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1巻
1-2
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私はそのまま襖を閉じようとした。
カタ……
しかしそのとき、また何かが倒れるような音が聞こえて、私は再度押入れの中を覗き込む。
先程は気付かなかったが、今度は押入れの隅に置いてある古い鞄に目が留まった。叔父のものだろうか。
私は何だか気になって、その鞄を引っ張り出した。鞄自体は年季が入っているものの、丁寧に使い込まれた印象を受ける。中はほとんど空っぽだったが、内側のポケット部分から、これまた古くて分厚い手帳が出てきた。
何の気なしにパラパラと捲ってみると、丸く縮こまった字と落書きのような絵がびっしりと書き連ねてあった。
「たまご……焼き?」
どうやら、これらは料理のレシピであるらしい。確かに親戚の間でも、叔父は食通であることが知られていたが、料亭やレストランに通うだけではなく、自分でも料理を作っていたようだった。
そういえば幼い頃、父に連れられて、叔父と食事をしたことが何度かあった気がする。
確かに同じ時間を過ごしていたのに、叔父のことをあまり覚えていない。亡くなった叔父にはもう会えないが、彼が当時考えていたことが、この手帳の中には残っていた。
(この機会に、叔父のことをゆっくり思い返してみるのもいいかもしれない)
私はとりあえず手帳を鞄に戻し、片付け作業に戻った。
夕方までに一階は片付いたが、やはり二階までは手が回らなかった。
引っ越しは、本当に体力を消耗する。普段の運動不足のせいもあるが、掃除に荷物運びにと動き回って、もうクタクタである。
縁側から臨むジャングルも、オレンジ色の光に照らされて、葉の影を濃くしていた。
「もう暗くなるからここまでにしよう。朝から本当にありがとうな。助かったよ」
「ああ」
私は財布を取ってくると、縁側に腰を下ろしていた宵山に声をかけた。
「腹減っただろ? 何が食べたい? 夕飯奢るよ。といっても、この辺りのことはまだよく分からないから、行きつけの店とかあったら教えてほしいんだけど……」
すると、宵山は肩にかけたタオルで汗を拭いながら振り返った。
「別に気にすんなよ。新生活は何かと物入りだろうし、今日は俺も暇で手伝っただけだからさ」
夕日に輝く笑顔である。外見も中身も爽やかスポーツマンの宵山は、学生時代から女子にモテていた。
文武両道でイケメンという、実に羨ましい人生を順風満帆に歩んだ宵山は、大学卒業後、実家のあるこの町の小学校で体育教師をしていた。子どもたちからもやっぱり人気があるらしい。
天は二物を与えずというが、彼に関しては、完全に与えすぎである。
「しかし、一日付き合わせてしまったし……」
私が躊躇していると、友人はトラックのキーを取り出して言った。
「じゃあ、坂下の肉屋に行こう。メンチカツを奢ってくれよ。あの店のは美味いんだ。お前も夕飯用に弁当でも買って帰ればいい」
そう言うと宵山は、すぐに立ち上がってトラックに向かってしまった。
確かに、今日はもうヘトヘトで、今から荷解きをして米を炊く気にはなれない。
(近所の様子も確認しておきたいしな……)
そう考えて、私もすぐ宵山の後を追った。
家を出て坂を下ると、突き当たりに肉屋がある。郊外の大きなスーパーに行くにはバスに乗る必要があるのと、この店は商店街の中でも遅くまで開いているので、宵山に教えてもらって以来、私は頻繁に通っている。今ではすっかり常連だ。
しかし、なぜかいつも店名を覚えることができず、私は心の中で勝手に「坂下さん」と呼んでいた。
初めて訪れたその日は、普段あまり動かさない体を動かしたこともあって、ずらりと並んだ美味そうな惣菜や、揚げたてのコロッケ、鶏のから揚げを見て、すきっ腹が鳴った。
「どれも美味いぜ! 特に揚げたてのメンチは最高なんだ」
勧められるまま、私はメンチカツを買ってくると、まだ熱いくらいの紙袋を彼に手渡した。
宵山は早速取り出して、嬉しそうにかぶりつく。私も夕飯用にメンチカツを一つとから揚げ弁当を購入した。
宵山はメンチカツをふた口で平らげると、帰りにトラックも返してきてやると、颯爽と店を後にした。
(本当に、どこまでもいいやつなんだよなぁ……)
私は夕暮れの街に向かうトラックを見送り、今日から新たな住まいとなる、あの古ぼけた家へと歩き出した。
一人で坂道を戻りながら、ほかほかと温かい肉屋の紙袋を漁る。宵山の美味そうな顔を思い出しつつ、揚げたてのメンチカツを取り出して、ひとくち頬張った。
私はかなりの猫舌なので、口に入れた瞬間、予想以上にアツアツのメンチにはふはふしてしまったが、後からその美味しさが口の中に一気に溢れてきた。
(わ、美味っ……!)
