165 / 195
第6章 あやかし子狐と三日月オムライス
2.銀胡の思惑
しおりを挟む
『そうですか……』
『ただ……』
真白さんは縁側に目を遣ると、また私の方を見て続けた。
『お祭りの時は確かに、彼が偶然盗みに入る所に出くわしましたが、キャンプの時は違います。恐らく彼は、どこかからこむぎちゃんを見守っているはずです』
『我々は常に彼に監視されていると……。ただ、それってつまり銀胡には親としてこむぎを心配する気持ちがあるという事ですよね?』
真白さんは少し黙ってから頷いた。
『ええ……。でなければ、あの時こむぎちゃんが天狗に拐われても阻止する必要は無かった訳ですから』
『でも、もしそうなら何でうちに取り返しに来ないの?』
チョココロネを齧りながら、シュンが不思議そうに尋ねた。
『恐らく、初めはそうしようと思っていたのでしょうが、彼は私達が子狐を大切に扱っている事に気が付いたのでしょう。そして、彼の狙いが元から翡翠ではなく黄泉の珠だったのなら、天狗から宝を奪うのに子連れでは面倒だった筈です』
『夏也は勝手にべびーしったーにされとったという事か』
神様は笑いながらメロンパンの幽霊を頬張っている。
『もう、笑い事じゃないですよ! じゃあもし、彼の狙いが黄泉の珠で、それがもう達成されたのだとしたら……』
『此方から探さずとも、向こうから迎えに来る可能性があります』
(ついに、この時が来たか……)
自分からあれだけ威勢良く天狗に啖呵を切っておきながら、私は今更ながらにその事を実感していた。
(銀胡がこむぎを迎えに来る……)
私の緊張を他所に、こむぎは満足そうな顔で、たまごサンドを齧っていた。
『ただ……』
真白さんは縁側に目を遣ると、また私の方を見て続けた。
『お祭りの時は確かに、彼が偶然盗みに入る所に出くわしましたが、キャンプの時は違います。恐らく彼は、どこかからこむぎちゃんを見守っているはずです』
『我々は常に彼に監視されていると……。ただ、それってつまり銀胡には親としてこむぎを心配する気持ちがあるという事ですよね?』
真白さんは少し黙ってから頷いた。
『ええ……。でなければ、あの時こむぎちゃんが天狗に拐われても阻止する必要は無かった訳ですから』
『でも、もしそうなら何でうちに取り返しに来ないの?』
チョココロネを齧りながら、シュンが不思議そうに尋ねた。
『恐らく、初めはそうしようと思っていたのでしょうが、彼は私達が子狐を大切に扱っている事に気が付いたのでしょう。そして、彼の狙いが元から翡翠ではなく黄泉の珠だったのなら、天狗から宝を奪うのに子連れでは面倒だった筈です』
『夏也は勝手にべびーしったーにされとったという事か』
神様は笑いながらメロンパンの幽霊を頬張っている。
『もう、笑い事じゃないですよ! じゃあもし、彼の狙いが黄泉の珠で、それがもう達成されたのだとしたら……』
『此方から探さずとも、向こうから迎えに来る可能性があります』
(ついに、この時が来たか……)
自分からあれだけ威勢良く天狗に啖呵を切っておきながら、私は今更ながらにその事を実感していた。
(銀胡がこむぎを迎えに来る……)
私の緊張を他所に、こむぎは満足そうな顔で、たまごサンドを齧っていた。
0
お気に入りに追加
391
あなたにおすすめの小説
ニンジャマスター・ダイヤ
竹井ゴールド
キャラ文芸
沖縄県の手塚島で育った母子家庭の手塚大也は実母の死によって、東京の遠縁の大鳥家に引き取られる事となった。
大鳥家は大鳥コンツェルンの創業一族で、裏では日本を陰から守る政府機関・大鳥忍軍を率いる忍者一族だった。
沖縄県の手塚島で忍者の修行をして育った大也は東京に出て、忍者の争いに否応なく巻き込まれるのだった。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
青い祈り
速水静香
キャラ文芸
私は、真っ白な部屋で目覚めた。
自分が誰なのか、なぜここにいるのか、まるで何も思い出せない。
ただ、鏡に映る青い髪の少女――。
それが私だということだけは確かな事実だった。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
俺の部屋はニャンDK
白い黒猫
キャラ文芸
大学進学とともに東京で下宿生活をすることになった俺。
住んでいるのは家賃四万五千円の壽樂荘というアパート。安さの理由は事故物件とかではなく単にボロだから。そんなアパートには幽霊とかいったモノはついてないけれど、可愛くないヤクザのような顔の猫と個性的な住民が暮らしていた。
俺と猫と住民とのどこか恍けたまったりライフ。
以前公開していた作品とは人物の名前が変わっているだけではなく、設定や展開が変わっています。主人公乕尾くんがハッキリと自分の夢を持ち未来へと歩いていく内容となっています。
よりパワーアップした物語を楽しんでいただけたら嬉しいです。
小説家になろうの方でも公開させていただいております。
千里香の護身符〜わたしの夫は土地神様〜
ユーリ(佐伯瑠璃)
キャラ文芸
ある日、多田羅町から土地神が消えた。
天候不良、自然災害の度重なる発生により作物に影響が出始めた。人口の流出も止まらない。
日照不足は死活問題である。
賢木朱実《さかきあけみ》は神社を営む賢木柊二《さかきしゅうじ》の一人娘だ。幼い頃に母を病死で亡くした。母の遺志を継ぐように、町のためにと巫女として神社で働きながらこの土地の繁栄を願ってきた。
ときどき隣町の神社に舞を奉納するほど、朱実の舞は評判が良かった。
ある日、隣町の神事で舞を奉納したその帰り道。日暮れも迫ったその時刻に、ストーカーに襲われた。
命の危険を感じた朱実は思わず神様に助けを求める。
まさか本当に神様が現れて、その危機から救ってくれるなんて。そしてそのまま神様の住処でおもてなしを受けるなんて思いもしなかった。
長らく不在にしていた土地神が、多田羅町にやってきた。それが朱実を助けた泰然《たいぜん》と名乗る神であり、朱実に求婚をした超本人。
父と母のとの間に起きた事件。
神がいなくなった理由。
「誰か本当のことを教えて!」
神社の存続と五穀豊穣を願う物語。
☆表紙は、なかむ楽様に依頼して描いていただきました。
※小説家になろう、カクヨムにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる