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第6章 あやかし子狐と三日月オムライス

18.三日月

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 見上げると、神様がニヤニヤしながら私のすぐ隣に立っていた。

『おきおき!』

 こむぎは、元気いっぱいに尻尾を振っている。私が動けるようになった事を喜んでいるらしかった。
 そのままぐりぐりと頭を擦り付けてくる。

『でた~、甘えん坊こむぎ!』

 シュンがからかうように言うと、神様がすかさず突っ込んだ。

『お前さんもさっき飛び付いておったろうに?』

『あ、あれは……』

 シュンは珍しく神様に押されている。
 その横で、真白さんがこむぎを眺めながら呟いた。

『偶然拾ったにしては、本当に良く懐いていますよね……』

 彼は少し目を伏せて続けた。

『お母さんの事、あんまり覚えていなくても、人間の匂いが懐かしかったのかな……』

 先程見た美しい女性。確かにこむぎは不思議そうな顔をしていたけれど、彼女の愛おしそうな表情を思い出すと、胸が締め付けられる。

(……もっと一緒に居たかったろうに)

『まあ、作る飯が美味いというのもぽいんとじゃろうな。夏也は此奴のたまご好きを直ぐに見抜いたからの!』

 何故か神様が得意気に頷いた。するとこむぎが顔を上げてきょろきょろする。

『たーご?』

『ほらもう……食いしん坊なところは神様に似ちゃったじゃないですか!』

『む、そんなのは元からじゃろう? わしのせいじゃないわい!』

『神様のつまみ食いは教育に悪いですからね!』

 私と神様のやり取りを見て、真白さんは笑いながら目を細めた。

『ふふふ、本当に……この子を拾ってくださったのが、夏也さんで良かった……』

 独りぼっちの狐なんて、多分居なかった。いつも誰かが誰かを思ってくれていたんだ。

 桜の木を見上げると、葉影の間から綺麗な三日月が覗いていた。
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