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第6章 真夜中の遊園地と魔王の帰還
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会場は野外ステージのある広場だと聞いていた。この遊園地には良く遊びに来ていたので、場所はすぐに分かった。
ただ会場に近づくにつれ、悪魔達の騒ぎ声も大きくなっていったので、園内の様子を知らなくても辿り着けただろう。
(……やっぱり、かなりの数が集まっているな……)
俺はあまり近付きすぎないように、屈んで物陰に隠れながら、広場の様子を伺った。
「そこまで警戒しなくても、私の魔法で気配は消しているから大丈夫だよ?」
おっさんは俺の頭上から、緊張感の無い声で顔を覗かせる。余計に心配になってきたが、今は彼を信じるしか無い。
「はい……とりあえず、段取り通りよろしくお願いしますよ?」
「もちろん、もちろん♪」
おっさんは相変わらずご機嫌だが、その時ステージでは、俺達の予期せぬ事態が起こっていた。
「これ以上聞いても無駄だ! 旧体制は解体し、フィーニス様を魔王にすべきだ!」
「そうだそうだ! 現魔王も宰相も罷免しろ!」
恐らくフィーニス派と思われる悪魔達がヒートアップしている中、突然ステージとは反対側の上空、つまり俺達が潜んでいる場所の真上から声が響いてきた。
「お集まりの皆さん! その議論に一言物申したい方がおられるようですよ!」
会場の悪魔達が一斉にこちらを振り返る。俺達は慌てて首を引っ込めると頭上を確認した。
声の主は、紫色のさらりとした髪を靡かせ、怪しげな仮面を着けた男だった。
(んげっ、メフィスト!? アイツ捕まって牢獄に入っているんじゃなかったのか!?)
声の主は、件の仮面の悪魔だった。コースターの線路に立って、声高らかに会場に呼び掛けている。
「おや、新しいショーでも始まるのかな?」
おっさんは俺の後ろで呑気に呟いた。
「ご紹介しましょう! 次期魔王候補、フィーニス・タナトス・ルシファー様です!」
「はぁ!?」
メフィストが叫ぶと、その背後から長い黒髪とマントを翻しながら、長身の男が現れた。
かなり痩せているが、マオにどことなく似ている。
「フィーニス様ー!」
会場のどよめきはこれ以上無いくらいの大音量となった。ステージ上のマオやサマエルも目を丸くしている。
「おやおや、良くあの引きこもりが部屋を出て来ましたねぇ?」
おっさんは面白そうに笑っている。フィーニスは気怠そうに会場を見回すと、一つ咳払いして口を開いた。
「あ~、お前らさぁ?」
その声を合図に、悪魔達はそれまでの喧騒が嘘のようにしんと静まり返った。
「なんか勝手に兄貴が辞めたら、俺が魔王やるとかいう話してるみてーだけど、俺、魔王なんてやんねーよ?」
「え?」
会場はそのまま凍りついたように沈黙する。俺も思わず固まってしまった。
その様子を眺めて、メフィストだけが腹を抱えて笑っている。
「あのさ~、人が居ないとこで勝手に話進めないでくれる~? 俺、今日はそんだけ言いに来たから。じゃ、」
フィーニスはこちらに背を向けてひょろりと長い手を振ると、そのまま闇に溶けて行った。
その場に居る誰もが、ぽかんと口を開けて動きを止めている。
「やっぱりそうだよね~」
そんな中、おっさんだけがうんうんと頷いていた。
(はっ! これは今がチャンスかもしれない……!)