衣はサクサクとしていて、中は肉の旨味がギュッと詰まっており、噛むほどにジュワッとした肉汁が口いっぱいに広がる。宵山の言う通り、素晴らしく美味かった。
メンチカツがあまりにも美味しかったので、から揚げ弁当もかなり期待できると、少しウキウキした足取りで家まで戻る。
ふと、道の端に目をやれば、坂の途中にお地蔵様が立っていた。小さな両手を合わせて少し首を傾げたお地蔵様は、「よかったね」とでも言うように、何だか優しそうに微笑んでいた。
私はすっかり気分をよくして、鼻歌交じりに家の前まで戻ってきた。すれ違う人もおらず、油断していたので鼻歌も幾分大きくなっていたと思うが、もう少しで家に着くというところで、突然声をかけられた。
「こんばんわ、はじめまして」
ビックリして振り返ると、四十代くらいかと思われる鶯色の割烹着を着た女性が、買い物籠を下げて立っていた。
いい歳をした大人の男が、一人で楽しそうに買い食いをして、鼻歌まで歌っている姿を目撃されてしまった。今すぐ穴とかに埋まりたい。
私はしどろもどろになりながら挨拶を返す。
「こ、こんばんわ。あ、もしかしてお隣の……」
「ええ、隣に住んでいる西原です。今度護堂さんの甥っ子さんが越してくるって聞いていたんですよ。これからよろしくお願いしますね」
おばちゃんはにっこりと微笑んでお辞儀した。太っているというほどではないが、ふくよかな顔と体格で、温かい雰囲気の女性だ。
「護堂さんには、とてもお世話になっていたのよ。本当にまだ若いのに残念だったけれど、困ったことがあったら何でも聞いてね」
その言葉を聞いて私ははっとする。
(そうか、当たり前だけど叔父が生きている間も、彼女はずっとお隣に住んでいたんだ。叔父さんとも交流があったんだな……)
この人は、きっと私の知らない叔父の姿を、たくさん知っているのだろう。
「はい。ありがとうございます。あ、護堂夏也です。これから何かとご迷惑をおかけするかと思いますが、どうぞよろしくお願いします」
私はぺこりと頭を下げる。
「ええ、どうぞよろしくね!」
ニコニコと笑うおばちゃんは、私のから揚げ弁当の入った袋を見て――
「そこのお肉屋さんのお惣菜やお弁当、とっても美味しいのよ。特にメンチカツがね。もうご存知かもしれないけど!」
そう言って悪戯っぽく笑うと、彼女は坂を下っていった。
(やっぱり見られていたか……。でもお隣さん、優しそうな人でよかった)
少しほっとして、私は家の門をくぐる。このときの私は、家の外ではなく、これから家の中で起こる奇想天外な出来事など、まったく想像してはいなかった。
日も沈み、玄関の中は真っ暗だった。手探りで壁のスイッチを押すと、電灯が鈍く点滅する。
久しぶりに電気を通されて、ゆっくりと伸びをしながら覚醒するように、明かりは柔らかく辺りを照らし出した。
南側の部屋に置いてあった卓袱台で夕飯にしようと思い、一度そこに弁当を置いてから、私は台所へとお茶を飲もうと湯を沸かしに行く。
台所には、三口のガスコンロが備えつけてあった。
奥の勝手口からも外へ出られるようだったが、雑草が生茂っており、とても通り抜けられそうにない。今日のところは見て見ぬ振りをしておくことにする。
(しばらくは引っ越しの片付けで忙しいけど、書きかけの小説も進めなくちゃな……)
そんなことを考えながら小鍋で湯を沸かしていたら、久しぶりに火を使ったからか、埃か何かが燃えて、少し焦げ臭かった。
そうしてお茶を淹れて部屋に戻ってくると、居間に誰かいた。
(ん……? 誰?)
この家には私以外に誰もいないし、戸締りもちゃんとしていたはずだ。
(ど、泥棒……⁉)
私は咄嗟に息を殺した。そいつは私に背を向けて、卓袱台の前に座っている。髪が長いが男のようだ。しかもその色が明らかにおかしい。白に近い銀色をしている。
(不良の泥棒だろうか……? いや、そもそも泥棒をするのは不良というか悪人だよな)
私は完全に混乱していた。
(こんなボロ屋敷に金目のものなんてないし、もし泥棒なら、なぜ卓袱台の前で悠長に座っているのだろう?)
そこに置いてあるものといえば、弁当くらいだ。
彼に気付かれないうちに、警察に通報した方がいいだろうかと考えたが、携帯電話も卓袱台の上であることを思い出して絶望する。
その瞬間、彼は振り返った。
「何をしておる。早く飯にせんか」
(えっ……?)
