48 / 92
第3章 魔王の参謀と花火大会
46
しおりを挟む
目の前に並ぶ、沢山の小さくてカラフルなお菓子やおもちゃ、天井からも様々なものが吊り下がっている。
チープなはずの駄菓子達は、まるで宝の山のように見えた。
(この光景、いくつになってもワクワクするんだよなぁ……)
「わあー!」
「どれにしよう」
双子も目を輝かせている。サマエルはその後ろで、興味深そうに商品を眺めていた。
「今日は二つまで選んで良いぞ」
俺がそう言うと、二人は入念にお菓子を選び始める。
「あら、いらっしゃい」
俺達の声に気が付いて、店の奥から小島さんが顔を出した。
「昨日はありがとうございました」
俺が頭を下げると、おばあさんはぱたぱたと手を振りながら微笑んだ。
「こちらこそ、素敵な花火大会になったわ」
すると、子ども達はようやく決心がついたらしく、俺に欲しい商品をそれぞれ手渡してきた。
うみは捻ったようなピンク色のゼリー棒と、すももを選んだ。そらは四粒入りの小さな箱に入ったソーダガムと、柱に掛けられた束から一枚の板紙を引き抜いた。
「そら、これはお菓子じゃないだろー?」
それは、シートを剥がすと表面に糊のようなものがついている紙で、それを指に塗ってつけたり離したりすると煙のようなものが出てくるおもちゃだった。
子ども騙しなようでいて、実は俺も小さい頃は結構好きで良く遊んでいたので、あまり強く止められない。
「マオびっくりするかなー?」
どうやらこれもマオに見せたいらしい。
「どうだろうな?」
本物の悪魔がこんなおもちゃの仕掛けに騙されはしないだろうが、マオがどんな顔をするかちょっと楽しみだ。
俺達は会計を済ませておばあさんに挨拶すると、やっと家に帰った。暑い中ずっと歩いて来たので汗だくだ。
「ただいまー!」
二階に様子を見に行くと、マオの執務室の前はなんだか空気が淀んでいる。目には見えないが、邪悪な何かが部屋から漏れ出ているようだった。
「私はクラース様のお手伝いをして参ります」
サマエルはそう言って、にこやかに部屋に入っていったが、俺は部屋には入らず彼等の邪魔をしないように双子と遊んで過ごす事にした。
(押入れの奥から探し出さなきゃならないものもあるしな……)
マオは昼食に降りて来た際も、朝より酷い顔でぐったりとした様子だった。
「な、何だか大変そうだな……」
「しばらく留守にしてしまったからな……」
マオは大きな溜息を吐くと、虚な目で俺の茹でた素麺をすすった。
魔王様とサマエルは午後も執務室に閉じこもっていた。
(そろそろ差し入れを持って行ってやるか)
おやつの時間になると、スーパーでうみが選んだ苺のシロップと、帰ってすぐに凍らせた氷をタッパーから取り出した。
探し物はちゃんと押入れの奥から見つかっていた。俺が子どもの頃からあるかき氷機だ。
「ゆきに! もうかちごりつくるの?」
「うみもてつだうー!」
俺達は昨日食べそびれてしまったかき氷を、自分達で手作りする事にしたのだった。
「よーし、もりもり作ってマオに持って行ってやろうぜ」
氷をセットして、交代でゴリゴリとハンドルを回す。水色のかき氷トラックの形をした削り機の中で、まぬけな顔をした人形の首がゆらゆら揺れている。
「思ったより骨が折れるな……」
力を込めて回し続け、やっとガラスの器に山盛り一杯の氷が削れた。
チープなはずの駄菓子達は、まるで宝の山のように見えた。
(この光景、いくつになってもワクワクするんだよなぁ……)
「わあー!」
「どれにしよう」
双子も目を輝かせている。サマエルはその後ろで、興味深そうに商品を眺めていた。
「今日は二つまで選んで良いぞ」
俺がそう言うと、二人は入念にお菓子を選び始める。
「あら、いらっしゃい」
俺達の声に気が付いて、店の奥から小島さんが顔を出した。
「昨日はありがとうございました」
俺が頭を下げると、おばあさんはぱたぱたと手を振りながら微笑んだ。
「こちらこそ、素敵な花火大会になったわ」
すると、子ども達はようやく決心がついたらしく、俺に欲しい商品をそれぞれ手渡してきた。
うみは捻ったようなピンク色のゼリー棒と、すももを選んだ。そらは四粒入りの小さな箱に入ったソーダガムと、柱に掛けられた束から一枚の板紙を引き抜いた。
「そら、これはお菓子じゃないだろー?」
それは、シートを剥がすと表面に糊のようなものがついている紙で、それを指に塗ってつけたり離したりすると煙のようなものが出てくるおもちゃだった。
子ども騙しなようでいて、実は俺も小さい頃は結構好きで良く遊んでいたので、あまり強く止められない。
「マオびっくりするかなー?」
どうやらこれもマオに見せたいらしい。
「どうだろうな?」
本物の悪魔がこんなおもちゃの仕掛けに騙されはしないだろうが、マオがどんな顔をするかちょっと楽しみだ。
俺達は会計を済ませておばあさんに挨拶すると、やっと家に帰った。暑い中ずっと歩いて来たので汗だくだ。
「ただいまー!」
二階に様子を見に行くと、マオの執務室の前はなんだか空気が淀んでいる。目には見えないが、邪悪な何かが部屋から漏れ出ているようだった。
「私はクラース様のお手伝いをして参ります」
サマエルはそう言って、にこやかに部屋に入っていったが、俺は部屋には入らず彼等の邪魔をしないように双子と遊んで過ごす事にした。
(押入れの奥から探し出さなきゃならないものもあるしな……)
マオは昼食に降りて来た際も、朝より酷い顔でぐったりとした様子だった。
「な、何だか大変そうだな……」
「しばらく留守にしてしまったからな……」
マオは大きな溜息を吐くと、虚な目で俺の茹でた素麺をすすった。
魔王様とサマエルは午後も執務室に閉じこもっていた。
(そろそろ差し入れを持って行ってやるか)
おやつの時間になると、スーパーでうみが選んだ苺のシロップと、帰ってすぐに凍らせた氷をタッパーから取り出した。
