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第4章 欲望の悪魔と煌めきのカーニバル
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「おや、魔王様もお帰りのようだ。それじゃあ、直接話を聞かせて貰おうかな?」
彼、なのか彼女なのか、振り返った顔はまだあどけない少女のようだったが、化粧をしており大人っぽくも見える。シャドーを施した目は怪しく光り、マオを凝視していた。
「メレク……」
やはりこの子も知り合いらしい。しかしマオは、冷や汗をかき驚きに満ちた表情をして、明らかに動揺していた。
子供相手にしてはあまりにも狼狽しすぎていて、この子を怖がってすらいるように見える。
「サマエル、お客さんか?」
マオが硬直したまま動かないので、仕方なく俺がサマエルに尋ねた。
双子達も見慣れないお客さんを警戒しているのか、俺の後ろに隠れて様子を伺っている。
「勝手に招き入れてしまい大変申し訳ございません……こちらはメレク・サタナキア、魔王軍でも屈指の魔力を誇る大将軍でございます」
「は、はあ……」
どうやらサマエルもメレクには逆らえない様子だ。
それにしても、本当にこの小柄なお子様が魔王軍の将なのだろうか。
「ふーん、アンタが幸也か。クラースと契約した人間なんだってね?」
そう言うとメレクは立ち上がって、俺のすぐ目の前まで歩いて来た。確かに態度だけは将軍様のようだ。
「君いくつなの? その若さならやりたい事も欲しい物もいっぱいあるでしょう? さっさと願いを言っちゃえばいーのに? 好きな子とかいないの?」
メレクはぐいぐいと俺に顔を寄せると、無遠慮に質問を浴びせ掛ける。
どうやらコイツも俺に早く願いを叶えさせて、魔王を連れ帰りたいらしい。
「今は彼女どころじゃ無いんで……ってゆーか、叶えたい願いがデカすぎると対価が支払えないし、しょぼいのじゃヤダってコイツがワガママ言うから決まらねーんだって、サマエルにも説明したろ?」
「ふーん、じゃあ本当ならどんな願いを叶えたい訳?」
メレクは背伸びして、ずいと更に顔を近づけると、大きな瞳で俺の目の中を覗き込んで来た。メレクの瞳がうっすら赤く光ったような気がする。
「なっ、何すんだよ!?」
俺が咄嗟に払い退けると、メレクはふわりと後ろに退いた。
「確かに両親を生き返らせるには、二人分の生きた魂と引き換えになるね。後ろの子達が、これから幸福に暮らしていけるだけの金や運を授ける場合も、君の残りの人生を貰うだけじゃちょっと足りないかな……」
やはり悪魔、とんでもない見積もりを出してきやがる。というかコイツ、今俺の心を読んだのだろうか。
「でも、他にももやもやした気持ちが色々あるみたいだねー? 自分の欲望くらい、ちゃんと意識しよ?」
メレクはそう言うと小さな肩を竦めた。
「ま、ゆっくり決めてくれてもいーんだけど。その代わり、クラース達が魔界に帰って来るまで、僕も人間界に通っちゃうからね♪」
「え!?」
それを聞いてサマエルが声を上げて驚いた。
「そ、それはいけません! 悪魔が召喚以外で自ら人間界を訪れるには正当な理由が……」
「理由ならあるよー。僕直接クラースと会って近況報告したり、命令受けたりするもん」
「魔王様のご意志は、私が魔界と人間界を行き来してお伝えしますので……」
「ふーん? サマエルも正当な理由とか言ってるけど、ちゃっかり人間界の料理を食べ歩きして楽しんでるでしょー?」
彼、なのか彼女なのか、振り返った顔はまだあどけない少女のようだったが、化粧をしており大人っぽくも見える。シャドーを施した目は怪しく光り、マオを凝視していた。
「メレク……」
やはりこの子も知り合いらしい。しかしマオは、冷や汗をかき驚きに満ちた表情をして、明らかに動揺していた。
子供相手にしてはあまりにも狼狽しすぎていて、この子を怖がってすらいるように見える。
「サマエル、お客さんか?」
マオが硬直したまま動かないので、仕方なく俺がサマエルに尋ねた。
双子達も見慣れないお客さんを警戒しているのか、俺の後ろに隠れて様子を伺っている。
「勝手に招き入れてしまい大変申し訳ございません……こちらはメレク・サタナキア、魔王軍でも屈指の魔力を誇る大将軍でございます」
「は、はあ……」
どうやらサマエルもメレクには逆らえない様子だ。
それにしても、本当にこの小柄なお子様が魔王軍の将なのだろうか。
「ふーん、アンタが幸也か。クラースと契約した人間なんだってね?」
そう言うとメレクは立ち上がって、俺のすぐ目の前まで歩いて来た。確かに態度だけは将軍様のようだ。
「君いくつなの? その若さならやりたい事も欲しい物もいっぱいあるでしょう? さっさと願いを言っちゃえばいーのに? 好きな子とかいないの?」
メレクはぐいぐいと俺に顔を寄せると、無遠慮に質問を浴びせ掛ける。
どうやらコイツも俺に早く願いを叶えさせて、魔王を連れ帰りたいらしい。
「今は彼女どころじゃ無いんで……ってゆーか、叶えたい願いがデカすぎると対価が支払えないし、しょぼいのじゃヤダってコイツがワガママ言うから決まらねーんだって、サマエルにも説明したろ?」
「ふーん、じゃあ本当ならどんな願いを叶えたい訳?」
メレクは背伸びして、ずいと更に顔を近づけると、大きな瞳で俺の目の中を覗き込んで来た。メレクの瞳がうっすら赤く光ったような気がする。
「なっ、何すんだよ!?」
俺が咄嗟に払い退けると、メレクはふわりと後ろに退いた。
「確かに両親を生き返らせるには、二人分の生きた魂と引き換えになるね。後ろの子達が、これから幸福に暮らしていけるだけの金や運を授ける場合も、君の残りの人生を貰うだけじゃちょっと足りないかな……」
やはり悪魔、とんでもない見積もりを出してきやがる。というかコイツ、今俺の心を読んだのだろうか。
「でも、他にももやもやした気持ちが色々あるみたいだねー? 自分の欲望くらい、ちゃんと意識しよ?」
メレクはそう言うと小さな肩を竦めた。
「ま、ゆっくり決めてくれてもいーんだけど。その代わり、クラース達が魔界に帰って来るまで、僕も人間界に通っちゃうからね♪」
「え!?」
それを聞いてサマエルが声を上げて驚いた。
「そ、それはいけません! 悪魔が召喚以外で自ら人間界を訪れるには正当な理由が……」
「理由ならあるよー。僕直接クラースと会って近況報告したり、命令受けたりするもん」
「魔王様のご意志は、私が魔界と人間界を行き来してお伝えしますので……」
「ふーん? サマエルも正当な理由とか言ってるけど、ちゃっかり人間界の料理を食べ歩きして楽しんでるでしょー?」
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