なんだろうこのナチュラルな振る舞い。何年も一緒に暮らしてきた家族のような当然な感じ。
(……これはアレか、オレオレ詐欺というものか)
電話回線越しではなく、リアル対面バージョンもあるとは知らなかった。古い家だから、ターゲットになりそうな老人が暮らしているとでも思ったのだろうか。
しかし、世のご老人方に、こんな着流しを着た銀色ふわふわ頭の息子なんてそういないだろう。自分の子供のあまりの変貌ぶりに、疑うどころか気絶しかねない。こんな具合でどこの誰が騙されるというのか。
「何をぼけっとしておる。茶が冷めるぞ」
そう言って男は、私に着座を促してくる。少し冷静さを取り戻した私は、男の言動にだんだん腹が立ってきた。
「だ、誰なんですか、あなたは? 人の家に勝手に入り込んで! 警察を呼びますよ!」
私が叫ぶと、彼はきょとんとした顔で言った。
「誰って……、神様だけど?」
「……」
(聞き間違いか? カミサマって神様のことか? 一体どういうことだ?)
男は終始ニヤニヤしていたが、突然真顔になってひたと私を見つめ、ぶつぶつと呟き出した。
「護堂夏也、二十五歳。勉学はそこそこできたようだな。うん、人畜無害な性格で、真面目に大人しく生きてきた。今は半人前の教師をしているのか……嫁は……というか身近に女の気配は微塵もないな」
「ほっといてください!」
(こいつどこでそんな私の個人情報を……。まさか詐欺の標的は私? 事前に調べられていたのか? しかし、私なんぞ狙ったところで、大金は手に入らないし、誰かに怨みを買った覚えもないが……)
突然の出来事に焦る私をよそに、自称神様はすっかりくつろいだ様子でこちらを見上げている。
「ふぅん、友和からなんも聞いとらんのか?」
彼の口から意外な名前が出てきた。
「友和……って、叔父の知り合いの方なんですか?」
友和は私の叔父の名前だ。だが簡単に騙されてはいけない。これが新手のオレオレ詐欺の手口かもしれない。とりあえず、表面上話を合わせて、こいつの本当の目的を探ろう。
「いや『知り合いの方』ではない。わしは神様じゃ。友和だけでなく、わしはもう、ずーっとこの辺りの人間を見守り続けておるのじゃ」
それまで猫背だった自称神様は、座ったままふんぞりかえった。
「わしは人間が作った美味いものを見るのが好きなんじゃ。もちろん、それをつまむのもな。友和も食べることが好きだった。やつ自身もよく料理をしたし、評判の店なんかにも連れていってくれたもんじゃ」
彼は何かを思い出すように遠くを見つめる。
(叔父といやに親しげだな……見た目は変でも、もしかして叔父のグルメ友達? だがいくら親しいからといって、勝手に人の家に上がり込みはしないだろう、普通は。まあ見た目通り普通じゃないのだろうけど。それに、神様って一体……)
「あの頃はよかったのう……」
神様は深く溜息をついて、またふにゃりと猫背になった。
とりあえず、話を合わせて色々聞いてみるしかない。私はなるべく自然な風を装って尋ねた。
「神様って、ふつう神社とかの社に住んでいるんじゃないですか? 叔父がどうして神様と知り合いなんです?」
我ながら馬鹿馬鹿しい質問であるが、ひとつひとつ解決していかねばなるまい。
「それはな~」
神様は、長い癖っ毛の先を、人差し指でくるくるしながら答える。女子か。
「この辺りの山にわしを祀った社があったはずなんじゃが、随分前に人里に下りてきて以来、人の暮らしを眺めているのが楽しくて、ずっと帰っていなかったんじゃ。あれよあれよという間に、この辺りの風景も様変わりしてしまってな、すっかり帰り道を忘れてしまった。そんなとき、友和と出会ったんじゃ」
(要するに迷子ってことか? 神様が迷子になんてなるのだろうか?)
「夕暮れ刻に、友和が美味そうな鶏のから揚げ弁当を下げて、この家に帰ろうとしているところに、たまたまわしが通りかかってな。友和はわしの姿を見るや、その弁当を捧げたのじゃ。実にいい心がけじゃ」
(きっとこの人……じゃなくて神は、から揚げの香りに誘われて叔父を散々付け回し、腹を空かせた野良犬のような目をして訴えたんだろうなぁ……)
彼とは初対面であるのに、なぜかその光景がありありと目に浮かんでくる。私は叔父の災難と優しさに感じ入った。
「友和にも、わしの社については色々と調べてもらったが、古すぎて地図にも、昔から住んでいる者の記憶にもなかったらしくての~」
(誰も参拝に来なくなった神社の神……気の毒な話だ。まあ、事実ならばだが)
「そうなんですか……。それでまた、うちに何のご用でしょう? 叔父は三月に亡くなりましたが」
核心を突いてみる。これでお金を貸してほしいとか言い出したら、すぐに追い出すつもりだ。
しかし神様は、少し目を伏せて寂しそうな顔をして言った。
「人がこちらにいる時間はあっという間じゃな。友和がいなくなってからは、この家にも誰も訪ねてこなくなってしまった」
(えーと……)
私は頭を抱える。
(……もしかして、棲み憑いちゃってるパターンですか?)
