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第4章 欲望の悪魔と煌めきのカーニバル
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「はいこれ、お土産♡」
翌日、朝食の席には何故か悪魔が一人増えていた。
「いや、なんで居るんすか?」
俺が一口味噌汁を飲んでから突っ込むと、その小柄な悪魔は細い眉を跳ね上げてぷりぷりと怒った。
「そう邪険にしないでよ~! 君ん家の服がペラペラの量産服しか無さそうだから、クラースに買ってきてあげたんじゃん! 僕、魔王の衣装係でもあるんだから、この子に変な服着せとけないのー!」
「ウニクロの服は別に変じゃねーって! お前、今の発言で日本人の何割ディスったか分かってんのか?」
俺達が口論している横で、サマエルが苦笑している。双子はにこにことウインナーとオムレツを齧っていた。メレクの存在にはもう慣れたらしい。順応が早すぎる。若さか。
マオはメレクに渡された紙袋から服を取り出すと広げて見せる。
それは、ただのなんの変哲もない白いTシャツのように見えた。
「なんだよ、ふっつーの白Tじゃん。うちにもあるっての!」
「はあ、これだから素人は……。良く生地を見てよ、それからカット。これはクラースの体型にぴったりなの! シンプルだからこそ質感とシルエットが活きてくるんだから!」
メレクは俺を見下げるようにして冷笑し、シャツを指差した。
その時チラリとのぞいたタグの値段に俺は思わず声を上げる。
「に、二万!? てゆーか、お前金はどーしたんだ?」
「ん? 王室の諸費用として国庫の財宝を換金したよー」
「メレク様!? また経費で無駄遣いを……!?」
今度はサマエルが声を上げる。
「無駄とは聞き捨てならないね? 必要経費でしょー!?」
「……ああ、人間界にいらした事で、メレク様の浪費癖に拍車がかかっている……」
サマエルが頭を抱えると、そらがぽんぽんと彼の肩を叩いた。
「あたまいたーの?」
「痛いですねぇ、とても」
サマエルは項垂れたまま呻いた。
「なにさ、自分だって食べ歩きしてんじゃん!」
「私は私財から換金しています! 魔界の財宝はかつての盗品だったり曰く付きの物ばかりですから、換金の際はブローカーにかなりマージンを抜かれるんです。人間界に不可侵の現体制になってからは、人間界からの強奪等も当然無くなりましたから、魔界の財源にも限りがあるんですよ!?」
魔界にも財政難とかあるんだなと、二人の小競り合いを眺めながら、俺はトーストに齧り付いた。
「しーってるよ~。だから、ほら僕の分はちゃんと自腹だって!」
そう言うと、メレクは自身の背後に置いてあった大量の紙袋を示した。
良く見れば彼の服装も昨日とは異なっている。ファッション誌の街角スナップ的な写真で、原宿や渋谷に良くいる若者の感じだ。
「ああ……これで一体どれだけの魔界の財宝が人間界に流れたのか……」
サマエルは顔を覆ってしまった。今度はうみが肩をさすってあげている。
「お前んちも色々大変なんだな」
俺がマオを見ると、彼はもう白Tに着替えていた。確かにサイズ感がぴったりで、シルエットが美しく見える。
「どうだろうか?」
「うん……似合ってる。が、それ一枚でコンビニバイト4回分だぞ」
俺がそう答えると、マオは眉を潜めてまじまじとTシャツを見下ろした。
「ま、そんな訳だから、また定期的に様子見に来るね! ばいばーい☆」
「どう言う訳だよ……」
俺の突っ込みが届くか届かないかの内に、メレクは大量の紙袋と共に姿を消していた。
(まー、いつまでも俺の服着回してたらバイト先の人にもバレそうだし、サマエルには悪いけど、くれるなら貰っとくか……)
俺はそんな事を考えながら、残りのお茶を飲み干した。
翌日、朝食の席には何故か悪魔が一人増えていた。
「いや、なんで居るんすか?」
俺が一口味噌汁を飲んでから突っ込むと、その小柄な悪魔は細い眉を跳ね上げてぷりぷりと怒った。
「そう邪険にしないでよ~! 君ん家の服がペラペラの量産服しか無さそうだから、クラースに買ってきてあげたんじゃん! 僕、魔王の衣装係でもあるんだから、この子に変な服着せとけないのー!」
「ウニクロの服は別に変じゃねーって! お前、今の発言で日本人の何割ディスったか分かってんのか?」
俺達が口論している横で、サマエルが苦笑している。双子はにこにことウインナーとオムレツを齧っていた。メレクの存在にはもう慣れたらしい。順応が早すぎる。若さか。
マオはメレクに渡された紙袋から服を取り出すと広げて見せる。
それは、ただのなんの変哲もない白いTシャツのように見えた。
「なんだよ、ふっつーの白Tじゃん。うちにもあるっての!」
「はあ、これだから素人は……。良く生地を見てよ、それからカット。これはクラースの体型にぴったりなの! シンプルだからこそ質感とシルエットが活きてくるんだから!」
メレクは俺を見下げるようにして冷笑し、シャツを指差した。
その時チラリとのぞいたタグの値段に俺は思わず声を上げる。
「に、二万!? てゆーか、お前金はどーしたんだ?」
「ん? 王室の諸費用として国庫の財宝を換金したよー」
「メレク様!? また経費で無駄遣いを……!?」
今度はサマエルが声を上げる。
「無駄とは聞き捨てならないね? 必要経費でしょー!?」
「……ああ、人間界にいらした事で、メレク様の浪費癖に拍車がかかっている……」
サマエルが頭を抱えると、そらがぽんぽんと彼の肩を叩いた。
「あたまいたーの?」
「痛いですねぇ、とても」
サマエルは項垂れたまま呻いた。
「なにさ、自分だって食べ歩きしてんじゃん!」
「私は私財から換金しています! 魔界の財宝はかつての盗品だったり曰く付きの物ばかりですから、換金の際はブローカーにかなりマージンを抜かれるんです。人間界に不可侵の現体制になってからは、人間界からの強奪等も当然無くなりましたから、魔界の財源にも限りがあるんですよ!?」
魔界にも財政難とかあるんだなと、二人の小競り合いを眺めながら、俺はトーストに齧り付いた。
「しーってるよ~。だから、ほら僕の分はちゃんと自腹だって!」
そう言うと、メレクは自身の背後に置いてあった大量の紙袋を示した。
良く見れば彼の服装も昨日とは異なっている。ファッション誌の街角スナップ的な写真で、原宿や渋谷に良くいる若者の感じだ。
「ああ……これで一体どれだけの魔界の財宝が人間界に流れたのか……」
サマエルは顔を覆ってしまった。今度はうみが肩をさすってあげている。
「お前んちも色々大変なんだな」
俺がマオを見ると、彼はもう白Tに着替えていた。確かにサイズ感がぴったりで、シルエットが美しく見える。
「どうだろうか?」
「うん……似合ってる。が、それ一枚でコンビニバイト4回分だぞ」
俺がそう答えると、マオは眉を潜めてまじまじとTシャツを見下ろした。
「ま、そんな訳だから、また定期的に様子見に来るね! ばいばーい☆」
「どう言う訳だよ……」
俺の突っ込みが届くか届かないかの内に、メレクは大量の紙袋と共に姿を消していた。
(まー、いつまでも俺の服着回してたらバイト先の人にもバレそうだし、サマエルには悪いけど、くれるなら貰っとくか……)
俺はそんな事を考えながら、残りのお茶を飲み干した。
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