護堂先生と神様のごはん 幽霊屋台は薄暮を彷徨う

栗槙ひので

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第4章 嘘みたいな日常

4.後日譚

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『先輩! 例の記事評判ですよ! いや~、ほんとありがとうございます!』

 取材から一週間後、丁度昼食の片付けが終わって一息ついていると、湊川君から御礼の電話があった。
 何やら高揚している様子が、電話口からも伝わってくる。

『そ、そうなの? あんまり面白く書けてないんじゃないかと思って心配してたんだけど……』

 私は内心嬉しく思いつつも、はしゃいだ感じが出ないように落ち着いた声で応えた。

『いや、写真の方なんですよ! 最後の霊園近くで撮ってもらった写真に、霊が映り込んでるって話題になってて!』

『え?』

 私は卓袱台に置きっ放しにしていた雑誌を取り上げて片手でページを巡った。湊川君はバイト代も直ぐに振り込んでくれ、ご丁寧に見本誌まで送ってくれていた。

『SNSで噂が広まって、おかげで今月号の売上がかなり伸びましてね!』

(そんな変なもの写ってたかな?)

 私が不思議に思いながら記事を確認すると、確かに最後の写真、霊園の壁の裏から、白い手のようなものがにゅっと突き出ていた。しかし、これは

『なんかこれ、ピースしてない?』

 あの調子の良い若者の幽霊だろうか。こんなに緊張感が無い心霊写真はあまり無いだろう。

『そうそう、それと海の写真にも大量のオーブが写ってるんですよ!』

 湊川君は興奮気味に続ける。
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