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第1章 迷子の子狐とたまごサンド
15.御使の狐
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『んな訳ないでしょーがっっ!!』
あれから、私と神様は直ぐに交番を後にし、子狐を連れて神社へとやって来ていた。
お稲荷さんの社の前に立ち、神様が呼びかけると、白く長い髪に白い耳と尾を生やし、着物姿をした美しい女性が薄煙に包まれて現れた。
ぱっと見は二十代後半くらいに見えるが、彼女が元妖狐というなら、本当は数百歳といったところなのかもしれない。
私は彼女の登場に驚きつつも、咄嗟に「この子は貴女のお子さんですか」といきなり聞いてしまい、思い切り怒声を浴びせされてしまった。確かに失礼な質問であった。
『す、すいません……。実は、すぐそこの林の中で弱っていたこの子を見つけまして、辺りに親狐の気配もなくて途方に暮れていたんです。何かご存知ありませんか?』
『ふーん、妖狐の子どもが迷子ねぇ?』
彼女は居丈高な物言いで、此方を睥睨しながら言った。子狐は水を飲んで少し安心したのか、私の腕の中で眠っている。
『アタシも妖狐の世界を離れて久しいし、何か神界にまで轟く悪さをしている狐でもない限り、個々の妖怪の事なんて分からないわ』
『お前さんみたいな悪名高い大妖怪なら、直ぐ見つかって神界に討伐されてしまうからのう』
『うるさいわね! 昔の話はいいのよ!』
過去の事は思い出したくないらしく、彼女は一層カリカリした様子で神様に食ってかかった。
『怒らせてどーするんですか!』
『お前さんの最初の一言から怒らせとったろう』
『うっ……。だって神様もさっきそうかもって顔してたじゃないですか!』
あれから、私と神様は直ぐに交番を後にし、子狐を連れて神社へとやって来ていた。
お稲荷さんの社の前に立ち、神様が呼びかけると、白く長い髪に白い耳と尾を生やし、着物姿をした美しい女性が薄煙に包まれて現れた。
ぱっと見は二十代後半くらいに見えるが、彼女が元妖狐というなら、本当は数百歳といったところなのかもしれない。
私は彼女の登場に驚きつつも、咄嗟に「この子は貴女のお子さんですか」といきなり聞いてしまい、思い切り怒声を浴びせされてしまった。確かに失礼な質問であった。
『す、すいません……。実は、すぐそこの林の中で弱っていたこの子を見つけまして、辺りに親狐の気配もなくて途方に暮れていたんです。何かご存知ありませんか?』
『ふーん、妖狐の子どもが迷子ねぇ?』
彼女は居丈高な物言いで、此方を睥睨しながら言った。子狐は水を飲んで少し安心したのか、私の腕の中で眠っている。
『アタシも妖狐の世界を離れて久しいし、何か神界にまで轟く悪さをしている狐でもない限り、個々の妖怪の事なんて分からないわ』
『お前さんみたいな悪名高い大妖怪なら、直ぐ見つかって神界に討伐されてしまうからのう』
『うるさいわね! 昔の話はいいのよ!』
過去の事は思い出したくないらしく、彼女は一層カリカリした様子で神様に食ってかかった。
『怒らせてどーするんですか!』
『お前さんの最初の一言から怒らせとったろう』
『うっ……。だって神様もさっきそうかもって顔してたじゃないですか!』
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