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第3章 魔王の参謀と花火大会
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「お待たせ……ってあのさ、前からちょっと気になってたんだけど、お前、なんでスーツ着てるの?」
マオと初めて会った時のような怪しさ全開の黒マントよりはるかにマシだが、サマエルは何故かずっと黒スーツ姿だった。
「人間界ではこちらが比較的フォーマルな衣装だと伺っております。クラース様をお探しする間、しばらく人間界に潜伏しておりましたので……違和感ございますでしようか?」
「いや、まあ大丈夫だけど……」
サマエルは西洋人風の容姿をしているが、スーツを着ていればこの辺りの会社に勤めている人間だと思って貰えるだろう。
(まあ、妙に人相の悪い男と幼稚園児と並んで歩いているのは違和感といえば違和感かもしれないが……)
奇妙な組み合わせではあるが、俺達は並んでスーパーへと向かった。日曜の午前中だというのに店先は既に混雑している。
この街はスーパーが少ないので、家からは少し離れた場所にあるが、休みにまとめ買いするのには、いつもこのスーパーを利用していた。
中に入ると、やはり店内も混み合っている。サマエルはキョロキョロと辺りを見回しながら呟いた。
「なるほど、食材はこちらで調達なさるんですね」
「ああ、昨日お前が来たコンビニでも買えるが、割となんでも安く揃うのはこの店だな」
「わーい!」
「ゆきに、おかしかって!」
双子はすっかりテンションが上がっている。
「あんまり騒ぐなよ。お菓子は帰りにばーちゃんのとこで買ってやるから」
俺は二人が勝手にうろちょろしないように手を繋いで、サマエルに売り場を案内して回った。
野菜、肉、魚、加工品や調味料、冷凍食品まで、お菓子の棚は意図的に避けながら、ぐるりと店内を一周する。
「……なるほど、ありがとうございます。大体の品揃えは把握出来ました」
「一通り必要な物も集まったし、そろそろレジに行くか?」
俺はサマエルが持ってくれているカゴを見ながら呟いた。すると、そらが俺の手をするりと抜けて店の奥へ走って行く。
「おい、そら!」
慌ててそらを追いかけると、彼はある物を掴んでこちらを振り返り、にんまりとした。
「お前それ……」
「マオのね、おみあげ!」
それを聞いてうみも顔を輝かせる。そして隣の棚に並んでいる物を指差して俺にせがんだ。
「ゆきに! あれも!」
「え? でも、それ買ってもうちで作れるかな~?」
俺が悩んでいると、サマエルが後ろからゆっくり歩いて来た。
「いかがなされましたか?」
俺は双子の選んだマオへのお土産について、サマエルに簡単に説明した。
「それは素晴らしい! お疲れのクラース様もお喜びになるでしょう! 大丈夫です。ご心配の点は、私が何とか致します」
サマエルはそう言うと、にこにことお土産をカゴに入れた。
俺達はその後レジに並び、会計を済ませて家に戻った。
「買い出しの方法は理解できました。今後はご予算を指定していただければ、私の方で購入して参ります」
「ああ……でもまあ、みんなで行ける時は行こうぜ。こいつらも結構楽しみにしてるから」
双子は買い物を満喫出来て嬉しそうだ。マオにお土産も出来たので、反応を楽しみにしているらしい。
俺達は家の近くまで来ると、お隣の駄菓子屋を覗いた。ガラス戸の向こう側のカーテンは開いていたので、店は開いているようだ。
「こんにちはー」
カラリと入り口を開けると、双子は我先にと店内に駆け込んで行く。
マオと初めて会った時のような怪しさ全開の黒マントよりはるかにマシだが、サマエルは何故かずっと黒スーツ姿だった。
「人間界ではこちらが比較的フォーマルな衣装だと伺っております。クラース様をお探しする間、しばらく人間界に潜伏しておりましたので……違和感ございますでしようか?」
「いや、まあ大丈夫だけど……」
サマエルは西洋人風の容姿をしているが、スーツを着ていればこの辺りの会社に勤めている人間だと思って貰えるだろう。
(まあ、妙に人相の悪い男と幼稚園児と並んで歩いているのは違和感といえば違和感かもしれないが……)
奇妙な組み合わせではあるが、俺達は並んでスーパーへと向かった。日曜の午前中だというのに店先は既に混雑している。
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中に入ると、やはり店内も混み合っている。サマエルはキョロキョロと辺りを見回しながら呟いた。
「なるほど、食材はこちらで調達なさるんですね」
「ああ、昨日お前が来たコンビニでも買えるが、割となんでも安く揃うのはこの店だな」
「わーい!」
「ゆきに、おかしかって!」
双子はすっかりテンションが上がっている。
「あんまり騒ぐなよ。お菓子は帰りにばーちゃんのとこで買ってやるから」
俺は二人が勝手にうろちょろしないように手を繋いで、サマエルに売り場を案内して回った。
野菜、肉、魚、加工品や調味料、冷凍食品まで、お菓子の棚は意図的に避けながら、ぐるりと店内を一周する。
「……なるほど、ありがとうございます。大体の品揃えは把握出来ました」
「一通り必要な物も集まったし、そろそろレジに行くか?」
俺はサマエルが持ってくれているカゴを見ながら呟いた。すると、そらが俺の手をするりと抜けて店の奥へ走って行く。
「おい、そら!」
慌ててそらを追いかけると、彼はある物を掴んでこちらを振り返り、にんまりとした。
「お前それ……」
「マオのね、おみあげ!」
それを聞いてうみも顔を輝かせる。そして隣の棚に並んでいる物を指差して俺にせがんだ。
「ゆきに! あれも!」
「え? でも、それ買ってもうちで作れるかな~?」
俺が悩んでいると、サマエルが後ろからゆっくり歩いて来た。
「いかがなされましたか?」
俺は双子の選んだマオへのお土産について、サマエルに簡単に説明した。
「それは素晴らしい! お疲れのクラース様もお喜びになるでしょう! 大丈夫です。ご心配の点は、私が何とか致します」
サマエルはそう言うと、にこにことお土産をカゴに入れた。
俺達はその後レジに並び、会計を済ませて家に戻った。
「買い出しの方法は理解できました。今後はご予算を指定していただければ、私の方で購入して参ります」
「ああ……でもまあ、みんなで行ける時は行こうぜ。こいつらも結構楽しみにしてるから」
双子は買い物を満喫出来て嬉しそうだ。マオにお土産も出来たので、反応を楽しみにしているらしい。
俺達は家の近くまで来ると、お隣の駄菓子屋を覗いた。ガラス戸の向こう側のカーテンは開いていたので、店は開いているようだ。
「こんにちはー」
カラリと入り口を開けると、双子は我先にと店内に駆け込んで行く。
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