護堂先生の芋掘り怪奇譚

4.変な同僚

（なんだって、こんな事に……）

　かれこれ数時間は歩き続けている気がする。周囲が薄暗くてよく分からないが、森の外はもう日が暮れている頃だろう。暗い森の奥深く、私と西園寺先生は道を見失って立ち尽くしていた。

　私達は、昼過ぎには教頭に指示されたお宅に、菓子折りを持って訪れていた。
　そこには、我が家に負けずとも劣らない古い日本家屋があった。
　異なる点といえば、この辺りの地主の家らしく、門構えなど大層立派で、家の敷地もかなり広そうな事だろう。

　西園寺先生とは、駅前で合流したが、教頭直々の特別なミッションだと張り切っており、いつにも増してテンションが高いため、私は早速疲れてしまっていた。

『Saturdayは我が英語Circleの文化祭に向けたミュージカルの練習をしなければならないのデスが、Special missionなら仕方がありまセンね！』

　彼はそれだけを言うために、思い切り腕を広げて空を見上げるオーバーアクションをとる。
　生粋の日本人であるにも関わらず、片言のような話し方なのも解せない。

　確かに、彫りの深い整った顔立ちと身長の高さ、手足の長さは日本人離れしているが、彼は普段から必要以上に芝居掛かった大きな動きをする。

『Mr.護堂も、主役であるこの私の歌声を楽しみにしていてくだサイね！』

（主役は生徒に譲ってやれよ……）

　彼は学校でもこの派手さを貫き通しており、横に並ぶと、中肉中背で顔も性格も平凡な標準型日本人の私は霞んで見える程だった。

　ひとまず私は西園寺先生を無視して、さっさと玄関に向かい、インターホンを押す。