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第2章 となりの女神と狐様

12.厨房探索

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『まっぶしーな、こっちの世界は』

『あまり日光に当たると、送り返されちまうぞ。庭影に入ろう』

 俺達は例の光の輪を使って、西原家の前に転送された。辺りは明るく、太陽の位置からすると正午頃のようだった。

『鍵はあるのか?』

『いや、だが勝手口に鍵が隠してある。そっから入れるぜ』

 玄関横の窓は開いており、揺れるカーテンの奥で、奥さんが洗い物をしている音が聞こえた。

 家の裏手に回ると、西原は植木鉢の下から鍵を取り出してドアを開けようとした。
 しかし、鍵を摘み上げようとしても透けてしまい、何度も地面に落としてしまった。仮にここで鍵の幽霊を抜き出したとしても、それでは本物のドアは開けられない気がする。

『なあ、そもそも物が透けるならドアも透けて通れるんじゃねえのか?』

『え……?』

 確かにそれは気がつかなかった。俺は、試しにドアに手を当ててみる。手には硬い感触があった。だが、「そこに壁がある」というイメージを捨ててもう一度手を伸ばすと、俺の腕は扉を擦り抜けたのである。

『なんだよ、やれるじゃねーか!』

 西原は意気揚々とドアを通り抜けた。

(なるほどな……)

 どうも「そこに壁がある」というイメージが先に立つと、物を掴む時の集中と同じ効果が出て、実態に触れてしまうらしい。

(つまり、通り抜けられるイメージでいれば……)

 俺もそのままするりとドアを透過した。

(幽霊としての自覚が足りなかったようだ……)

 俺は心の中で少し反省した。

 ドアを通り抜けた先は、広い調理場になっていた。流しも大きくコンロも沢山あった。ちょっとした小料理屋の厨房くらいはありそうだ。

『俺の研究室ってとこだな。普段の飯は家の方の台所で作ってるから、こっちにはウチのやつは滅多に来ねえよ』

 そう言って西原は早速棚を漁りだした。中の物を調べるには、やはり扉を開けなくてはならない。壁を擦り抜けても、明かりが入らないから見えないのだ。

『俺が死んで半年近く経つからな~。賞味期限が切れてるものは、アイツが随分捨てたみてえだが、まだまだ使えそうなものは沢山あるぜ』




 俺達は霊界で借りた荷物袋に、次々と食材や道具の幽霊を放り込んだ。背負ってみると、ちゃんと重さを感じるから不思議だ。

 黙々と作業して、ひと段落ついた頃、俺は西原に声を掛けた。
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