せめて1話だけでも。orz

RaRi/daruma

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2章 既に狂っていた歯車の露見

8話 受付嬢

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「ようこそ、冒険者ギルドへ」


 ヤルダバオトが、扉を開けると中からそんな声が聞こえた。緑をメインに肌色ペールオレンジと茶色を使った服を着ている女性。他にも同じ服を着ている人がいるのでここの制服だろう。そんなことを考えていると先程の女性(便宜上、受付嬢と呼ぶことにする)が、話し掛けてきた。

「ここへは、初めてですか?」


 そう言われてヤルダバオトが刀祢を指さしながら答える。


「はい、この子と、僕の冒険者登録をしにきました」


「登録ですね。ではこちらに記入してください」


 そう言って受付嬢は、カウンターの棚から羊皮紙とペンを2セット出す。ヤルダバオトはスラスラと羊皮紙に記入していく。しかし、刀祢の手は一向に動かない。


「あ、ごめん。わからないよね。取りあえず、僕が書くよ」


 そう言うと刀祢の紙を取り、サラサラと書いていく。刀祢は、そんなヤルダバオトを見ながら内心テンションが上がっていった。なぜならば、刀祢に渡された羊皮紙には、名前や出身地の他に戦闘経験や魔力量などライトノベルなどでしか見ないような文字がならんでいたからである。


「はい、書けましたよ」


 ヤルダバオトはそんな刀祢を、気にも留めず、受付嬢に羊皮紙を手渡す。


「はい、ありがとうございます。トウヤ様とヤルダバオト様ですね」そう言いながら受付嬢は水晶玉の様な物を取り出す。


「こちらに魔力を流して下さい」


 きた、魔力。でも魔力を流すってどうやるんだ。そう考えているとヤルダバオトは、そそくさと水晶玉に手をかざした。


「では、お願いします」


 受付嬢がそう言うと、水晶玉が紫色に光だす。受付嬢が「ありがとうございます」と言うと、水晶玉の光は消える。


「ではトウヤ様も」


「(そう言われてもなぁ。なぁヤルダバオトどうやるんだ?)」


「じゃあ手を水晶玉にあてて」


 そう言われて水晶玉に手を当てるとヤルダバオトが上に手を置き指の間に手を絡める。


「ちょっと恥ずかしい。いやだいぶだな。いやいや、ヤルダバオトは男なんだぞ、てか頭近いし心なしかいい匂いがする気がすrん?ヤルダバオト自身の口から男って聞いてないなぁ、、、まさか、いやそんなでも」そんな事を考えているとヤルダバオトから小言を言われる。


「ほら、集中して」


「お、おう」


 やべ、かわいおっとこれ以上考えると座らなきゃいけなくなってしまう。集中しよ。


 そして集中しだすと水晶玉がほのかに紫色しかし先程のヤルダバオトよりは薄く小さく光る。

「おぉ、光ったぞ」


 だが、すぐにしゅんと消えてしまう。


「はい、ありがとうございます。では、登録は完了です。何か質問などありますか?」


「いえ、特には」


「はい、ではこちらをお持ち下さい」そう言うと本1冊と透明の液体が入った瓶4本を差し出す。


「こちらは、初心者の方用の教本です。最初のうちはよく読んでおいて下さいね。このエリシキル剤のことも書いてあるので。では、また明日改めてお越しください。冒険者カードを発行しますので」


 そう言うと受付嬢が深く頭を下げる。


「はい、了解です」


 そう言って刀祢とヤルダバオトは冒険者ギルドを後にするのだった。


 ♦♢♦♢


 刀祢とヤルダバオトは街を観光ヒマつぶししていた。

「なぁ、俺って体操服だけどいいのか?なんかよくある感じだと「不思議だが上質な生地だ貴方は何処かの貴族様ですか?」的なのが来るだろ?まだかよ?」


 刀袮はヤルダバオトにそう問う。


「まぁ僕もそこは危惧していたんだよね。だからわざわざ服を森の中においてきてもらったんだし。まぁ後で取りに行くけど。」


 そう、刀袮が着ていた学ランと鞄などの持ち物は全て森の中においてきている。幸い今日は体育だったので刀袮は現在体操服だ。刀袮いわく「いや、異世界で体操服て少なくとも学ランやろ」である。たまにでる似非関西弁である。


「いや、体操服でも充分変だろ」


「まぁそうなんだけど学ランよりかはボロボロってかボロいね。どんな着かたしたらそうなるのさ」

「まぁ体動かすことは好きだしな。」


「まぁそのおかげで、冒険後ぐらいには見えるんじゃないの(棒読み)」


「なんか後半棒読みじゃなかったか?」


「そんなことないよ。それより洋服屋さんにいくよ。とりあえず服と鞄揃えたいし」


「え、金なんかあるのか?俺日本円しかないぞ。てか日本円の異世界って何かいやだな」



「あぁ、そのへんは大丈夫。さっきぶつかった人からくすねたから」


 こいつちゃっかりしてやがる。


「おい、それ犯罪とかじゃないのか?やだぞ異世界牢獄ライフなんて」


「まぁ悪い事といえば悪いんだけど相手盗賊だったし」


「え、そんなこと分かるのか?」


「まぁね。種がわかるようになったら君も一人前だよ。ほら行くよ」


 そんなことできるのか。やはり神はすごいのかもしれないと思った刀袮だった。


 ♦♢♦♢


「いらっしゃいませ、洋服店でございます。なにかお探しのものはお有りですか?」


 洋服店に入るやいなや女性の店員が話しかけてきた。


「はい、適当にこの子の服と後冒険にも使えそうな鞄を二人分お願いします。」

 と言いながチャラチャラ音のする袋を渡し。「これで足りる分で」と付け足した。


「はい、かしこまりました」


 そう言って足早に中へと入っていく。


 数分話していると中から洋服店の店主が服と鞄を抱えて出てきた。


「こんな感じでどうでしょう?」


「ほ、ほら来たよ。着てみ」


「こちらが試着室です」


 そう促され刀袮は試着室に入っていく。


「お連れ様、こちらの鞄のご確認をお願いします。」


 そう言われてヤルダバオトは、鞄の確認をする。材質も魔物の革だろう。腰からかけるタイプだし薬等も入れるスペースもある。


「はい、これでいいです」


「では、後は服の方ですね」


「あ、服も購入でいいですよ」


 そうヤルダバオトが告げると店員はヤルダバオトに問いかける。


「ご確認されなくて大丈夫ですか?」


「はい、多分似合うんで」


「そうですか。ではこちらが残りの硬貨になります」


 そう言いながら店員は硬貨の入った袋をヤルダバオトに手渡す。


「はい、ありがとうございます」


 ヤルダバオトは中を確認してそう言う。


 すると試着室の中から刀袮が出てくる。


「サイズもぴったりだな。うんこれでいいぞ」


「だろうと思ってもう買ってるよ。もう要はないし行こっか。ありがとう御座います」


「そうか」


「ありがとう御座います。またお越しください」


 軽い会釈をして洋服店から出ていく。


「さぁ、次は服を取りに行って宿を取ろうか」


「そうだな」


 少し冒険者らしくなった二人なのであった。


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