護堂先生と神様のごはん あやかし子狐と三日月オムライス

栗槙ひので

文字の大きさ
上 下
5 / 195
第1章 迷子の子狐とたまごサンド

4.嗅覚

しおりを挟む
 彼は座敷童子なので、殆ど家に居るのだが、私が学校に行っている間に新聞やチラシには良く目を通しているようだ。またテレビっ子のせいか、妖怪でありながら妙に世情に詳しかったりする。

『確かに……! ちょっと覗いてこようかな。あ、神様には内緒で頼む』

『りょーかい!』

 神様やシュンの姿は、普通の人間には見えなかった。
 人前で神様達と話せば、完全に独り言が大きすぎる男となってしまうのだ。ハンズフリーの携帯で話しているフリをすれば誤魔化せるかと試みた事もあるが、揚げたてのコロッケに突進して行く神様の襟首を掴む動作の説明まではつけられなかった。
 黙って大人しくしているならともかく、美味しいものを見つけてはしゃぎ回る神様を連れて行くと確実にロクな事にならない。

 私には商店街で突然パントマイムを披露出来るような柔軟性もないし、生徒や父兄に教師の奇行を目撃される訳にはいかなかった。彼を連れて行く事は断固避けるべきなのだ。

『ちょっと、買い出しに行ってきます!』

 私は洗濯籠を片付けて、普段と変わらない様子を装いながら居間に声を掛けると、そそくさと玄関を出た。

 一歩外に出ると、もう初夏を感じさせる日差しが降り注いでいる。晴れやかな気持ちで顔を上げると、私は視線の先に人影を捉えた。
 それが何であるかを即座に認識した私の心は、夕立ちにでもあったかのように一気に曇った。

『どんなパンが並んでおるか楽しみじゃの?』

 大方の予想通り、目の前にはニヤニヤと笑みを浮かべた神様が立っていたのだ。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

隣の家に住むイクメンの正体は龍神様でした~社無しの神とちびっ子神使候補たち

鳴澤うた
キャラ文芸
失恋にストーカー。 心身ともにボロボロになった姉崎菜緒は、とうとう道端で倒れるように寝てしまって……。 悪夢にうなされる菜緒を夢の中で救ってくれたのはなんとお隣のイクメン、藤村辰巳だった。 辰巳と辰巳が世話する子供たちとなんだかんだと交流を深めていくけれど、子供たちはどこか不可思議だ。 それもそのはず、人の姿をとっているけれど辰巳も子供たちも人じゃない。 社を持たない龍神様とこれから神使となるため勉強中の動物たちだったのだ! 食に対し、こだわりの強い辰巳に神使候補の子供たちや見守っている神様たちはご不満で、今の現状を打破しようと菜緒を仲間に入れようと画策していて…… 神様と作る二十四節気ごはんを召し上がれ!

あやかし警察おとり捜査課

紫音
キャラ文芸
※第7回キャラ文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  二十三歳にして童顔・低身長で小中学生に見間違われる青年・栗丘みつきは、出世の見込みのない落ちこぼれ警察官。  しかしその小さな身に秘められた身体能力と、この世ならざるもの(=あやかし)を認知する霊視能力を買われた彼は、あやかし退治を主とする部署・特例災害対策室に任命され、あやかしを誘き寄せるための囮捜査に挑む。  反りが合わない年下エリートの相棒と、狐面を被った怪しい上司と共に繰り広げる退魔ファンタジー。  

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立

水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~ 第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。 ◇◇◇◇ 飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。 仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。 退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。 他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。 おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。 

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

神の居る島〜逃げた女子大生は見えないものを信じない〜

(旧32)光延ミトジ
キャラ文芸
月島一風(つきしまいちか)、ニ十歳、女子大生。 一か月ほど前から彼女のバイト先である喫茶店に、目を惹く男が足を運んでくるようになった。四十代半ばほどだと思われる彼は、大人の男性が読むファッション雑誌の“イケオジ”特集から抜け出してきたような風貌だ。そんな彼を意識しつつあった、ある日……。 「一風ちゃん、運命って信じる?」 彼はそう言って急激に距離をつめてきた。 男の名前は神々廻慈郎(ししばじろう)。彼は何故か、一風が捨てたはずの過去を知っていた。 「君は神の居る島で生まれ育ったんだろう?」 彼女の故郷、環音螺島(かんねらじま)、別名――神の居る島。 島民は、神を崇めている。怪異を恐れている。呪いを信じている。あやかしと共に在ると謳っている。島に住む人間は、目に見えない、フィクションのような世界に生きていた。 なんて不気味なのだろう。そんな島に生まれ、十五年も生きていたことが、一風はおぞましくて仕方がない。馬鹿げた祭事も、小学校で覚えさせられた祝詞も、環音螺島で身についた全てのものが、気持ち悪かった。 だから彼女は、過去を捨てて島を出た。そんな一風に、『探偵』を名乗った神々廻がある取引を持ち掛ける。 「閉鎖的な島に足を踏み入れるには、中の人間に招き入れてもらうのが一番なんだよ。僕をつれて行ってくれない? 渋くて格好いい、年上の婚約者として」 断ろうとした一風だが、続いた言葉に固まる。 「一緒に行ってくれるなら、君のお父さんの死の真相、教えてあげるよ」 ――二十歳の夏、月島一風は神の居る島に戻ることにした。 (第6回キャラ文芸大賞で奨励賞をいただきました。応援してくださった方、ありがとうございました!)

公主の嫁入り

マチバリ
キャラ文芸
 宗国の公主である雪花は、後宮の最奥にある月花宮で息をひそめて生きていた。母の身分が低かったことを理由に他の妃たちから冷遇されていたからだ。  17歳になったある日、皇帝となった兄の命により龍の血を継ぐという道士の元へ降嫁する事が決まる。政略結婚の道具として役に立ちたいと願いつつも怯えていた雪花だったが、顔を合わせた道士の焔蓮は優しい人で……ぎこちなくも心を通わせ、夫婦となっていく二人の物語。  中華習作かつ色々ふんわりなファンタジー設定です。

処理中です...