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第5章 愉悦する道化師
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「はーい! また僕の勝ちー!」
「ううむ……これは斉藤殿に教えを請わねばならんな」
今日は保育園が休みなので、バイトも一日休みにしていた。
貴重な休みを使って、俺がギターの練習をしている横で、マオとメレクがテレビゲームをしている。双子達も一緒に、二人のプレイを見て楽しんでいた。
「しかし、ゲームにまで興味があるとはな……」
俺は少し休憩しようとヘッドホンを外す。メレクは意気揚々と答えた。
「とーぜん! 楽しい事ならなんだって大好きだよ! アキバ見に行ってたらさー、これお店で見かけて超面白そうだったんだもの」
メレクは今日の昼過ぎに、ゲームのハード機と新作パーティゲームのソフトを持って、突然うちを訪ねて来た。
ゲームは置いていくから、テレビを使わせてくれというのだ。
「……また衝動買いですか」
背後から暗い声がして振り返ると、サマエルが鎮痛な面持ちでお盆を持って立っていた。
「いいにおいがするー!」
そらが真っ先に反応した。
「さあ皆さん、おやつにしましょう。ホットケーキミックスで、ドーナツを揚げて参りました」
「どーなつー!」
双子は歓声を上げてサマエルの足元に駆け寄った。皿の上には小ぶりなドーナツが沢山積み上がっている。
「そーいやメレク、手伝いの方は進んでるのか?」
俺もサマエルからドーナツと牛乳を受け取りながら、カーニバルの山車の修理状況について尋ねた。
「うん、順調順調! ちょっと派手さが足りないから、また材料調達してこようかなーと思ってるよ。チームの皆んな明るくて楽しい人達だよー! ダンスもちょっと教えて貰っちゃった♪」
メレクはとても楽しそうだ。
「間に合いそうなら良かったわ」
「そっちこそ、練習はどーなの? 本番もうすぐでしょ? まだミスが多いみたいだけど?」
メレクはゲームをしつつ、俺の練習をちゃんと聞いていたらしい。
「ま、まあ……何回かスタジオ練も入ったし、次のスタジオで合わせたら……本番だな」
久しぶりに舞台に立つ事を考えると、今から少し緊張してしまう。
「ライブは私も観に行けるのか?」
マオがドーナツをもぐもぐしながら質問した。
「え、まあ構わねえけど……お前興味あるのか?」
マオはこくりと頷く。
「そりゃ行くでしょ? 最前列で見守っててあげるよ!」
メレクもノリノリだ。ミスったらめちゃくちゃ煽ってきそうですごく嫌だが。
「私はお二人と留守番しておりますね。舞台が上手くいくよう祈っております」
そう言ってサマエルは双子の肩に手を置いて微笑んだ。
「ああ、助かる」
さすがにライブハウスに双子を連れては行けない。なんだかんだサマエルが居てくれて、俺はかなり助けられていた。
(後は俺が頑張るだけだな……)
あれから魔界の仕事をこなす日のマオは、疲れはするようだがそんなに暗い顔をしなくなった。
逆に俺達とこうやって過ごす時間では、良く笑顔を見せるようにもなっていた。
「お前の演奏楽しみにしているぞ」
マオは期待のこもった眼差しで俺を見つめる。
「ゆきにがんばって!」
「がんばえー!」
「まかしとけって! 華々しくライブ復帰キメてやるわ!」
不安はあったが、俺はもう自分を追い込むつもりで、皆んなの前で大見得を切ってやった。
「ううむ……これは斉藤殿に教えを請わねばならんな」
今日は保育園が休みなので、バイトも一日休みにしていた。
貴重な休みを使って、俺がギターの練習をしている横で、マオとメレクがテレビゲームをしている。双子達も一緒に、二人のプレイを見て楽しんでいた。
「しかし、ゲームにまで興味があるとはな……」
俺は少し休憩しようとヘッドホンを外す。メレクは意気揚々と答えた。
「とーぜん! 楽しい事ならなんだって大好きだよ! アキバ見に行ってたらさー、これお店で見かけて超面白そうだったんだもの」
メレクは今日の昼過ぎに、ゲームのハード機と新作パーティゲームのソフトを持って、突然うちを訪ねて来た。
ゲームは置いていくから、テレビを使わせてくれというのだ。
「……また衝動買いですか」
背後から暗い声がして振り返ると、サマエルが鎮痛な面持ちでお盆を持って立っていた。
「いいにおいがするー!」
そらが真っ先に反応した。
「さあ皆さん、おやつにしましょう。ホットケーキミックスで、ドーナツを揚げて参りました」
「どーなつー!」
双子は歓声を上げてサマエルの足元に駆け寄った。皿の上には小ぶりなドーナツが沢山積み上がっている。
「そーいやメレク、手伝いの方は進んでるのか?」
俺もサマエルからドーナツと牛乳を受け取りながら、カーニバルの山車の修理状況について尋ねた。
「うん、順調順調! ちょっと派手さが足りないから、また材料調達してこようかなーと思ってるよ。チームの皆んな明るくて楽しい人達だよー! ダンスもちょっと教えて貰っちゃった♪」
メレクはとても楽しそうだ。
「間に合いそうなら良かったわ」
「そっちこそ、練習はどーなの? 本番もうすぐでしょ? まだミスが多いみたいだけど?」
メレクはゲームをしつつ、俺の練習をちゃんと聞いていたらしい。
「ま、まあ……何回かスタジオ練も入ったし、次のスタジオで合わせたら……本番だな」
久しぶりに舞台に立つ事を考えると、今から少し緊張してしまう。
「ライブは私も観に行けるのか?」
マオがドーナツをもぐもぐしながら質問した。
「え、まあ構わねえけど……お前興味あるのか?」
マオはこくりと頷く。
「そりゃ行くでしょ? 最前列で見守っててあげるよ!」
メレクもノリノリだ。ミスったらめちゃくちゃ煽ってきそうですごく嫌だが。
「私はお二人と留守番しておりますね。舞台が上手くいくよう祈っております」
そう言ってサマエルは双子の肩に手を置いて微笑んだ。
「ああ、助かる」
さすがにライブハウスに双子を連れては行けない。なんだかんだサマエルが居てくれて、俺はかなり助けられていた。
(後は俺が頑張るだけだな……)
あれから魔界の仕事をこなす日のマオは、疲れはするようだがそんなに暗い顔をしなくなった。
逆に俺達とこうやって過ごす時間では、良く笑顔を見せるようにもなっていた。
「お前の演奏楽しみにしているぞ」
マオは期待のこもった眼差しで俺を見つめる。
「ゆきにがんばって!」
「がんばえー!」
「まかしとけって! 華々しくライブ復帰キメてやるわ!」
不安はあったが、俺はもう自分を追い込むつもりで、皆んなの前で大見得を切ってやった。
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