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第6章 言葉たちを沈めて
9.永い孤独
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『そうはさせない! 神様を犠牲になんて、俺がさせない!』
俺は思わず叫んでいた。神界の中でも最高位に近い神に向かって、牙を剥き出し叫んでいた。
『じゃあ誰ならいいの? 君の思い入れが無い神様なら誰でもいいの?』
彼の表情も声音にも感情は無い。俺は少し言葉に詰まる。
『何か……他の手段を考えればいいだろ!』
月神は溜息を吐く。他に手があればとっくにやっているとでも言うように。
『……朧にとっては、お前達の未来が奪われる事の方が、自分が犠牲になるより余程苦痛なんだろう。人の命など神に比べれば、ほんの一瞬なのにね……』
月詠は水盤の縁を撫でながら呟く。
『……僕が意識を持ってから、もう数え切れない程の人間達が生まれては死んでいった……。それこそ毎年咲いては散っていく桜の花弁のように……』
俺は月神の話には構わず、一歩進み出た。
『術をかけている間、蛮神の動きを止めていられればいいんだろ?』
『ああ。贄となる者は、自らの力を蛮神に食わせる事で奴の動きを止める。長く留めていられるように、決戦の前に神力を限界まで溜め込んでおくんだ。朧には既に僕の力をたっぷりと分けてやったよ』
『神様がアンタの所に通っていたのは、少しずつ力を授かる為だったって訳だ……じゃあ、何でアンタ自ら蛮神を止めないんだ?』
『神界は僕という存在を失う訳にはいかない。僕が居なくなれば人間界にも影響が出るだろう。蛮神と共に眠る訳にはいかないんだ』
『……いいご身分だな。もういい、山桜の場所を教えてくれ』
『構わないけど、無駄だと思うよ?』
俺は月詠から山桜のある場所を聞くと、直ぐに鎌を振って光の輪を生じさせた。もう月神は振り返らずに、俺は光の中に飛び込んだ。
『自分を犠牲にしてまで何かを守りたい、そんな風に思えるものが或る君達の事、僕は少し羨ましいと思うよ……』
真っ白に塗り潰されていく世界の中で、少し寂しそうに呟く彼の声が聞こえた気がした。
俺は思わず叫んでいた。神界の中でも最高位に近い神に向かって、牙を剥き出し叫んでいた。
『じゃあ誰ならいいの? 君の思い入れが無い神様なら誰でもいいの?』
彼の表情も声音にも感情は無い。俺は少し言葉に詰まる。
『何か……他の手段を考えればいいだろ!』
月神は溜息を吐く。他に手があればとっくにやっているとでも言うように。
『……朧にとっては、お前達の未来が奪われる事の方が、自分が犠牲になるより余程苦痛なんだろう。人の命など神に比べれば、ほんの一瞬なのにね……』
月詠は水盤の縁を撫でながら呟く。
『……僕が意識を持ってから、もう数え切れない程の人間達が生まれては死んでいった……。それこそ毎年咲いては散っていく桜の花弁のように……』
俺は月神の話には構わず、一歩進み出た。
『術をかけている間、蛮神の動きを止めていられればいいんだろ?』
『ああ。贄となる者は、自らの力を蛮神に食わせる事で奴の動きを止める。長く留めていられるように、決戦の前に神力を限界まで溜め込んでおくんだ。朧には既に僕の力をたっぷりと分けてやったよ』
『神様がアンタの所に通っていたのは、少しずつ力を授かる為だったって訳だ……じゃあ、何でアンタ自ら蛮神を止めないんだ?』
『神界は僕という存在を失う訳にはいかない。僕が居なくなれば人間界にも影響が出るだろう。蛮神と共に眠る訳にはいかないんだ』
『……いいご身分だな。もういい、山桜の場所を教えてくれ』
『構わないけど、無駄だと思うよ?』
俺は月詠から山桜のある場所を聞くと、直ぐに鎌を振って光の輪を生じさせた。もう月神は振り返らずに、俺は光の中に飛び込んだ。
『自分を犠牲にしてまで何かを守りたい、そんな風に思えるものが或る君達の事、僕は少し羨ましいと思うよ……』
真っ白に塗り潰されていく世界の中で、少し寂しそうに呟く彼の声が聞こえた気がした。
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