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第3章 幽体離脱警官と妖怪の子
5.奪われた魂
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手を握ったり開いたりしてみる。特に違和感は無い。ちゃんと自分の肉体に戻れたようだ。
『その状態でも俺が見えるか?』
友和が尋ねた。俺は側に立つ彼を見上げて、しげしげと眺める。
『ああ。見えるな。そういや、さっきはそっちの子は少し透けていたみたいだったけど……』
俺はトゲトゲ頭を振り返る。今度ははっきりと見える。
『あれ、ちゃんと見えるな?』
『元々少し霊感があったのかもな。霊体になりかけて、こっち側に近づいちまったんだろう』
なんだそれ怖い。
『なあ、兄ちゃんも戻ったみたいだし話を戻すけど、さっきのに殺されたってやつ友和の他にも結構いるの?』
トゲトゲが大きな猫目を見開いて尋ねる。
『……っていうかその前に、お前も妖怪ってなんなんだ? めっちゃ普通の子どもみたいな格好してるじゃん? 後、名前は?』
『えー、別にいいじゃんそんな事!』
『俺は気になるの! 本当に人間じゃないんだな? 中学生なら家まで送ってやらんと……』
俺がそう言うと、さっきまでの生意気さが急になくなり、彼は目を伏せて静かになった。
『本当だよ。俺は妖怪。妖怪の子どもさ。俺に……家なんてないよ……』
(……なんか、マズイ事聞いたかな?)
俺はその様子にちょっと動揺したが、友和は淡々と続けた。
『名前はあるのか?』
(こいつ、結構ドSな性格してんのな……)
『……シュン』
トゲトゲ頭は下を向いたまま答えた。
『俺は……シュンって呼ばれてた……。さあ、もういいだろ? 次は俺の質問に答える番だぜ!』
(呼ばれてた……?)
気になる事はまだまだあったが、そう言うとシュンは顔を上げて友和を見つめた。
友和は思い出すように顎に手を当てると、ゆっくりと自分が死んでから経験した事を話し始めた。
霊界で出会った閻魔大王と鬼の管理官、旧友、やり残した人生分の修行として食堂のメニュー開発をする事、それと並行して謎の死の原因を解明する手伝いをしている事。
信じられない話ばかりだが、実際に俺自身も数分前に黒い霧に遭遇したばかりだ。一旦、この自称とっちゃん坊やの話を信じてみよう。
『……そして、最近分かってきた事だが、予定外に死んだ亡者だけでなく、死んでからも魂が霊界に来ていない者が存在すると分かってきた』
『……それって……』
シュンは緊張しているのか、少し声が震えている。
『……ああ、恐らくアイツは何らかの理由で魂を抜き取り、持ち去っている。俺や西原の様に霊界に辿り着けたのは、一部の者達なのだろう』
『お、俺は死ななかったぜ?』
それを聞いて俺も不安になり、思わず割って入ってしまった。友和は相変わらず顔色を変えず、冷静に答える。
『そうだな。俺も直接見たのはさっきが初めてで、これも仮説だが、俺達のように魂を持っていかれずに済んでも、さっきの紐の様なものが切れてしまったら、もう肉体には戻れないのかもしれない……』
(めちゃくちゃ危なかったじゃん、さっきの俺……)
『俺も襲われたって事は、魂を奪う相手って人間だけじゃないって事だよね……』
シュンも続けた。確かに。妖怪も襲うって、あの霧自体妖怪みたいなもんじゃないのだろうか。
そして、もう一つ確認しておかねばならない事がある。
『じゃーさ、今後もこの町に住む人間や妖怪は、アレに襲われたら死ぬかもしれねーって事だろ?』
『その状態でも俺が見えるか?』
友和が尋ねた。俺は側に立つ彼を見上げて、しげしげと眺める。
『ああ。見えるな。そういや、さっきはそっちの子は少し透けていたみたいだったけど……』
俺はトゲトゲ頭を振り返る。今度ははっきりと見える。
『あれ、ちゃんと見えるな?』
『元々少し霊感があったのかもな。霊体になりかけて、こっち側に近づいちまったんだろう』
なんだそれ怖い。
『なあ、兄ちゃんも戻ったみたいだし話を戻すけど、さっきのに殺されたってやつ友和の他にも結構いるの?』
トゲトゲが大きな猫目を見開いて尋ねる。
『……っていうかその前に、お前も妖怪ってなんなんだ? めっちゃ普通の子どもみたいな格好してるじゃん? 後、名前は?』
『えー、別にいいじゃんそんな事!』
『俺は気になるの! 本当に人間じゃないんだな? 中学生なら家まで送ってやらんと……』
俺がそう言うと、さっきまでの生意気さが急になくなり、彼は目を伏せて静かになった。
『本当だよ。俺は妖怪。妖怪の子どもさ。俺に……家なんてないよ……』
(……なんか、マズイ事聞いたかな?)
俺はその様子にちょっと動揺したが、友和は淡々と続けた。
『名前はあるのか?』
(こいつ、結構ドSな性格してんのな……)
『……シュン』
トゲトゲ頭は下を向いたまま答えた。
『俺は……シュンって呼ばれてた……。さあ、もういいだろ? 次は俺の質問に答える番だぜ!』
(呼ばれてた……?)
気になる事はまだまだあったが、そう言うとシュンは顔を上げて友和を見つめた。
友和は思い出すように顎に手を当てると、ゆっくりと自分が死んでから経験した事を話し始めた。
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信じられない話ばかりだが、実際に俺自身も数分前に黒い霧に遭遇したばかりだ。一旦、この自称とっちゃん坊やの話を信じてみよう。
『……そして、最近分かってきた事だが、予定外に死んだ亡者だけでなく、死んでからも魂が霊界に来ていない者が存在すると分かってきた』
『……それって……』
シュンは緊張しているのか、少し声が震えている。
『……ああ、恐らくアイツは何らかの理由で魂を抜き取り、持ち去っている。俺や西原の様に霊界に辿り着けたのは、一部の者達なのだろう』
『お、俺は死ななかったぜ?』
それを聞いて俺も不安になり、思わず割って入ってしまった。友和は相変わらず顔色を変えず、冷静に答える。
『そうだな。俺も直接見たのはさっきが初めてで、これも仮説だが、俺達のように魂を持っていかれずに済んでも、さっきの紐の様なものが切れてしまったら、もう肉体には戻れないのかもしれない……』
(めちゃくちゃ危なかったじゃん、さっきの俺……)
『俺も襲われたって事は、魂を奪う相手って人間だけじゃないって事だよね……』
シュンも続けた。確かに。妖怪も襲うって、あの霧自体妖怪みたいなもんじゃないのだろうか。
そして、もう一つ確認しておかねばならない事がある。
『じゃーさ、今後もこの町に住む人間や妖怪は、アレに襲われたら死ぬかもしれねーって事だろ?』
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