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第5章 神と天狗と月見うどん
23.出迎え
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一ノ瀬さんは冷静に分析している。
私もこのような体験は初めてではないが、今回はこの空間に招き入れた者と交渉する必要がある。
決裂した場合の事を考えると、少し背筋が寒くなった。
『一ノ瀬さんすいません……巻き込んでしまって……』
『危険は承知の上だ。こんなにハッキリと人界との境界を感じた事も無かったから参考になる』
一ノ瀬さんは表情を変えずに返答した。流石刑事、肝が座っている。
そんな会話をしていると、お堂の入り口に人影が現れた。
『あっ……』
それは、修行僧のような服を着ているが、明らかに人間ではない姿をしていた。顔は青く、中央に鳥のような黒い嘴があり、背中には羽が生えている。
(奏汰の言っていた通りだ……)
恐らく烏天狗というやつだろう。それは此方を睨み付けると、しゃがれた声で言った。
『宝賢の言っていた神と人間だな?』
『は、はい!』
『……ついて来るが良い』
私が動揺しながら返事をすると、彼は踵を返して我々を促した。
ちらりと横を確認すると、一ノ瀬さんは先程と変わらない落ち着いた表情で、神様もやれやれといった顔をしている。
(緊張してるのは私だけか……)
私はちょっと恥ずかしくなったが、お土産を抱きしめて、そのままお堂の中へと歩を進めた。
建屋の中は薄暗く、香を焚いているのか、辺りにはなんだか不思議な香りが漂っていた。
私もこのような体験は初めてではないが、今回はこの空間に招き入れた者と交渉する必要がある。
決裂した場合の事を考えると、少し背筋が寒くなった。
『一ノ瀬さんすいません……巻き込んでしまって……』
『危険は承知の上だ。こんなにハッキリと人界との境界を感じた事も無かったから参考になる』
一ノ瀬さんは表情を変えずに返答した。流石刑事、肝が座っている。
そんな会話をしていると、お堂の入り口に人影が現れた。
『あっ……』
それは、修行僧のような服を着ているが、明らかに人間ではない姿をしていた。顔は青く、中央に鳥のような黒い嘴があり、背中には羽が生えている。
(奏汰の言っていた通りだ……)
恐らく烏天狗というやつだろう。それは此方を睨み付けると、しゃがれた声で言った。
『宝賢の言っていた神と人間だな?』
『は、はい!』
『……ついて来るが良い』
私が動揺しながら返事をすると、彼は踵を返して我々を促した。
ちらりと横を確認すると、一ノ瀬さんは先程と変わらない落ち着いた表情で、神様もやれやれといった顔をしている。
(緊張してるのは私だけか……)
私はちょっと恥ずかしくなったが、お土産を抱きしめて、そのままお堂の中へと歩を進めた。
建屋の中は薄暗く、香を焚いているのか、辺りにはなんだか不思議な香りが漂っていた。
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