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13.救出

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 神様はあっさりと言う。

『そんな……!』

『じゃが、音楽を聴くと眠ってしまうという話は聞いた事があるのう……』

『音楽? 音楽といっても、楽器なんて持って……』

 そこで、私は昼間の会話を思い出し、振り返って叫んだ。

『西園寺先生! 歌ってください!』

『Why? 何を言っているんです!?』

 それは、そう思うだろう。

『さ、西園寺先生の素敵な歌が聴きたいんです! 今ここで! そうしたら、私も先生もきっと元気になって、体も動きますよ!』

 我ながら酷い出まかせである。

『そ、……そうかな!?』


 西園寺先生が単純な人で良かった。

 そして西園寺先生が、文化祭で歌う曲をまるでオペラ歌手のように歌いだすと、体に絡みついていた蔓草がゆるくなり、地面に落ちるのが見えた。

 私はそれを確認すると、すぐに彼の元に駆け寄る。

『素晴らしかったです! 立てますか?』

『OK! 君の言う通りだったね!』

 西園寺先生がにこやかにハグをしてきたのをかわすと、私は中山さんらしき男性に近づき、声をかけた。

『大丈夫ですか? 中山さん……ですよね?』

 男性は意識を取り戻すと、私を見てから驚いた様子で辺りを見回した。

『え、ああそうだが、なんで俺はこんな森の奥に……畑の近くに妙な穴が空いていると聞いて来たんだが、急に体が動かなくなって……』

 中山さんは、気を失ってから、ここまで引き摺られて来たようだ。少し衰弱しているが、私と西園寺先生で肩を貸して歩き、森を抜けてさつまいも畑の場所まで案内してくれた。


 不思議な事に、畑はあの近道より中山家に近い場所にあった。

『あれ? 中山さんのお父さんから貰った地図を見間違えたのかな?』

 私はポケットを探るが、紙切れは見当たらなかった。穴に落ちた時にでも、落としたのだろうか。

『え、親父に会ったって? 親父は今入院中で、家には居ないはずだけど……』

 私と西園寺先生は、顔を見合わせる。

『どうやら呼ばれたようじゃの』

 ニヤリとする神様の横で、私は再び背筋を凍らせていた。
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