16 / 26
第一章 入学編
入学編第十一話 一歩
しおりを挟む
今日は、竜機操縦士育成学校の生徒たちにとって一週間に一度の休みの日である。
現在、ミリアはラノハの部屋の前にいる。
ヴァルサと話をした日に自分の部屋に入ってから二日、ずっとここから出てきていない。
ラノハはまだ、立ち上がれていなかった。
ミリアはそんなラノハを心配して、ラノハの部屋の前まで来ているというわけだ。
そしてミリアは、ラノハの部屋のドアの前でラノハに声をかけた。
「ラノハ?聞こえてる?」
だが、部屋の中からラノハの声が返ってこない。
メイドさんが朝食を持っていった時には、ちゃんと完食されたお盆が部屋の前に出ていたそうなので、起きていることは間違いないのだが……。
ミリアは、声をかけるだけでなくドアをトントンと叩いた。
「ラノハー?」
だが、それでも全く反応がない。
ミリアはこのままでは埒が明かないと、ラノハの部屋の中に入ることにした。
「ラノハ、入るよー?」
ミリアはそう言い、ラノハの部屋のドアを開けてラノハの部屋に入った。
そこでミリアが見たのは、自分のベットで涙を流しながらうずくまっているラノハの姿だった。
それを見たミリアは驚いて、すぐにラノハの元に駆け寄る。
「どうしたの!?大丈夫!?」
しかし、ラノハはミリアの声に反応せず、ブツブツと独り言を言い続けた。
「俺の……俺のせいで……死んだ……?俺がいなければ……死ななかった……?」
「……ラノハ?」
「……俺が、怖がってる……?逃げている……?一体、何から――」
「ラノハ!」
ミリアはそう声をかけるのと同時に、ラノハの肩を揺らしてこちらを向かせる。
ミリアの方を向いたラノハの顔は、十年間共に暮らしてきたミリアでさえ、見たことがないような泣き顔であり、目に生気がなかった。
そんなラノハの顔を見てギョッとしたミリアであったが、ラノハの声によりすぐに現実に戻された。
「……ミリアか……?」
「っ!うん!そうだよ!」
ミリアがそう返事をした瞬間、ラノハの肩に添えられていたミリアの手が、ラノハの手によって振り払われた。
そしてまたうずくまり、声を出す。
「……出ていってくれ……」
「……え?」
「……今はまだ、一人でいたい……」
「……なんで?」
「……分からないことだらけなんだ……。だから……」
「だから一人にしてほしいって?……はぁ。あのねラノハ。ここ二日ずっと同じことで悩んでるんだったら、もう一人じゃ答えは出ないと思うよ?」
「……だが……」
ミリアはラノハのこの返答を聞いて、またため息を吐いた。
そして、少し悩んだかと思えば、何か思いついた顔を浮かべラノハに話しかけた。
「よし!じゃあデートに行こう!」
「……は?」
ミリアのその突拍子もない言葉に、ラノハは開いた口が塞がらなかった。
無理もない。先程一人でいたいと言ったばかりなのに、デート……外にでかけたいと言うのだから。
「な、何言って……」
「ほらほら。行くよー!」
「ちょっ!」
ミリアは動こうとしないラノハを無理矢理立ち上がらせ、ドアの方に引っ張る。
そしてそのままドア開け、部屋の外に出て、ラノハの足を部屋の外に一歩出させた。
「よし!さあ行こう!」
ミリアがそう言って、ラノハを連れて行こうとした時、いつの間にか近くにいたメイドがミリアに声をかけた。
「ミリアお嬢様。ラノハ坊ちゃまは未だ寝間着です。その格好で外に出られるのは少々……」
「あ……」
……どうやら、外に出るのはもう少しだけ後のことになりそうであった。
現在、ミリアはラノハの部屋の前にいる。
ヴァルサと話をした日に自分の部屋に入ってから二日、ずっとここから出てきていない。
ラノハはまだ、立ち上がれていなかった。
ミリアはそんなラノハを心配して、ラノハの部屋の前まで来ているというわけだ。
そしてミリアは、ラノハの部屋のドアの前でラノハに声をかけた。
「ラノハ?聞こえてる?」
だが、部屋の中からラノハの声が返ってこない。
メイドさんが朝食を持っていった時には、ちゃんと完食されたお盆が部屋の前に出ていたそうなので、起きていることは間違いないのだが……。
ミリアは、声をかけるだけでなくドアをトントンと叩いた。