だが、先程この家に着いたとき、玄関から部屋の中までずっと埃が積もっていたし、人が暮らしている様子なんて一つもなかった。
(まだ確認できていない二階にいたのだろうか? それとも、本当に神様なのだとしたら、さっきの神棚の中……?)
「わしが社に帰れなくなった話を友和にしてからは、ずっとこの家で世話になっていたのだ。やつとの暮らしはなかなか楽しかったぞ」
(ここに住まわせていたのか? こんな素性も分からない、謎の男と一緒に暮らしていた? こんな胡散臭い話を鵜呑みにしたのか? 人が善いにもほどがあるぞ叔父よ……)
私が叔父の人柄に思いを巡らせていると、神様はから揚げ弁当を指差してせがんだ。
「というわけで、長いことこのから揚げ弁当もご無沙汰しておる。早く食べさせてくれんか」
腑に落ちないことだらけであったが、私もお腹が空いていたし、渋々ながらも観念して、私は弁当の蓋を取った。中には美味そうな鶏のから揚げが五つも入っており、ちょっとしたサラダや卵焼きまで添えてあった。
「わ、美味しそう!」
「おおー! これこれ!」
私が神様に割り箸を渡そうと戸棚へ向かっていたら、彼はよっぽど腹が減っていたのか、素手でから揚げに手を伸ばした。
まったく、お行儀の悪い神様である。私が半ば呆れて見ていると、次の瞬間、目の前で信じられないことが起こった。
神様がつまんだ「から揚げそのもの」はその場に留まり、代わりに向こう側がうっすらと透けて見える、半透明なから揚げがつまみ上げられたのだ。
「えっ⁉」
まるで、から揚げが一つ増えたように見えた。だが、神様はこちらの驚きなど意に介さず、その半透明の方のから揚げをもぐもぐと平らげ、次に半透明のブロッコリーをつまみ上げる。
「て、手品か何かですか?」
私が尋ねると、神様は不思議そうに首を傾げる。
「何がじゃ? なんでわしが手妻などするか」
「だ、だってその、から揚げから薄いから揚げが出てきて、その……」
怪奇現象を目の当たりにして狼狽する私を気にする様子もなく、神様は答える。
「わしは神じゃからな。人の世界の『もの』そのものを取り込む必要はないのじゃ。わしが食べておるのは、貢物にこめられた『思い』じゃよ」
(ううむ。分かったような、分からないような……)
しかし、彼が神様というのは、もしかしたら本当なのかもしれない。
「えいっ」
私は思い切って、神様の肩に触れてみた。もしや幽霊のようにスカッと透き通ってしまうのではないかと思ったのだ。
(幽霊が本当に透き通るのかどうか、確かめたことなんてもちろんないのだけど……)
しかし予想に反して、私の手はちゃんと彼の肩に置く形になった。心なしかひんやりしているが、触れた感触は人の体となんら変わりなさそうだ。
神様は一瞬動きを止めたが、すぐに私の手を振り落とそうと、身を捩った。
「なんじゃ、重いぞ。疲れるからやめい」
「体には触れられるんですね? 食べ物は幽霊しか食べないのに……」
呆然とする私の手から逃れて、神様は座り直すと説明を始めた。
「人の世にとどまれるように、わしは人の形に身をやつしておるのだ。だが、大概の人間には見ることさえできない仮の姿。友和にはわしが見えた。そしてお前もな。しかも、わしに触れることさえできるようだ。血筋なのかもしれんな……」
神様はそこで少し言葉を切った。切れ長の目がどこか遠くを見つめているようだった。
「だがこちらの『もの』に触れるのは、消耗するから、あまりせんようにしておる」
「なぜです?」
私が聞き直すと――
「うーん……不浄だからかの」
神様はきっぱりと答えた。
「そりゃ、悪かったですね!」
私はむくれて、座布団に座り直すと、ようやく弁当を食べはじめた。
一番大きなから揚げをつまんでかじりつく。
心地よい歯応えの、薄くサクサクとした衣。ジューシーな鶏もも肉の脂が、旨味となって広がる。私の強張った頬は、いとも容易くほころんだ。
そういえば、叔父と神様の出会いのきっかけも、このから揚げ弁当だったのだ。
私がチラと顔を上げたら、神様は愉快そうに、こちらを見つめていた。
私は何だか気恥ずかしくなって、ごまかすように白いご飯をかき込む。
――全くおかしな話だとは思うが、これが私と神様との最初の出会いなのだった。
カタ……
しかしそのとき、また何かが倒れるような音が聞こえて、私は再度押入れの中を覗き込む。
