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第3章 幽体離脱警官と妖怪の子
1.巡査 日野天太
しおりを挟む(あ~あ、暇だな~)
派出所のデスクに足を乗せて、椅子にもたれかかりながら、俺は大きな欠伸をした。
(大体こんなクソ田舎で事件なんて早々起きるもんじゃないし、夜勤とか要らなくね~か?)
駅前の交番とはいえ、山間の田舎町で終電も早い。飲み屋ですら0時には店を閉めてしまう。
交通事故が起こる程の車の量もないし、空き巣やひったくりもない。玄関の鍵を掛けていない家も多いぐらいだ。
そもそも住民も顔を覚えられる位の数しかおらず、旅行者も来ない。道を聞かれる事すらほとんどない。
(先輩は先に仮眠に入ったし、ほんっとにする事ねーな……)
どうせ誰も来ないので、そんな姿勢でダラダラ携帯を見て居たら、警察手帳を床に落とした。
巡査 日野天太
広がった手帳の写真では、憧れの警察になれて、得意満面といった笑顔の俺が映っていた。
(憧れていたのは、こんな毎日じゃなかったんだけどなー)
俺は、よっこらせと足を下ろして、手帳を拾おうと屈んだ。
その時、交番の外を何か人影のようなものが横切った気がした。時間は午前零時を回ったところだ。
こんな時間はほとんど人が通らないが、まあ、たまには通るだろう。俺が気になったのは、その影が子どものように見えたからだ。
入り口から顔を覗かせると、大きめのショルダーバックを持った、中学生くらいの少年の後ろ姿が見えた。
(こんな時間になんでガキがほっつき歩いてんだ?)
仮眠は四時間で交代するが、先輩はさっき寝たばかりだ。俺は念のためメモを残して、交番前に不在案内板を掲示し、少年の後を追った。
(少年の安全を守るのも、お巡りさんの役目だからな!)
やっと仕事が出来た俺は、単純に張り切っていた。この後に捲き込まれる不思議な出来事なんて、何も想像していなかったのだ。
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