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第5章 神と天狗と月見うどん

13.腐れ縁

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『え?』

『ふむ、ちと面倒臭い事になったのう……』

 横を向くと、神様が珍しく嫌そうな顔をしている。

『酷い反応だねえ? 実例を見せてあげようと思ってわざわざ出て来てあげたんじゃないか?』

『な、何が起こってるんです?』

 話し方も仕草も、先程の一ノ瀬さんとはまるで異なる。私は理解出来ずに神様に尋ねた。

神懸かみがかりじゃ。一ノ瀬の身体に神が降りて来ておる』

『ええ!?』

『直接身体を借りた方が便利な時もあってね。彼は本当に有能なんだ。助かるよ』

 言いながら一ノ瀬さんはコーヒーをすすった。


『人間界の食べ物も味わえるしね?』

『じゃ、じゃあ今一ノ瀬さんの身体に、神様が宿って喋ってるって事ですか?』

 私はようやく事態が飲み込めてきた。

『実際に神と一つ屋根の下で暮らしてる君が、今更そんなに驚く事かい?』

 それはそうなのだが。

『神様……此方の神様とはお知り合いなんですか?』

 私の質問に、神様はぶすっとして答えた。

『まあな。腐れ縁じゃ』

『相変わらず僕には冷たいんだね。折角、力になってあげようと思ったのに』

『まさか、またお前さんが後ろで糸を引いておるのか? 大昔に妖狐を退治した様に、銀胡の討伐はせんのか?』

 一ノ瀬に取り憑いた神は、長い溜息を吐いた。

『何でも僕のせいにしないで欲しいね? お転婆女狐の時は人間界にも影響があったから、僕が出て行っただけだよ。それに比べたら銀胡は可愛いものだ。神界が乗り出すまでもないさ』
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