探し物はちゃんと押入れの奥から見つかっていた。俺が子どもの頃からあるかき氷機だ。
「ゆきに! もうかちごりつくるの?」
「うみもてつだうー!」
俺達は昨日食べそびれてしまったかき氷を、自分達で手作りする事にしたのだった。
「よーし、もりもり作ってマオに持って行ってやろうぜ」
氷をセットして、交代でゴリゴリとハンドルを回す。水色のかき氷トラックの形をした削り機の中で、まぬけな顔をした人形の首がゆらゆら揺れている。
「思ったより骨が折れるな……」
力を込めて回し続け、やっとガラスの器に山盛り一杯の氷が削れた。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
ハバナイスデイズ!!~きっと完璧には勝てない~
415
キャラ文芸
「ゆりかごから墓場まで。この世にあるものなんでもござれの『岩戸屋』店主、平坂ナギヨシです。冷やかしですか?それとも……ご依頼でしょうか?」
普遍と異変が交差する混沌都市『露希』 。
何でも屋『岩戸屋』を構える三十路の男、平坂ナギヨシは、武市ケンスケ、ニィナと今日も奔走する。
死にたがりの男が織り成すドタバタバトルコメディ。素敵な日々が今始まる……かもしれない。
学園戦記三国志~リュービ、二人の美少女と義兄妹の契りを結び、学園において英雄にならんとす 正史風味~
トベ・イツキ
キャラ文芸
三国志×学園群像劇!
平凡な少年・リュービは高校に入学する。
彼が入学したのは、一万人もの生徒が通うマンモス校・後漢学園。そして、その生徒会長は絶大な権力を持つという。
しかし、平凡な高校生・リュービには生徒会なんて無縁な話。そう思っていたはずが、ひょんなことから黒髪ロングの清楚系な美女とお団子ヘアーのお転婆な美少女の二人に助けられ、さらには二人が自分の妹になったことから運命は大きく動き出す。
妹になった二人の美少女の後押しを受け、リュービは謀略渦巻く生徒会の選挙戦に巻き込まれていくのであった。
学園を舞台に繰り広げられる新三国志物語ここに開幕!
このお話は、三国志を知らない人も楽しめる。三国志を知ってる人はより楽しめる。そんな作品を目指して書いてます。
今後の予定
第一章 黄巾の乱編
第二章 反トータク連合編
第三章 群雄割拠編
第四章 カント決戦編
第五章 赤壁大戦編
第六章 西校舎攻略編←今ココ
第七章 リュービ会長編
第八章 最終章
作者のtwitterアカウント↓
https://twitter.com/tobeitsuki?t=CzwbDeLBG4X83qNO3Zbijg&s=09
※このお話は2019年7月8日にサービスを終了したラノゲツクールに同タイトルで掲載していたものを小説版に書き直したものです。
※この作品は小説家になろう・カクヨムにも公開しています。
僕のペナントライフ
遊馬友仁
キャラ文芸
〜僕はいかにして心配することを止めてタイガースを愛するようになったか?〜
「なんでやねん!? タイガース……」
頭を抱え続けて15年余り。熱病にとりつかれたファンの人生はかくも辛い。
すべてのスケジュールは試合日程と結果次第。
頭のなかでは、常に自分の精神状態とチームの状態が、こんがらがっている。
ライフプランなんて、とてもじゃないが、立てられたもんじゃない。
このチームを応援し続けるのは、至高の「推し活」か?
それとも、究極の「愚行」なのか?
2023年のペナント・レースを通じて、僕には、その答えが見えてきた――――――。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
推理小説家の今日の献立
東 万里央(あずま まりお)
キャラ文芸
永夢(えむ 24)は子どもっぽいことがコンプレックスの、出版社青雲館の小説編集者二年目。ある日大学時代から三年付き合った恋人・悠人に自然消滅を狙った形で振られてしまう。
その後悠人に新たな恋人ができたと知り、傷付いてバーで慣れない酒を飲んでいたのだが、途中質の悪い男にナンパされ絡まれた。危ういところを助けてくれたのは、なんと偶然同じバーで飲んでいた、担当の小説家・湊(みなと 34)。湊は嘔吐し、足取りの覚束ない永夢を連れ帰り、世話してくれた上にベッドに寝かせてくれた。
翌朝、永夢はいい香りで目が覚める。昨夜のことを思い出し、とんでもないことをしたと青ざめるのだが、香りに誘われそろそろとキッチンに向かう。そこでは湊が手作りの豚汁を温め、炊きたてのご飯をよそっていて?
「ちょうどよかった。朝食です。一度誰かに味見してもらいたかったんです」
ある理由から「普通に美味しいご飯」を作って食べたいイケメン小説家と、私生活ポンコツ女性編集者のほのぼのおうちご飯日記&時々恋愛。
.。*゚+.*.。 献立表 ゚+..。*゚+
第一話『豚汁』
第二話『小鮎の天ぷらと二種のかき揚げ』
第三話『みんな大好きなお弁当』
第四話『餡かけチャーハンと焼き餃子』
第五話『コンソメ仕立てのロールキャベツ』
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
下宿屋 東風荘 4
浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。
天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!?
ほのぼの美味しいファンタジー。
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
表紙・挿絵:深月くるみ様
イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。
☆マークの話は挿絵入りです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる