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第5章 神々の宴

11.薄紫色の手紙

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 確か少し前に、神としての力が衰えて呼ばれなくなったと言っていた気がするが。

『ああ、どうも最近は人間や妖怪と関わる機会が増えたもんじゃから、一応神として神界にも再び認知されてしまったようでの。研修の督促がきよった』

『研修?』

 神様は懐から、薄紫色の手紙を取り出して見せる。

『合同会議への出席と、直近の神界や人間界について勉強する研修に参加せねばならなくなったんじゃ……』

『そりゃ、めでたいのか残念なのか……』

 神様は手紙を仕舞うと、面倒臭そうに頭を掻いた。

『まあ、お前さん方の料理を楽しみにしとるよ。そうそう、夏也も来る予定じゃしな』

 それを聞いて俺は思わず身を乗り出す。

『夏也が!? 神々の会議に? 何で!?』

『まあまあ、そう慌てなさるな』

 俺の勢いに、神様はのけぞりながら手を上げた。

『奴も叶えたい願いがあるんじゃと。合同会議の主な議題は縁結びだったりするからの……。まあ、上手くやるから大丈夫じゃよ』

 何が大丈夫なものか。俺がわざわざ神々の宴に潜入するのは、月神に直接会って、黒い怪物について話を聞く為だ。
 生きた人間を会議の場に連れ込んで、騒ぎになったら元も子もないし、夏也だってどんな目に遭うか分からない。
 俺がさらに詰め寄ろうとすると、シュンが二階に上がって来た。

『あれ? 何揉めてるの?』

『夏也は?』

『風呂に入ってるよ。ねえ、どうかしたの?』

 シュンはこちらに駆け寄って、畳の上に座った。俺はシュンに今の話を説明する。すると意外に、彼は落ち着いた様子で神様に尋ねた。

『それってバレたら夏也はどうなるの? 摘み出されるだけじゃ済まない感じ?』

『ふむ、とりあえず記憶は消されるかのう……後はどちらかというと、引き込んだわしが処分されるかの』

 神様は顎を撫でながら答えた。すると、シュンはにっこりと微笑む。

『じゃあいいんじゃない?』

『……そうだな』

 俺も頷いた。

『わし、ちょっと泣きそうになってきたんじゃけど……』

『それに、もし万が一騒ぎになったら、寧ろ他の神の注意が逸れている間に、月神に近づけるんじゃない?』

『甥っ子を囮にしなくて済むような計画は立てておくよ……』

 俺は苦笑した。隣で拗ねている神様は、頬を膨らませながら言った。

『全くお前達は、いつも夏也には甘いのう……』

『お互い様だろう?』

 俺は神様に向けて、いつもの仕返しとばかりにニヤリと笑って見せた。
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