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前に住んでいた家の住人がいなくなってしまい、昨年うちにやって来た。色々あって、今はこの古屋敷で一緒に暮らしている。
オンボロな見た目に相応しく、神様の次は座敷童子と、我が家は奇想天外な同居人に事欠かない。
「今夜は節分だから、恵方巻食べた後に豆まきするよ。シュンも一緒にやろう!」
「やるやる! 夏也、恵方巻作ってるの? 俺も手伝う!」
「ありがとう。じゃあ台所に戻ろうかな……という訳で、味見は結構です。福豆もそれ以上食べないように!」
「ちぇー」
私は神様に睨みをきかせると、シュンと恵方巻を作りに向かった。
材料はご飯と海苔、ネギトロとサーモンに、きゅうり、大葉、さっき焼いて冷ました卵焼きだ。ご飯にも既に酢と出汁を混ぜてあった。
いくらも欲しかったが、財布に相談したところ丁重に断られてしまったので、鬼に笑われそうだが来年こそはグレードアップを図れるようにしたい。
「これをくるくる巻いて……」
「うんうん」
シュンは器用に私の真似をして恵方巻を巻いていく。彼は、いつもぐうたらな神様より、よほど家事を手伝ってくれていた。
「よーし、出来たぞ! じゃあ、みんなで恵方を向いて食べよう!」
「願い事しながら、喋らないで食べるんだよね」
「そうそう、うっかり話さないようにしなきゃね」
私は恵方巻と一緒に、先程回収した福豆と梅干し、昆布を湯呑みに入れて煎茶を注いだ「福茶」を用意して居間に戻った。
「待ちかねたぞ!」
すると、福豆も味見も禁止されて、ふてくされていた神様が、すぐに飛び起きて我々を歓迎した。
三人で恵方を向いて並んで座り、手を合わせる。
「いただきます!」
かじりついた恵方巻は、初めて作ったにしては非常に美味しかった。叔父の手帳にあるレシピ通りに作れば、大抵の料理は美味しく仕上がる。
(そういえば、神様は叶える側なんだし、恵方巻かじりながら願い事する必要ないんじゃ……)
もぐもぐしながらそんな事を考えてしまい、危うくツッコミかけたが、ここは黙って願い事に専念しなければなるまい。特に美帆先生との関係進展を重点的に祈っておかなければ。
無事に沈黙を守ったまま恵方巻を平らげた我々は、お互いの願い事について話したりしつつ福茶をすすると、豆まきを実行しに玄関に向かう事にした。
オンボロな見た目に相応しく、神様の次は座敷童子と、我が家は奇想天外な同居人に事欠かない。
「今夜は節分だから、恵方巻食べた後に豆まきするよ。シュンも一緒にやろう!」
「やるやる! 夏也、恵方巻作ってるの? 俺も手伝う!」
「ありがとう。じゃあ台所に戻ろうかな……という訳で、味見は結構です。福豆もそれ以上食べないように!」
「ちぇー」
私は神様に睨みをきかせると、シュンと恵方巻を作りに向かった。
材料はご飯と海苔、ネギトロとサーモンに、きゅうり、大葉、さっき焼いて冷ました卵焼きだ。ご飯にも既に酢と出汁を混ぜてあった。
いくらも欲しかったが、財布に相談したところ丁重に断られてしまったので、鬼に笑われそうだが来年こそはグレードアップを図れるようにしたい。
「これをくるくる巻いて……」
「うんうん」
シュンは器用に私の真似をして恵方巻を巻いていく。彼は、いつもぐうたらな神様より、よほど家事を手伝ってくれていた。
「よーし、出来たぞ! じゃあ、みんなで恵方を向いて食べよう!」
「願い事しながら、喋らないで食べるんだよね」
「そうそう、うっかり話さないようにしなきゃね」
私は恵方巻と一緒に、先程回収した福豆と梅干し、昆布を湯呑みに入れて煎茶を注いだ「福茶」を用意して居間に戻った。
「待ちかねたぞ!」
すると、福豆も味見も禁止されて、ふてくされていた神様が、すぐに飛び起きて我々を歓迎した。
三人で恵方を向いて並んで座り、手を合わせる。
「いただきます!」
かじりついた恵方巻は、初めて作ったにしては非常に美味しかった。叔父の手帳にあるレシピ通りに作れば、大抵の料理は美味しく仕上がる。
(そういえば、神様は叶える側なんだし、恵方巻かじりながら願い事する必要ないんじゃ……)
もぐもぐしながらそんな事を考えてしまい、危うくツッコミかけたが、ここは黙って願い事に専念しなければなるまい。特に美帆先生との関係進展を重点的に祈っておかなければ。
無事に沈黙を守ったまま恵方巻を平らげた我々は、お互いの願い事について話したりしつつ福茶をすすると、豆まきを実行しに玄関に向かう事にした。
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