先程は気付かなかったが、今度は押入れの隅に置いてある古い鞄に目が留まった。叔父のものだろうか。
私は何だか気になって、その鞄を引っ張り出した。鞄自体は年季が入っているものの、丁寧に使い込まれた印象を受ける。中はほとんど空っぽだったが、内側のポケット部分から、これまた古くて分厚い手帳が出てきた。
何の気なしにパラパラと捲ってみると、丸く縮こまった字と落書きのような絵がびっしりと書き連ねてあった。
「たまご……焼き?」
どうやら、これらは料理のレシピであるらしい。確かに親戚の間でも、叔父は食通であることが知られていたが、料亭やレストランに通うだけではなく、自分でも料理を作っていたようだった。
そういえば幼い頃、父に連れられて、叔父と食事をしたことが何度かあった気がする。
確かに同じ時間を過ごしていたのに、叔父のことをあまり覚えていない。亡くなった叔父にはもう会えないが、彼が当時考えていたことが、この手帳の中には残っていた。
(この機会に、叔父のことをゆっくり思い返してみるのもいいかもしれない)
私はとりあえず手帳を鞄に戻し、片付け作業に戻った。
夕方までに一階は片付いたが、やはり二階までは手が回らなかった。
引っ越しは、本当に体力を消耗する。普段の運動不足のせいもあるが、掃除に荷物運びにと動き回って、もうクタクタである。
縁側から臨むジャングルも、オレンジ色の光に照らされて、葉の影を濃くしていた。
「もう暗くなるからここまでにしよう。朝から本当にありがとうな。助かったよ」
「ああ」
私は財布を取ってくると、縁側に腰を下ろしていた宵山に声をかけた。
「腹減っただろ? 何が食べたい? 夕飯奢るよ。といっても、この辺りのことはまだよく分からないから、行きつけの店とかあったら教えてほしいんだけど……」
すると、宵山は肩にかけたタオルで汗を拭いながら振り返った。
「別に気にすんなよ。新生活は何かと物入りだろうし、今日は俺も暇で手伝っただけだからさ」
夕日に輝く笑顔である。外見も中身も爽やかスポーツマンの宵山は、学生時代から女子にモテていた。
文武両道でイケメンという、実に羨ましい人生を順風満帆に歩んだ宵山は、大学卒業後、実家のあるこの町の小学校で体育教師をしていた。子どもたちからもやっぱり人気があるらしい。
天は二物を与えずというが、彼に関しては、完全に与えすぎである。
「しかし、一日付き合わせてしまったし……」
私が躊躇していると、友人はトラックのキーを取り出して言った。
「じゃあ、坂下の肉屋に行こう。メンチカツを奢ってくれよ。あの店のは美味いんだ。お前も夕飯用に弁当でも買って帰ればいい」
そう言うと宵山は、すぐに立ち上がってトラックに向かってしまった。
確かに、今日はもうヘトヘトで、今から荷解きをして米を炊く気にはなれない。
(近所の様子も確認しておきたいしな……)
そう考えて、私もすぐ宵山の後を追った。
家を出て坂を下ると、突き当たりに肉屋がある。郊外の大きなスーパーに行くにはバスに乗る必要があるのと、この店は商店街の中でも遅くまで開いているので、宵山に教えてもらって以来、私は頻繁に通っている。今ではすっかり常連だ。
しかし、なぜかいつも店名を覚えることができず、私は心の中で勝手に「坂下さん」と呼んでいた。
初めて訪れたその日は、普段あまり動かさない体を動かしたこともあって、ずらりと並んだ美味そうな惣菜や、揚げたてのコロッケ、鶏のから揚げを見て、すきっ腹が鳴った。
「どれも美味いぜ! 特に揚げたてのメンチは最高なんだ」
勧められるまま、私はメンチカツを買ってくると、まだ熱いくらいの紙袋を彼に手渡した。
宵山は早速取り出して、嬉しそうにかぶりつく。私も夕飯用にメンチカツを一つとから揚げ弁当を購入した。
宵山はメンチカツをふた口で平らげると、帰りにトラックも返してきてやると、颯爽と店を後にした。
(本当に、どこまでもいいやつなんだよなぁ……)
私は夕暮れの街に向かうトラックを見送り、今日から新たな住まいとなる、あの古ぼけた家へと歩き出した。
一人で坂道を戻りながら、ほかほかと温かい肉屋の紙袋を漁る。宵山の美味そうな顔を思い出しつつ、揚げたてのメンチカツを取り出して、ひとくち頬張った。
私はかなりの猫舌なので、口に入れた瞬間、予想以上にアツアツのメンチにはふはふしてしまったが、後からその美味しさが口の中に一気に溢れてきた。
(わ、美味っ……!)
