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第5章 神と天狗と月見うどん

19.騒音教師再び

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『Hey!  Mr.護堂! 浮かないfaceでどうしまシタ?』

『うっ! 西園寺先生……』

 話し掛けてきたのは、例のド派手な独演会教師だった。今日も長い手足と口が良く動いている。
 そして毎度思うが、この胡散臭い片言英語の彼は、本当に英語教師なのだろうか。

 あまり関わりたくない気持ちもあったが、一縷の望みを懸けて、私は尋ねてみる事にした。

『あの、西園寺先生って日本酒詳しかったりしますか……?』

『Rice wine?  of course!』

 西園寺先生は顔を輝かせる。珍しく私から頼られたのが嬉しいとばかりに、彼は急にハリキリ出した。

『うちのgroupの酒造が近くにありますから、今度酒蔵をご紹介しまショウ! original brandも沢山有りマス! 甘口、辛口お好みは?』

『酒蔵!? え、ええと天狗は……辛口かなぁ……多分。って、飲みたいのは私じゃなくて、今回は人にプレゼントしたくてお勧めがあればと……』

 西園寺家は財閥か何かだったのだろうか。守備範囲が広すぎる。混乱しながら説明する私に、西園寺先生はさらに畳み掛けてきた。

『そうだ! うちの酒を下ろしている割烹がありマスから、今夜飲みに行きセンか!? 行きまショウ! right now!』

『ええっ!?』

 私の説明は全く聞いていない様子で、西園寺先生は私の肩をがっしりと掴む。
 咄嗟に何とか自分の鞄は掴んだものの、私はそのまま西園寺先生に引き摺られるように職員室を後にしたのであった。
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