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12.妖樹
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慌てて追いかけ、足の蔓を切ろうとするが、先程より動きが早くなり、蔓の太さも増している。
(この太さじゃ、手では無理だ……! 刃物なんて持っていないし、どうすれば……)
成す術ないまま、とりあえず引き摺られる西園寺先生を追いかけて行くと、少し開けた場所に、血のような色をした大きな木が立っていた。
そして、その根元には50代くらいの男性が座り込んでいる。 体にはしっかりと太い蔓が巻きついていた。
(もしかして、あれが中山さん家の息子さん!?)
蔓草はどうやらその木の根元から伸びて来ているらしかった。
西園寺先生はそのまま、幹の近くまで引き摺られていってしまう。
木の周りには、蔓が触手のように伸びており、これ以上近づけば、私まで取り込まれてしまうことは明白だった。
(一体どうすれば……?)
私が立ち尽くしていると、背後から聞き慣れた呑気な声が聞こえてくる。
『まったく、帰りが遅いと思ったら、こんな所で何しとるんじゃ』
『か、神様!? 何でここに……?』
目の前にうちの神様が立っていた。しかも、その腕には先程の子狸が抱えられている。
『縁側で昼寝しておったら、こいつがやって来てな。自分を助けてくれた人間が、穴に落ちて襲われているから、助けてやってくれと言うのだ』
『そうだったんですね……。ありがとう』
子狸は、はたはたとしっぽを振った。
『Help……Mr.護堂、体が動きマセン……』
西園寺先生が幹に縛り付けられた状態で苦しそうに呻いた。
『神様、あれは一体何ですか? 早く二人を助けないと……』
『ふむ、かなり嫌な気を纏った妖樹のようじゃが……』
『どうすれば、二人を助けられますか? 神様は何か魔法とか使えないんですか?』
『無理じゃの』
(この太さじゃ、手では無理だ……! 刃物なんて持っていないし、どうすれば……)
成す術ないまま、とりあえず引き摺られる西園寺先生を追いかけて行くと、少し開けた場所に、血のような色をした大きな木が立っていた。
そして、その根元には50代くらいの男性が座り込んでいる。 体にはしっかりと太い蔓が巻きついていた。
(もしかして、あれが中山さん家の息子さん!?)
蔓草はどうやらその木の根元から伸びて来ているらしかった。
西園寺先生はそのまま、幹の近くまで引き摺られていってしまう。
木の周りには、蔓が触手のように伸びており、これ以上近づけば、私まで取り込まれてしまうことは明白だった。
(一体どうすれば……?)
私が立ち尽くしていると、背後から聞き慣れた呑気な声が聞こえてくる。
『まったく、帰りが遅いと思ったら、こんな所で何しとるんじゃ』
『か、神様!? 何でここに……?』
目の前にうちの神様が立っていた。しかも、その腕には先程の子狸が抱えられている。
『縁側で昼寝しておったら、こいつがやって来てな。自分を助けてくれた人間が、穴に落ちて襲われているから、助けてやってくれと言うのだ』
『そうだったんですね……。ありがとう』
子狸は、はたはたとしっぽを振った。
『Help……Mr.護堂、体が動きマセン……』
西園寺先生が幹に縛り付けられた状態で苦しそうに呻いた。
『神様、あれは一体何ですか? 早く二人を助けないと……』
『ふむ、かなり嫌な気を纏った妖樹のようじゃが……』
『どうすれば、二人を助けられますか? 神様は何か魔法とか使えないんですか?』
『無理じゃの』
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