上 下
12 / 14

12.妖樹

しおりを挟む
 慌てて追いかけ、足の蔓を切ろうとするが、先程より動きが早くなり、蔓の太さも増している。

(この太さじゃ、手では無理だ……! 刃物なんて持っていないし、どうすれば……)

 成す術ないまま、とりあえず引き摺られる西園寺先生を追いかけて行くと、少し開けた場所に、血のような色をした大きな木が立っていた。
 そして、その根元には50代くらいの男性が座り込んでいる。 体にはしっかりと太い蔓が巻きついていた。

(もしかして、あれが中山さん家の息子さん!?)

 蔓草はどうやらその木の根元から伸びて来ているらしかった。
 西園寺先生はそのまま、幹の近くまで引き摺られていってしまう。

 木の周りには、蔓が触手のように伸びており、これ以上近づけば、私まで取り込まれてしまうことは明白だった。

(一体どうすれば……?)

 私が立ち尽くしていると、背後から聞き慣れた呑気な声が聞こえてくる。

『まったく、帰りが遅いと思ったら、こんな所で何しとるんじゃ』

『か、神様!? 何でここに……?』

 目の前にうちの神様が立っていた。しかも、その腕には先程の子狸が抱えられている。

『縁側で昼寝しておったら、こいつがやって来てな。自分を助けてくれた人間が、穴に落ちて襲われているから、助けてやってくれと言うのだ』

『そうだったんですね……。ありがとう』

 子狸は、はたはたとしっぽを振った。

『Help……Mr.護堂、体が動きマセン……』

 西園寺先生が幹に縛り付けられた状態で苦しそうに呻いた。

『神様、あれは一体何ですか? 早く二人を助けないと……』

『ふむ、かなり嫌な気を纏った妖樹のようじゃが……』 

『どうすれば、二人を助けられますか? 神様は何か魔法とか使えないんですか?』

『無理じゃの』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

侯爵様と私 ~その後~

菱沼あゆ
キャラ文芸
付き合い始めてからの方が緊張するのは、何故なんでしょうね……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

羅刹を冠する鬼と狐

井上 滋瑛
キャラ文芸
帝国華羅に羅刹院という、羅刹士を束ねる特殊組織があった。 帝国公認でありながら干渉を受けず、官民問わない依頼と契約、その遂行を生業とする。 その依頼内容は鳥獣妖魔の討伐から要人警護、更には暗殺まで表裏問わず多岐に渡る。 ある日若手羅刹士の遼経が依頼を終えて拠点に戻ると、かつて妖魔が支配していた都市、煥緞が妖仙の兄弟によって陥落された事を知る。 妖仙の狙いはかつて煥緞に眠っていた古代霊術だった。 一度はその討伐参加を見送り、元担当院士の玉蓮と共に別なる古代霊術の探索に出発する。 かつて古代霊術が眠っている遺跡発掘の警護中に殉職した父。 古代霊術の権威であった大学院の教授の警護中に失踪した恋人。 因果は巡り、自身の出生の真実を知らされ、そして妖仙の兄弟と対峙する。

あやかし雑草カフェ社員寮 ~社長、離婚してくださいっ!~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 令和のはじめ。  めでたいはずの10連休を目前に仕事をクビになった、のどか。  同期と呑んだくれていたのだが、目を覚ますと、そこは見知らぬ会社のロビーで。  酔った弾みで、イケメンだが、ちょっと苦手な取引先の社長、成瀬貴弘とうっかり婚姻届を出してしまっていた。  休み明けまでは正式に受理されないと聞いたのどかは、10連休中になんとか婚姻届を撤回してもらおうと頑張る。  職だけでなく、住む場所も失っていたのどかに、貴弘は住まいを提供してくれるが、そこは草ぼうぼうの庭がある一軒家で。  おまけにイケメンのあやかしまで住んでいた。  庭にあふれる雑草を使い、雑草カフェをやろうと思うのどかだったが――。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

女の子が地面に突き刺さっている

藤田 秋
キャラ文芸
マジかよ。

腐れヤクザの育成論〜私が育てました〜

古亜
キャラ文芸
たまたま出会ったヤクザをモデルにBL漫画を描いたら、本人に読まれた。 「これ描いたの、お前か?」 呼び出された先でそう問いただされ、怒られるか、あるいは消される……そう思ったのに、事態は斜め上に転がっていった。 腐(オタ)文化に疎いヤクザの組長が、立派に腐っていく話。 内容は完全に思い付き。なんでも許せる方向け。 なお作者は雑食です。誤字脱字、その他誤りがあればこっそり教えていただけると嬉しいです。 全20話くらいの予定です。毎日(1-2日おき)を目標に投稿しますが、ストックが切れたらすみません…… 相変わらずヤクザさんものですが、シリアスなシリアルが最後にあるくらいなのでクスッとほっこり?いただければなと思います。 「ほっこり」枠でほっこり・じんわり大賞にエントリーしており、結果はたくさんの作品の中20位でした!応援ありがとうございました!

処理中です...