護堂先生と神様のごはん あやかし子狐と三日月オムライス

栗槙ひので

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第3章 卵焼きと仲良しキャンプカレー

14.現れた妖

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 私は足早にその背中に近づいて行くと声を掛けた。

『君、何組の生徒? そこで何しているの?』

 すると、そのジャージ姿の後ろ頭が此方を振り返った。その顔を見て私は絶句する。

『なっ……!?』

 彼の顔には顔が無かった。つまり、目や鼻、口といったパーツが無く、つるりとした肌だけの状態、のっぺらぼうという奴だ。

『……こむぎを……いや、小狐をどうするつもりですか? 貴方がこの子の親なんですか?』

 ぞっとして思わず立ちすくんでしまったが、私は先日の見越し入道の件を思い出し、勇気を出して真正面から尋ねてみた。

『……』

 しかし、それは何も答えず私に向かってゆっくりと手を伸ばしてくる。

『え……』

 身の危険を感じたが、体が固まって動かない。しかし、指先が私の首に触れそうになった瞬間、奴は突然大きくのけ反った。

『うーっ!』

 緊張が解けて、ようやく体を動かせるようになり、私は奴の足元を見て何が起きたのかを理解した。

『こむぎ!』

 テントから飛び出してきたこむぎが、奴のふくらはぎに噛み付いていたのだ。

『……!』

 のっぺらぼうが足を振り回して暴れると、こむぎは茂みに蹴り飛ばされてしまった。

『こむぎー!』

 私は直ぐにこむぎに駆け寄ると、小さな体を抱き上げた。痛そうではあったが無事のようだ。

『この……!』

 私は湧き立つ怒りに震えながら、のっぺらぼうを振り返る。
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