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第3章 幽体離脱警官と妖怪の子
17.尋問
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『えっと……』
俺は何と説明すれば良いか考える内に、蓮雫の鬼の形相を思い出して背筋を凍らせた。
(駄目だ言えないっ……! でも、どっちも怖いっ!!)
『見えていたんだろう? 害者の側に立って居た者の姿が』
俺は昼間の光景を思い出す。確かに警部が死神の方を見ていた気はした。やはり一ノ瀬警部も見える側だったようだ。
俺の魂が光の輪に消えて行く様子も目撃していたのだろうか。
『どうなんだ!』
警部はそのままドンと壁を叩く。ヤダこれ壁ドンじゃないですか。しかし、何で男相手にこんなシチュエーションで体験せねばならないのか。署内の女子と代わってやりたい。
(黒い霧じゃないけどピンチだし、いっそ鈴鳴らしちゃいたいなぁ……)
そんな事を考えながらも黙っていると、警部はやっと身を引いてこちらに背を向けた。
『……まあいい。近年、県内で突然死が増加しているのは知っているな?』
『え? あ、はい……』
俺はほっとしながら壁から離れた。講習でもその話は聞いていた。うちの町は平和を絵に描いたようなのどかさであったが、時折昨日のような不審死事件が起き、駅前派出所の管轄外から応援に呼ばれる事も増えてきていた。
『一連の不審死については俺が関連を調べている。今のところいずれも事件性や関連性は見られなかった。我々の 世界の物差しではな』
俺は息を飲む。
犯人は黒い霧なんだ。事情を知らない普通の人間に、個々の死を結び付ける事は出来ないだろう。だが、彼は疑っているのだ。何か人外の存在が関わっているのだと。
(なぜだ? 一ノ瀬さんには死神が見えるからか?)
彼は一体、どこまで知っているのだろう。仮に黒い霧の存在を信じて貰えたとして、人間の警察に何か出来る事はあるのだろうか。
その言葉はそっくり自分にも返ってくるものだ。
ただ、それでも俺はこの町を守りたい。手の中の鈴をギュッと握りしめる。
(俺は、伝えるべきなのか……?)
すると、警部は何かを取り出して振り返り、こちらに押し付けるように突き出した。
『名刺……?』
『何か気付いた事があれば連絡しろ。何時でも構わん』
それだけ言うと、一ノ瀬警部はさっさと部屋を出て行った。
どうやら少し考える時間は貰えたらしい。
(次に会った時に、友和や蓮雫にも相談してみるか……)
あまりに色々な事が続いて、俺は暫くの間、呆然と医務室に立ち尽くしてしまった。
俺は何と説明すれば良いか考える内に、蓮雫の鬼の形相を思い出して背筋を凍らせた。
(駄目だ言えないっ……! でも、どっちも怖いっ!!)
『見えていたんだろう? 害者の側に立って居た者の姿が』
俺は昼間の光景を思い出す。確かに警部が死神の方を見ていた気はした。やはり一ノ瀬警部も見える側だったようだ。
俺の魂が光の輪に消えて行く様子も目撃していたのだろうか。
『どうなんだ!』
警部はそのままドンと壁を叩く。ヤダこれ壁ドンじゃないですか。しかし、何で男相手にこんなシチュエーションで体験せねばならないのか。署内の女子と代わってやりたい。
(黒い霧じゃないけどピンチだし、いっそ鈴鳴らしちゃいたいなぁ……)
そんな事を考えながらも黙っていると、警部はやっと身を引いてこちらに背を向けた。
『……まあいい。近年、県内で突然死が増加しているのは知っているな?』
『え? あ、はい……』
俺はほっとしながら壁から離れた。講習でもその話は聞いていた。うちの町は平和を絵に描いたようなのどかさであったが、時折昨日のような不審死事件が起き、駅前派出所の管轄外から応援に呼ばれる事も増えてきていた。
『一連の不審死については俺が関連を調べている。今のところいずれも事件性や関連性は見られなかった。我々の 世界の物差しではな』
俺は息を飲む。
犯人は黒い霧なんだ。事情を知らない普通の人間に、個々の死を結び付ける事は出来ないだろう。だが、彼は疑っているのだ。何か人外の存在が関わっているのだと。
(なぜだ? 一ノ瀬さんには死神が見えるからか?)
彼は一体、どこまで知っているのだろう。仮に黒い霧の存在を信じて貰えたとして、人間の警察に何か出来る事はあるのだろうか。
その言葉はそっくり自分にも返ってくるものだ。
ただ、それでも俺はこの町を守りたい。手の中の鈴をギュッと握りしめる。
(俺は、伝えるべきなのか……?)
すると、警部は何かを取り出して振り返り、こちらに押し付けるように突き出した。
『名刺……?』
『何か気付いた事があれば連絡しろ。何時でも構わん』
それだけ言うと、一ノ瀬警部はさっさと部屋を出て行った。
どうやら少し考える時間は貰えたらしい。
(次に会った時に、友和や蓮雫にも相談してみるか……)
あまりに色々な事が続いて、俺は暫くの間、呆然と医務室に立ち尽くしてしまった。
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