護堂先生と神様のごはん 護堂教授の霊界食堂

栗槙ひので

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第1章 食いしん坊の幽霊

5.霊界の門

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 気がつくと、俺は大きな門の前に立って居た。辺りは薄暗く曇っており、今が昼なのか夜なのか判然としない。

 門は見上げる程大きく、不思議な装飾で飾られていた。美しいというよりも、どこか威圧的な雰囲気だった。

 辺りを見回すと、先程の死神と神様も近くに立っている。

『ここは……?』

『冥府の入り口デス。これからアナタには魂の裁判に向かって貰いマス』

『魂の裁判? 天国か地獄か行先を決めるってやつか? 本当にそんな事やってるんだな』

『アタリマエデス。ソレニ、行き先は二種類ではありまセン。とにかく私は次があるノデ、アナタ方は受付で裁判の登録をして、待合所で待機していてクダサイ』

(そんな、病院や銀行じゃあるまいし……)

 俺は人間界じみた対応に面食らいながらも質問した。

『どのくらい待つんだ?』

『一回目の裁判は、待っている人間の数にもヨルけどすぐに始まりマス。少なくとも全部で7回は行わレルから、最終審判マデ通常大体一月半くらいかかりマス。人によっては数年かかる者もいマス』

『そんなにかかるのか!?』

『アンタはこの国に一体何人の人間が居ると思ってるんデスか? 死者は毎日増えマスし、一人一人の一生分の行いを調べなきゃならんのデス。その他、こちらも色々手続きとかがあるんデスよ!』

 俺は死神に思い切り叱られてしまった。

『待っとる間、暇そうじゃの。飯が食える所はないんかの?』

 それまでキョロキョロとしていた神様が、またマイペースな発言を飛ばす。

(死者の世界にまで来て飯の話をするなんて……)

『食堂もありマスから、後は受付で聞いてクダサイ!』

 あるんかい。

 死神はそういうと、ぷりぷりしながらまた鎌で空間を割いて、光の中に消えていった。

『とりあえず、その受付とやらに行ってみるしかなさそうだな……』

『霊界の飯はどんなかのう』

 神様はとても嬉しそうだ。確かに俺も少し興味があるが、俺が死んだという事実に対して、もう少し何かないのだろうか。

(まあ、俺自身がこんな感じだしな……)

 自分が死んでしまったという事実は受け止めたつもりだが、自分には守らなければならない家庭も無い。別段悲しみや後悔のような感情は湧いていなかった。
 強いて言えば、ようやく全体を掘り起こせた遺跡の謎を明らかにしたかった事と、読みかけの推理小説を全部読んでしまいたかった事くらいだ。

 そんな事を考えながら、俺は門の奥へと歩を進める。するとすぐ正面に、大きく立派な建物が見えてきた。

 門と同様に、煌びやかさより厳しさや重々しさを感じる建物だった。入り口は正面の一つしか見当たらず、左右はずっと壁が続いている。迂回する事は出来ないようだ。
 
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