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9.穴の底

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『わぁぁ!?』

 立ち上がるどころか、瞬間的に体が沈んだかと思うと、私は尻もちをつく形で、気付けば泥にまみれていた。
 突然の事に、何が起こったのか分からなかったが、どうやら先程までいた地面が崩れたらしい。

 ズレた眼鏡を直して辺りを見回すと、私は土の壁にぐるりと囲まれていた。立ち上がっても頭も出ないくらいの深さの穴だ。

『Are you OK?』

 西園寺先生が上から心配そうに覗き込んで、手を伸ばしてくれた。

『ええ、ありがとうござい……』

 私が彼の手を取ろうとしたその時、何かが足に巻きつく感覚があった。振り返ると、先程の赤黒い蔓草が左足に絡みついている。

『え……?』

 足から視線を根元の方に移していくと、蔓草はその一本だけではなく、穴の奥の方から何本も伸びてきているのが見えた。
 しかも、自ら動きながらこちらに迫ってきているのである。

『ええぇ!?』

『どうしマシた!?』

『お、奥から蔓草が沢山伸びてきて……!』

『What?』

 私は必死に蔓草の群れを指差したが、西園寺先生の表情は理解出来ないといった顔だ。

(まさか、見えていない……?)
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