東京浅草、居候は魔王様!

栗槙ひので

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第4章 欲望の悪魔と煌めきのカーニバル

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 食っている最中、隣のテーブルのフミ達とも、最近どんなバイトしているのか等、他愛のない会話をした。

 随分長い事会っていなかった気がするが、こいつらは卒業前と何も変わっていなかった。

「じゃあ、考えといてな……!」

 俺達が席を立つと、フミは今一度念を押した。

「ああ、なるべく早く返事するよ」

 俺はそう答えると、支払いを済ませて外へ出る。

(別に何かあった訳でもねーのに、俺だけ余所余所しくしちまったな……)

 高校の頃はあんなに仲が良かったのに、卒業してから俺だけがなんだか遠くに居るような気がして、フミ達とあの頃のように接する事がどうしても出来なかった。

「幸也……」

 俺が少しだけ感傷に浸っていると、後ろからマオが声を掛けてきた。
 俺の様子が何かおかしいとでも思ったのだろうか。魔王の表情は真剣だ。

「……ラーメンは美味いな」

 一瞬何のことか分からなくて、俺は真顔になってしまったが、次の瞬間思い切り吹き出してしまった。

「……そりゃ良かったな」

 大真面目に感想を述べる魔王に、また別の店にも連れてってやると約束して、俺達はまどろみへと向かった。

 しかし、オレンジ通りに入った所で俺達はばったり奴と遭遇してしまったのだ。

「やあ、幸也君!」

「月斗……」

 色鉛筆セットに入っている色全部使いましたと言わんばかりの、カラフルなシャツを羽織り、頭にオレンジ色に輝くサングラスを乗せている。わざわざ持ってきたならちゃんと掛けろ。

 しかし今日は何故か、いつもの女の子達ではなく、海外の人らしい背の高い女性二人と並んで歩いていた。

 ついジロジロと彼女達を見てしまっていたらしく、俺の視線に気付いた月斗が偉そうに説明した。

「やあ、気になるかい? 彼女達は今度僕とカーニバルで一緒に踊るんだ。月末のパレード是非見に来てくれよな!」

「カーニバルってあの、毎年夏の終わりにやってる派手なパレードの……?」

「もちろんだ! あのイベントにはうちの会社も協賛していてね! 毎年プロのダンサー達を呼んで社員も一緒に参加しているんだよ。今年は僕も踊る事になってね! 特製アレゴリアのセンターに居るから注目してくれたまえ!」

 うちの会社ってのは、親父さんのだろうが、地域イベントにも影響力があるとは、やはりデカイ会社だ。
 横で話を聞いていたマオは、首を傾げて俺に質問した。

「かーにばるとはなんだ?」

「ああ……簡単に言うと踊りながら行進するイベントだな。カーニバルの参加者は、綺麗な衣装を着て踊りながら浅草の街を練り歩くんだ。派手に飾られた山車を囲んで大勢の人間がキラキラ踊って……まあ、そういう感じのお祭りみたいな」

「ほう?」

「あ、そう言えばこの間の花火の日、お前うちのバーベキュー会場に居なかったか?」

 月斗が急に嫌な事を思い出す。

「ん、んな訳ねーじゃん! 俺はバイトしてたっての。じゃーな、気が向いたら観に行ってやるわ!」

 ややこしい事にならない内に、俺は慌てて話を切り上げると、マオを連れてまどろみのある路地へ向かった。

「お疲れ様です」

 カランとドアベルを鳴らして店内に入ると、珍しくマスターがお客さんと談笑している。

「あら、幸也ちゃんマオちゃんお疲れ様!」

 マスターはなんだかご機嫌な様子だ。お客さんは四十代くらいの男性で、マスターと張るくらい濃い顔をしていた。彼もまた満面の笑みを浮かべている。

「なんか嬉しそうっすね……何かあったんですか?」

「実はね……」

 俺が尋ねると、マスターはお客さんの肩を掴んで誇らしげに語った。

「私のお友達があのカーニバルイベントでダンスするのよ! 結構重要なポジションに決まったらしくて、楽しみだわ~!」
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