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第3章 魔王の参謀と花火大会
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「なんだ? 煙?」
「おれも、まほつかえるんだ!」
そらは嬉しそうに煙を出し続けた。
「ほう、人間の子どもでも魔法が身につくのか?」
まさかとは思ったが、魔王様はすっかり騙されて感心している。
うみもこっそりそらの背後に近づいて、後ろ手に隠している厚紙に指を擦り付けた。
「わたしもできるよー!」
そしてマオの前に顔を出すと、うみもにこにこと煙を出し始めた。
サマエルは後ろで苦笑している。
「おお……まだ幼いというのに凄いな。もう少し修行すれば、火くらい出せるようになるかもしれんぞ」
ここまで素直な魔王様で、魔界を治められるのか逆に心配になってくる。
「はいはい、二人ともあんまりマオをからかわないの」
「からかう?」
不思議そうな顔をしているマオに、俺はそらが選んだスーパーのお土産を突き出した。
「それより俺達、炎なら修行しなくても出せるんだぜ?」
それは手持ち花火のセットだった。
「はなびー!」
「マオ、いっしょにやろーっ!」
「花火……とは、昨日の?」
「あんなでっかい奴じゃなくて、家庭用の小さい奴だけどな」
俺は棚からライターと蝋燭を取り出しながら説明した。
「お、去年の残りもあったぞ……しけっちまってるかな? さあ、バケツ持って外行こうぜ!」
マオはまだきょとんとしていたが、はしゃぐ双子にシャツを引っ張られて立ち上がった。
家の前にバケツを置いて、蝋燭に火を付ける。幸い風は強くない。
「ほい、好きなの取りな」
俺は花火セットを開けて双子に選ばせた。二人はひねったキャンディ包みのような花火を手に取る。
「ほれ、マオも」
「……ああ」
マオはシンプルな棒状の花火を、サマエルは縞々模様の花火を選んだ。
俺も一本取って早速火を点ける。リボンのような紙が燃えて、火薬の先端から赤色の炎が音を立てて勢い良く吹き出した。
「おお」
「ゆきにあかいろ!」
マオは驚きの声を上げ、双子は手を叩いて喜んだ。
「ほれ、気を付けて点けてみ。人の居る方に向けるなよ」
双子も順番に蝋燭に花火をかざす。すぐに先端から綺麗な色の花火が吹き出してきた。
「みて! おれ、あおいろ!」
「うみはみどりだよー!」
「マオもやりなよー!」
そらに急かされて、マオもそっと蝋燭の火に自分の花火を差し出した。
先端の火薬がじんわり燃え出すと、パチパチと火の粉が飛び出し始める。
「おお……」
「マオのはパチパチだねー!」
「パチパチー!」
金色の炎が、大きなタンポポの綿毛のようにパチパチと丸く爆ぜている。
マオは瞳に金色の粒を浮かばせながら、真剣に花火を眺めていた。
「私のは途中で色が変わりましたよ」
サマエルも楽しそうに、双子に自分の花火を見せていた。
「こっちは点くかなー?」
俺は棚で見つけた花火を袋から取り出した。
「うみの好きな奴だろ? ちょっと持っててみ?」
「うん!」
それは長い棒の先端に紐をくくりつけて遊ぶ花火で、紐の先には小さい箱のような物がぶら下がっている。
俺は導火線にライターで火を点けようとしたが、やはりしけってしるのか上手く点かない。
「やっぱダメかー」
するとサマエルが近づいてきて、箱を両手で包み込んだ。
少し目を閉じた後、そっと手を離してサマエルは俺に頷き掛ける。
(もう大丈夫……て事か?)
俺はもう一度ライターの火をかざしてみた。
「点いた!」
「おれも、まほつかえるんだ!」
そらは嬉しそうに煙を出し続けた。
「ほう、人間の子どもでも魔法が身につくのか?」
まさかとは思ったが、魔王様はすっかり騙されて感心している。
うみもこっそりそらの背後に近づいて、後ろ手に隠している厚紙に指を擦り付けた。
「わたしもできるよー!」
そしてマオの前に顔を出すと、うみもにこにこと煙を出し始めた。
サマエルは後ろで苦笑している。
「おお……まだ幼いというのに凄いな。もう少し修行すれば、火くらい出せるようになるかもしれんぞ」
ここまで素直な魔王様で、魔界を治められるのか逆に心配になってくる。
「はいはい、二人ともあんまりマオをからかわないの」
「からかう?」
不思議そうな顔をしているマオに、俺はそらが選んだスーパーのお土産を突き出した。
「それより俺達、炎なら修行しなくても出せるんだぜ?」
それは手持ち花火のセットだった。
「はなびー!」
「マオ、いっしょにやろーっ!」
「花火……とは、昨日の?」
「あんなでっかい奴じゃなくて、家庭用の小さい奴だけどな」
俺は棚からライターと蝋燭を取り出しながら説明した。
「お、去年の残りもあったぞ……しけっちまってるかな? さあ、バケツ持って外行こうぜ!」
マオはまだきょとんとしていたが、はしゃぐ双子にシャツを引っ張られて立ち上がった。
家の前にバケツを置いて、蝋燭に火を付ける。幸い風は強くない。
「ほい、好きなの取りな」
俺は花火セットを開けて双子に選ばせた。二人はひねったキャンディ包みのような花火を手に取る。
「ほれ、マオも」
「……ああ」
マオはシンプルな棒状の花火を、サマエルは縞々模様の花火を選んだ。
俺も一本取って早速火を点ける。リボンのような紙が燃えて、火薬の先端から赤色の炎が音を立てて勢い良く吹き出した。
「おお」
「ゆきにあかいろ!」
マオは驚きの声を上げ、双子は手を叩いて喜んだ。
「ほれ、気を付けて点けてみ。人の居る方に向けるなよ」
双子も順番に蝋燭に花火をかざす。すぐに先端から綺麗な色の花火が吹き出してきた。
「みて! おれ、あおいろ!」
「うみはみどりだよー!」
「マオもやりなよー!」
そらに急かされて、マオもそっと蝋燭の火に自分の花火を差し出した。
先端の火薬がじんわり燃え出すと、パチパチと火の粉が飛び出し始める。
「おお……」
「マオのはパチパチだねー!」
「パチパチー!」
金色の炎が、大きなタンポポの綿毛のようにパチパチと丸く爆ぜている。
マオは瞳に金色の粒を浮かばせながら、真剣に花火を眺めていた。
「私のは途中で色が変わりましたよ」
サマエルも楽しそうに、双子に自分の花火を見せていた。
「こっちは点くかなー?」
俺は棚で見つけた花火を袋から取り出した。
「うみの好きな奴だろ? ちょっと持っててみ?」
「うん!」
それは長い棒の先端に紐をくくりつけて遊ぶ花火で、紐の先には小さい箱のような物がぶら下がっている。
俺は導火線にライターで火を点けようとしたが、やはりしけってしるのか上手く点かない。
「やっぱダメかー」
するとサマエルが近づいてきて、箱を両手で包み込んだ。
少し目を閉じた後、そっと手を離してサマエルは俺に頷き掛ける。
(もう大丈夫……て事か?)
俺はもう一度ライターの火をかざしてみた。
「点いた!」
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