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第6章 あやかし子狐と三日月オムライス

2.銀胡の思惑

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『そうですか……』

『ただ……』

 真白さんは縁側に目を遣ると、また私の方を見て続けた。

『お祭りの時は確かに、彼が偶然盗みに入る所に出くわしましたが、キャンプの時は違います。恐らく彼は、どこかからこむぎちゃんを見守っているはずです』

『我々は常に彼に監視されていると……。ただ、それってつまり銀胡には親としてこむぎを心配する気持ちがあるという事ですよね?』

 真白さんは少し黙ってから頷いた。

『ええ……。でなければ、あの時こむぎちゃんが天狗に拐われても阻止する必要は無かった訳ですから』

『でも、もしそうなら何でうちに取り返しに来ないの?』

 チョココロネを齧りながら、シュンが不思議そうに尋ねた。

『恐らく、初めはそうしようと思っていたのでしょうが、彼は私達が子狐を大切に扱っている事に気が付いたのでしょう。そして、彼の狙いが元から翡翠ではなく黄泉の珠だったのなら、天狗から宝を奪うのに子連れでは面倒だった筈です』

『夏也は勝手にべびーしったーにされとったという事か』

 神様は笑いながらメロンパンの幽霊を頬張っている。

『もう、笑い事じゃないですよ! じゃあもし、彼の狙いが黄泉の珠で、それがもう達成されたのだとしたら……』

『此方から探さずとも、向こうから迎えに来る可能性があります』

(ついに、この時が来たか……)

 自分からあれだけ威勢良く天狗に啖呵を切っておきながら、私は今更ながらにその事を実感していた。

(銀胡がこむぎを迎えに来る……)

 私の緊張を他所に、こむぎは満足そうな顔で、たまごサンドを齧っていた。
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