衣はサクサクとしていて、中は肉の旨味がギュッと詰まっており、噛むほどにジュワッとした肉汁が口いっぱいに広がる。宵山の言う通り、素晴らしく美味かった。
メンチカツがあまりにも美味しかったので、から揚げ弁当もかなり期待できると、少しウキウキした足取りで家まで戻る。
ふと、道の端に目をやれば、坂の途中にお地蔵様が立っていた。小さな両手を合わせて少し首を傾げたお地蔵様は、「よかったね」とでも言うように、何だか優しそうに微笑んでいた。
私はすっかり気分をよくして、鼻歌交じりに家の前まで戻ってきた。すれ違う人もおらず、油断していたので鼻歌も幾分大きくなっていたと思うが、もう少しで家に着くというところで、突然声をかけられた。
「こんばんわ、はじめまして」
ビックリして振り返ると、四十代くらいかと思われる鶯色の割烹着を着た女性が、買い物籠を下げて立っていた。
いい歳をした大人の男が、一人で楽しそうに買い食いをして、鼻歌まで歌っている姿を目撃されてしまった。今すぐ穴とかに埋まりたい。
私はしどろもどろになりながら挨拶を返す。
「こ、こんばんわ。あ、もしかしてお隣の……」
「ええ、隣に住んでいる西原です。今度護堂さんの甥っ子さんが越してくるって聞いていたんですよ。これからよろしくお願いしますね」
おばちゃんはにっこりと微笑んでお辞儀した。太っているというほどではないが、ふくよかな顔と体格で、温かい雰囲気の女性だ。
「護堂さんには、とてもお世話になっていたのよ。本当にまだ若いのに残念だったけれど、困ったことがあったら何でも聞いてね」
その言葉を聞いて私ははっとする。
(そうか、当たり前だけど叔父が生きている間も、彼女はずっとお隣に住んでいたんだ。叔父さんとも交流があったんだな……)
この人は、きっと私の知らない叔父の姿を、たくさん知っているのだろう。
「はい。ありがとうございます。あ、護堂夏也です。これから何かとご迷惑をおかけするかと思いますが、どうぞよろしくお願いします」
私はぺこりと頭を下げる。
「ええ、どうぞよろしくね!」
ニコニコと笑うおばちゃんは、私のから揚げ弁当の入った袋を見て――
「そこのお肉屋さんのお惣菜やお弁当、とっても美味しいのよ。特にメンチカツがね。もうご存知かもしれないけど!」
そう言って悪戯っぽく笑うと、彼女は坂を下っていった。
(やっぱり見られていたか……。でもお隣さん、優しそうな人でよかった)
少しほっとして、私は家の門をくぐる。このときの私は、家の外ではなく、これから家の中で起こる奇想天外な出来事など、まったく想像してはいなかった。
日も沈み、玄関の中は真っ暗だった。手探りで壁のスイッチを押すと、電灯が鈍く点滅する。
久しぶりに電気を通されて、ゆっくりと伸びをしながら覚醒するように、明かりは柔らかく辺りを照らし出した。
南側の部屋に置いてあった卓袱台で夕飯にしようと思い、一度そこに弁当を置いてから、私は台所へとお茶を飲もうと湯を沸かしに行く。
台所には、三口のガスコンロが備えつけてあった。
奥の勝手口からも外へ出られるようだったが、雑草が生茂っており、とても通り抜けられそうにない。今日のところは見て見ぬ振りをしておくことにする。
(しばらくは引っ越しの片付けで忙しいけど、書きかけの小説も進めなくちゃな……)
そんなことを考えながら小鍋で湯を沸かしていたら、久しぶりに火を使ったからか、埃か何かが燃えて、少し焦げ臭かった。
そうしてお茶を淹れて部屋に戻ってくると、居間に誰かいた。
(ん……? 誰?)
この家には私以外に誰もいないし、戸締りもちゃんとしていたはずだ。
(ど、泥棒……⁉)
私は咄嗟に息を殺した。そいつは私に背を向けて、卓袱台の前に座っている。髪が長いが男のようだ。しかもその色が明らかにおかしい。白に近い銀色をしている。
(不良の泥棒だろうか……? いや、そもそも泥棒をするのは不良というか悪人だよな)
私は完全に混乱していた。
(こんなボロ屋敷に金目のものなんてないし、もし泥棒なら、なぜ卓袱台の前で悠長に座っているのだろう?)
そこに置いてあるものといえば、弁当くらいだ。
彼に気付かれないうちに、警察に通報した方がいいだろうかと考えたが、携帯電話も卓袱台の上であることを思い出して絶望する。
その瞬間、彼は振り返った。
「何をしておる。早く飯にせんか」
(えっ……?)
