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第5章 神と天狗と月見うどん

14.昔話

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『大昔……って?』

 私が眉間にシワを寄せていると、神様が説明してくれた。

『豊月じゃよ。昔、ここらで悪さしとったって言ったろ? 辺り一帯の妖を従え人間の精気を集めて、強大な力を手にした妖狐じゃった。だが此奴に討伐されて以来快心し、宇迦様の御使になったんじゃ』

『うわー、そんな事が……』

『その時に比べたら、銀胡も天狗も人間には手出しをしてないし、妖力的にも大した事ないからね。安心してよ』

 先程まで無愛想だった一ノ瀬さんの顔で微笑まれると、なんだか不思議な気分だ。

『じゃあ、貴方も一緒に来てくださるんですか?』

『勿論、そのつもりで来たんだよ』

『しかし、お前さんが出てきよったら、天狗達もびびってしまって話し合いにならんじゃろう。まあ、その方が手っ取り早く事情を吐かせられるかもしれんが……』

 神様は苦い顔で呟く。一ノ瀬さん(の身体)はまたコーヒーをすすりながら答えた。

『君達に危険が及ばない限りは、大人しく見守っているよ。偉ぶるつもりはないんだけど、僕クラスの神だと余りホイホイ人間界に干渉する訳にはいかないんだ。だから基本は見学。この特等席でね』

『……最初から暇つぶしが目的なんじゃろ?』

 神様は毒づいたが、何やらすごい神様が一緒に来てくれるのだ。こんなに心強い事も無い。

『ありがとうございます! 他に頼める方が居なかったので、助かります!』

『うん。狐にばかり頼るのもどうかと思うしね?』
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