本精霊(→85)と同じ、地(→85)、水(→85)、風(→85)、火(→85)の属性がある。

 又、〈空想魔法〉(→183)の使える者は、〈属性魔法〉(→183)が使えない。


 〈空想魔法〉、、、魔力(→183)を、自分の中で変化させ通常の人間ではできない事をする。

 この魔法は、生まれつきの才能(正確な要因は不明)のため、使用者、使用効果は人により異なる。


 そこで、刀祢は、一度本を置き感動する。目に前の本は、刀祢が本屋で買ったものではなく国が発行する、事実のみが書かれた本。つまり、妄想や、絵空事ではなく本当のこと。


 そんな事を考えながら、また本を読み始めようとすると、ドアの鍵が開きヤルダバオトが姿を現す。


「ただいま。ちゃんと読んでた?」


「おかえり。あぁ、と言ってもまだ全然読めてないけどな」


 そんな事を話しながら中に入る。


「なぁ、さっそくそのやり方を教えてくれよ」


「そのつもりだよ。明日からは本格的に戦闘訓練をしていくからね。それに刀袮の能力も調べたいし」


「能力って具体的にどんなんなんだ?」


「まぁ、取りあえずご飯食べながら話そう」


 そう言うと、ヤルダバオトは、腰の鞄をおろし、備え付けの椅子に座ると、鞄から何かを取り出して刀祢に投げ渡す。


「おっと、あぶねぇなぁ」


 そう言って、刀祢はベッドに腰を掛けるとヤルダバオトが投げた物の包みをはがす。すると中から、一般的なサンドイッチが顔をのぞかせる。


「おぉ、サンドイッチね。この世界にもあったのか」


 そう言って刀祢はサンドイッチにかぶりつくと、先程の会話に戻す。


「んで、能力ってどんなのなんだ?」


「言ってなかったね。能力は他の世界、具体的に言えば能力のある人間が一般的にいる世界の所から能力データだけ拝借してきたんだよ」


「まーた、盗んできたのか。というか、能力って代理が持ってきたんじゃないのか?」


「人聞きの悪い、借りたんだよ。正確には代理さ、、、代理に許可をとって僕が集めたんだよ。因みに刀祢の能力は僕の神様パワー、嚆矢こうし〈啓示〉けいじで調べるよ」


「嚆矢の法?」


 刀祢は聞きなじみのない言葉を聞きおうむ返し的に聞き返すと、ヤルダバオトは丁寧に説明する。


「嚆矢の法、嚆矢ってのは最初とか始めとかの意味があるんだよ。で、法はルールとかかな。まぁつまり一番初めのルールかな。前話したエンセスター様がお創りになった魔法みたいな感じかな。で、その中に〈啓示〉っていう簡単に言うとステータス開示みたいなのがあるんだよ」


「ふーん、まぁそれを使えば俺の能力がわかるんだろ?早くやってくれよ」


 そう喜々としながらいう刀祢に、ヤルダバオトは立ち上がると軽く了承する。


「うん、いいよ。じゃあ、あっち向いてなんも考えずにボーっとしてて」


 そう言って、刀祢に背中側を向かせると背中に手を当てる。


 うっ、なんかあったかくなってきた、心地よいむくもりだ。まるで、、、そこまで考えると、ヤルダバオトが「終わったよ」と少し疲れ気味に話し掛ける。刀祢はそこで思考を停止させると、ヤルダバオトの方に向き直る。ヤルダバオトは、少し汗をかいていた。


「そんなに疲れたのか?」


「しょうがないだろ、まだ20回目なんだから」


 そう、言われ少し他ごとに思考が傾くが、すぐに打ち消すと、自身の能力について尋ねる。


「で、能力は何だったんだ?やっぱり、強い攻撃特化の剣士か?いや、魔法使いもいいな。それとも指からビーム出たりするのか?」


「指からビームも出なければ、目からも出ないよ。刀祢の能力は〈感情縦横〉だよ」


 そう告げる、ヤルダバオトだった。

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