なんだろうこのナチュラルな振る舞い。何年も一緒に暮らしてきた家族のような当然な感じ。
(……これはアレか、オレオレ詐欺というものか)
電話回線越しではなく、リアル対面バージョンもあるとは知らなかった。古い家だから、ターゲットになりそうな老人が暮らしているとでも思ったのだろうか。
しかし、世のご老人方に、こんな着流しを着た銀色ふわふわ頭の息子なんてそういないだろう。自分の子供のあまりの変貌ぶりに、疑うどころか気絶しかねない。こんな具合でどこの誰が騙されるというのか。
「何をぼけっとしておる。茶が冷めるぞ」
そう言って男は、私に着座を促してくる。少し冷静さを取り戻した私は、男の言動にだんだん腹が立ってきた。
「だ、誰なんですか、あなたは? 人の家に勝手に入り込んで! 警察を呼びますよ!」
私が叫ぶと、彼はきょとんとした顔で言った。
「誰って……、神様だけど?」
「……」
(聞き間違いか? カミサマって神様のことか? 一体どういうことだ?)
男は終始ニヤニヤしていたが、突然真顔になってひたと私を見つめ、ぶつぶつと呟き出した。
「護堂夏也、二十五歳。勉学はそこそこできたようだな。うん、人畜無害な性格で、真面目に大人しく生きてきた。今は半人前の教師をしているのか……嫁は……というか身近に女の気配は微塵もないな」
「ほっといてください!」
(こいつどこでそんな私の個人情報を……。まさか詐欺の標的は私? 事前に調べられていたのか? しかし、私なんぞ狙ったところで、大金は手に入らないし、誰かに怨みを買った覚えもないが……)
突然の出来事に焦る私をよそに、自称神様はすっかりくつろいだ様子でこちらを見上げている。
「ふぅん、友和からなんも聞いとらんのか?」
彼の口から意外な名前が出てきた。
「友和……って、叔父の知り合いの方なんですか?」
友和は私の叔父の名前だ。だが簡単に騙されてはいけない。これが新手のオレオレ詐欺の手口かもしれない。とりあえず、表面上話を合わせて、こいつの本当の目的を探ろう。
「いや『知り合いの方』ではない。わしは神様じゃ。友和だけでなく、わしはもう、ずーっとこの辺りの人間を見守り続けておるのじゃ」
それまで猫背だった自称神様は、座ったままふんぞりかえった。
「わしは人間が作った美味いものを見るのが好きなんじゃ。もちろん、それをつまむのもな。友和も食べることが好きだった。やつ自身もよく料理をしたし、評判の店なんかにも連れていってくれたもんじゃ」
彼は何かを思い出すように遠くを見つめる。
(叔父といやに親しげだな……見た目は変でも、もしかして叔父のグルメ友達? だがいくら親しいからといって、勝手に人の家に上がり込みはしないだろう、普通は。まあ見た目通り普通じゃないのだろうけど。それに、神様って一体……)
「あの頃はよかったのう……」
神様は深く溜息をついて、またふにゃりと猫背になった。
とりあえず、話を合わせて色々聞いてみるしかない。私はなるべく自然な風を装って尋ねた。
「神様って、ふつう神社とかの社に住んでいるんじゃないですか? 叔父がどうして神様と知り合いなんです?」
我ながら馬鹿馬鹿しい質問であるが、ひとつひとつ解決していかねばなるまい。
「それはな~」
神様は、長い癖っ毛の先を、人差し指でくるくるしながら答える。女子か。
「この辺りの山にわしを祀った社があったはずなんじゃが、随分前に人里に下りてきて以来、人の暮らしを眺めているのが楽しくて、ずっと帰っていなかったんじゃ。あれよあれよという間に、この辺りの風景も様変わりしてしまってな、すっかり帰り道を忘れてしまった。そんなとき、友和と出会ったんじゃ」
(要するに迷子ってことか? 神様が迷子になんてなるのだろうか?)
「夕暮れ刻に、友和が美味そうな鶏のから揚げ弁当を下げて、この家に帰ろうとしているところに、たまたまわしが通りかかってな。友和はわしの姿を見るや、その弁当を捧げたのじゃ。実にいい心がけじゃ」
(きっとこの人……じゃなくて神は、から揚げの香りに誘われて叔父を散々付け回し、腹を空かせた野良犬のような目をして訴えたんだろうなぁ……)
彼とは初対面であるのに、なぜかその光景がありありと目に浮かんでくる。私は叔父の災難と優しさに感じ入った。
「友和にも、わしの社については色々と調べてもらったが、古すぎて地図にも、昔から住んでいる者の記憶にもなかったらしくての~」
(誰も参拝に来なくなった神社の神……気の毒な話だ。まあ、事実ならばだが)
「そうなんですか……。それでまた、うちに何のご用でしょう? 叔父は三月に亡くなりましたが」
核心を突いてみる。これでお金を貸してほしいとか言い出したら、すぐに追い出すつもりだ。
しかし神様は、少し目を伏せて寂しそうな顔をして言った。
「人がこちらにいる時間はあっという間じゃな。友和がいなくなってからは、この家にも誰も訪ねてこなくなってしまった」
(えーと……)
私は頭を抱える。
(……もしかして、棲み憑いちゃってるパターンですか?)