「ラノハー?」
だが、それでも全く反応がない。
ミリアはこのままでは埒が明かないと、ラノハの部屋の中に入ることにした。
「ラノハ、入るよー?」
ミリアはそう言い、ラノハの部屋のドアを開けてラノハの部屋に入った。
そこでミリアが見たのは、自分のベットで涙を流しながらうずくまっているラノハの姿だった。
それを見たミリアは驚いて、すぐにラノハの元に駆け寄る。
「どうしたの!?大丈夫!?」
しかし、ラノハはミリアの声に反応せず、ブツブツと独り言を言い続けた。
「俺の……俺のせいで……死んだ……?俺がいなければ……死ななかった……?」
「……ラノハ?」
「……俺が、怖がってる……?逃げている……?一体、何から――」
「ラノハ!」
ミリアはそう声をかけるのと同時に、ラノハの肩を揺らしてこちらを向かせる。
ミリアの方を向いたラノハの顔は、十年間共に暮らしてきたミリアでさえ、見たことがないような泣き顔であり、目に生気がなかった。
そんなラノハの顔を見てギョッとしたミリアであったが、ラノハの声によりすぐに現実に戻された。
「……ミリアか……?」
「っ!うん!そうだよ!」
ミリアがそう返事をした瞬間、ラノハの肩に添えられていたミリアの手が、ラノハの手によって振り払われた。
そしてまたうずくまり、声を出す。
「……出ていってくれ……」
「……え?」
「……今はまだ、一人でいたい……」
「……なんで?」
「……分からないことだらけなんだ……。だから……」
「だから一人にしてほしいって?……はぁ。あのねラノハ。ここ二日ずっと同じことで悩んでるんだったら、もう一人じゃ答えは出ないと思うよ?」
「……だが……」
ミリアはラノハのこの返答を聞いて、またため息を吐いた。
そして、少し悩んだかと思えば、何か思いついた顔を浮かべラノハに話しかけた。
「よし!じゃあデートに行こう!」
「……は?」
ミリアのその突拍子もない言葉に、ラノハは開いた口が塞がらなかった。
無理もない。先程一人でいたいと言ったばかりなのに、デート……外にでかけたいと言うのだから。
「な、何言って……」
「ほらほら。行くよー!」
「ちょっ!」
ミリアは動こうとしないラノハを無理矢理立ち上がらせ、ドアの方に引っ張る。
そしてそのままドア開け、部屋の外に出て、ラノハの足を部屋の外に一歩出させた。
「よし!さあ行こう!」
ミリアがそう言って、ラノハを連れて行こうとした時、いつの間にか近くにいたメイドがミリアに声をかけた。
「ミリアお嬢様。ラノハ坊ちゃまは未だ寝間着です。その格好で外に出られるのは少々……」
「あ……」
……どうやら、外に出るのはもう少しだけ後のことになりそうであった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
『小説家になろう』『カクヨム』『アルファポリス』ぜひ各サイト責任者様にご一読、検討してほしい…各サイトを利用してみての格付けと要望、改善提案
アヤマチ☆ユキ
エッセイ・ノンフィクション
このエッセイは、タイトルの通り、ぜひ各サイトの責任者の方にご一読、検討してみていただきたい。
実際に『小説家になろう』、『カクヨム』、『アルファポリス』…各サイトを使用し、投稿を行ってみた1ユーザーとしての、それぞれのサイトデザインについての印象と感想、独断での格付け。
及びそれぞれのサイトへの『要望と改善に向けての提案』を記したモノになります。
責任者の方へ…とありますが、「他のサイトを利用してみようかな?」…と考えている方の選択の際の一助になれば幸いです。
読み辛くなるために、各サイト様の敬称は略させていただきます。また順番は私がユーザー登録した順であり、他意はありません。
※この内容は2016年06月10日頃まで…の内容となります。
それ以降に変更等があった場合には内容が異なる可能性があります。
特に『カクヨム』、『アルファポリス』様は頻繁に改善等を行われておりますので
※小説家になろう様、カクヨム様、アルファポリス様にて掲載
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる