護堂先生と神様のごはん あやかし子狐と三日月オムライス

第1章 迷子の子狐とたまごサンド

14.アドバイス

『交番は休暇所じゃないんで……。まあ、近所の爺さん婆さんも良く話し相手を探しに来るんで、煎餅くらいならありますけど……』

『あるんだ……』

　お煎餅を貰って、神様が大人しくなったので、私は話を元に戻した。

『やっぱり、ここじゃ分からないよね……ごめん。ちなみに、天太君は狐の妖怪に心当たりとかないよね？』

『あ、』

　私がそう尋ねると、天太君と何故か神様も同時に何かを思い出したような声を上げた。

『豊月ほうげつ……神社のお稲荷さんに行けば、何か分かるかもしれないっすよ？』

『ほうげつ？　お稲荷さんなら確かに狐と縁が深そうだね！　この辺の神社ってもしかして弁財天の事？』

　我が家からも程近い場所に、弁天様を祀った神社があった。緑に囲まれて心地良いので、年末年始やお祭りの時以外にも、私は散歩がてら良く通っていた。

　その神社にはサザナミという弁天様の代理人のような神様がいて、私も直接会った事があるが、豊月という名は初耳だ。

『ええ、本殿から脇道に入って進むと、お稲荷さんの末社があるんすよ』

『豊月はわしも知っておる。此奴も前に一緒に会う機会があってな。彼女は宇迦之御魂神うかのみたまのかみに使える御使みつかい、元妖狐じゃ』

『えー！　早く言ってくださいよ！』

『お腹が空いて力が出んかったんじゃ』

『どこぞのパン頭のヒーローみたいな事言ってないで、頑張ってくださいよ！』

『え、待ってください。この子まさか豊月さんの……』

　天太の一言に、一斉に黙った三人に囲まれて、水を飲み終った子狐は満足そうに欠伸をしていた。