だが、先程この家に着いたとき、玄関から部屋の中までずっと埃が積もっていたし、人が暮らしている様子なんて一つもなかった。
(まだ確認できていない二階にいたのだろうか? それとも、本当に神様なのだとしたら、さっきの神棚の中……?)
「わしが社に帰れなくなった話を友和にしてからは、ずっとこの家で世話になっていたのだ。やつとの暮らしはなかなか楽しかったぞ」
(ここに住まわせていたのか? こんな素性も分からない、謎の男と一緒に暮らしていた? こんな胡散臭い話を鵜呑みにしたのか? 人が善いにもほどがあるぞ叔父よ……)
私が叔父の人柄に思いを巡らせていると、神様はから揚げ弁当を指差してせがんだ。
「というわけで、長いことこのから揚げ弁当もご無沙汰しておる。早く食べさせてくれんか」
腑に落ちないことだらけであったが、私もお腹が空いていたし、渋々ながらも観念して、私は弁当の蓋を取った。中には美味そうな鶏のから揚げが五つも入っており、ちょっとしたサラダや卵焼きまで添えてあった。
「わ、美味しそう!」
「おおー! これこれ!」
私が神様に割り箸を渡そうと戸棚へ向かっていたら、彼はよっぽど腹が減っていたのか、素手でから揚げに手を伸ばした。
まったく、お行儀の悪い神様である。私が半ば呆れて見ていると、次の瞬間、目の前で信じられないことが起こった。
神様がつまんだ「から揚げそのもの」はその場に留まり、代わりに向こう側がうっすらと透けて見える、半透明なから揚げがつまみ上げられたのだ。
「えっ⁉」
まるで、から揚げが一つ増えたように見えた。だが、神様はこちらの驚きなど意に介さず、その半透明の方のから揚げをもぐもぐと平らげ、次に半透明のブロッコリーをつまみ上げる。
「て、手品か何かですか?」
私が尋ねると、神様は不思議そうに首を傾げる。
「何がじゃ? なんでわしが手妻などするか」
「だ、だってその、から揚げから薄いから揚げが出てきて、その……」
怪奇現象を目の当たりにして狼狽する私を気にする様子もなく、神様は答える。
「わしは神じゃからな。人の世界の『もの』そのものを取り込む必要はないのじゃ。わしが食べておるのは、貢物にこめられた『思い』じゃよ」
(ううむ。分かったような、分からないような……)
しかし、彼が神様というのは、もしかしたら本当なのかもしれない。
「えいっ」
私は思い切って、神様の肩に触れてみた。もしや幽霊のようにスカッと透き通ってしまうのではないかと思ったのだ。
(幽霊が本当に透き通るのかどうか、確かめたことなんてもちろんないのだけど……)
しかし予想に反して、私の手はちゃんと彼の肩に置く形になった。心なしかひんやりしているが、触れた感触は人の体となんら変わりなさそうだ。
神様は一瞬動きを止めたが、すぐに私の手を振り落とそうと、身を捩った。
「なんじゃ、重いぞ。疲れるからやめい」
「体には触れられるんですね? 食べ物は幽霊しか食べないのに……」
呆然とする私の手から逃れて、神様は座り直すと説明を始めた。
「人の世にとどまれるように、わしは人の形に身をやつしておるのだ。だが、大概の人間には見ることさえできない仮の姿。友和にはわしが見えた。そしてお前もな。しかも、わしに触れることさえできるようだ。血筋なのかもしれんな……」
神様はそこで少し言葉を切った。切れ長の目がどこか遠くを見つめているようだった。
「だがこちらの『もの』に触れるのは、消耗するから、あまりせんようにしておる」
「なぜです?」
私が聞き直すと――
「うーん……不浄だからかの」
神様はきっぱりと答えた。
「そりゃ、悪かったですね!」
私はむくれて、座布団に座り直すと、ようやく弁当を食べはじめた。
一番大きなから揚げをつまんでかじりつく。
心地よい歯応えの、薄くサクサクとした衣。ジューシーな鶏もも肉の脂が、旨味となって広がる。私の強張った頬は、いとも容易くほころんだ。
そういえば、叔父と神様の出会いのきっかけも、このから揚げ弁当だったのだ。
私がチラと顔を上げたら、神様は愉快そうに、こちらを見つめていた。
私は何だか気恥ずかしくなって、ごまかすように白いご飯をかき込む。
――全くおかしな話だとは思うが、これが私と神様との最初の出会いなのだった。
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