俺は場の混乱に乗じようと、おっさんの袖を引いた。
「今だ! 行くぜ!」
「おお、忘れていました! いよいよ私達の出番ですね!」
おっさんは明るい声で頷くと、俺の頭に向かって手の平を広げ、ぶつぶつと何事か呟き始めた。
全身に紫色の熱いオーラのようなものが流れ込んで来る。身体中の力がみなぎってきて、俺は叫び出したくなった。
突如会場に膨れ上がった魔力を感じて、悪魔達は一斉に視線をこちらに向ける。
おっさんが再び頷いたのを確認すると、俺は物陰から飛び出して、彼等の前に躍り出た。
「幸也……?」
ただ会場に近づくにつれ、悪魔達の騒ぎ声も大きくなっていったので、園内の様子を知らなくても辿り着けただろう。
(……やっぱり、かなりの数が集まっているな……)
俺はあまり近付きすぎないように、屈んで物陰に隠れながら、広場の様子を伺った。
「そこまで警戒しなくても、私の魔法で気配は消しているから大丈夫だよ?」
おっさんは俺の頭上から、緊張感の無い声で顔を覗かせる。余計に心配になってきたが、今は彼を信じるしか無い。
「はい……とりあえず、段取り通りよろしくお願いしますよ?」
「もちろん、もちろん♪」
おっさんは相変わらずご機嫌だが、その時ステージでは、俺達の予期せぬ事態が起こっていた。
「これ以上聞いても無駄だ! 旧体制は解体し、フィーニス様を魔王にすべきだ!」
「そうだそうだ! 現魔王も宰相も罷免しろ!」
恐らくフィーニス派と思われる悪魔達がヒートアップしている中、突然ステージとは反対側の上空、つまり俺達が潜んでいる場所の真上から声が響いてきた。
「お集まりの皆さん! その議論に一言物申したい方がおられるようですよ!」
会場の悪魔達が一斉にこちらを振り返る。俺達は慌てて首を引っ込めると頭上を確認した。
声の主は、紫色のさらりとした髪を靡かせ、怪しげな仮面を着けた男だった。
(んげっ、メフィスト!? アイツ捕まって牢獄に入っているんじゃなかったのか!?)
声の主は、件の仮面の悪魔だった。コースターの線路に立って、声高らかに会場に呼び掛けている。
「おや、新しいショーでも始まるのかな?」
おっさんは俺の後ろで呑気に呟いた。
「ご紹介しましょう! 次期魔王候補、フィーニス・タナトス・ルシファー様です!」
「はぁ!?」
メフィストが叫ぶと、その背後から長い黒髪とマントを翻しながら、長身の男が現れた。
かなり痩せているが、マオにどことなく似ている。
「フィーニス様ー!」
会場のどよめきはこれ以上無いくらいの大音量となった。ステージ上のマオやサマエルも目を丸くしている。
「おやおや、良くあの引きこもりが部屋を出て来ましたねぇ?」
おっさんは面白そうに笑っている。フィーニスは気怠そうに会場を見回すと、一つ咳払いして口を開いた。
「あ~、お前らさぁ?」
その声を合図に、悪魔達はそれまでの喧騒が嘘のようにしんと静まり返った。
「なんか勝手に兄貴が辞めたら、俺が魔王やるとかいう話してるみてーだけど、俺、魔王なんてやんねーよ?」
「え?」
会場はそのまま凍りついたように沈黙する。俺も思わず固まってしまった。
その様子を眺めて、メフィストだけが腹を抱えて笑っている。
「あのさ~、人が居ないとこで勝手に話進めないでくれる~? 俺、今日はそんだけ言いに来たから。じゃ、」
フィーニスはこちらに背を向けてひょろりと長い手を振ると、そのまま闇に溶けて行った。
その場に居る誰もが、ぽかんと口を開けて動きを止めている。
「やっぱりそうだよね~」
そんな中、おっさんだけがうんうんと頷いていた。
(はっ! これは今がチャンスかもしれない……!)
俺は場の混乱に乗じようと、おっさんの袖を引いた。
「今だ! 行くぜ!」
「おお、忘れていました! いよいよ私達の出番ですね!」
おっさんは明るい声で頷くと、俺の頭に向かって手の平を広げ、ぶつぶつと何事か呟き始めた。
全身に紫色の熱いオーラのようなものが流れ込んで来る。身体中の力がみなぎってきて、俺は叫び出したくなった。
突如会場に膨れ上がった魔力を感じて、悪魔達は一斉に視線をこちらに向ける。
おっさんが再び頷いたのを確認すると、俺は物陰から飛び出して、彼等の前に躍り出た。
「幸也……?」
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