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第一章 入学編
入学編第二話 移動
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生徒達全員が自己紹介を終えた後、少しの自由時間を設けてからラノハたち生徒はセフィターに連れられ、ある場所へと向かっていた。
生徒達はセフィターから何も伝えられていない。故にどこに向かっているのか、そこに何があるのかなどは生徒達には一切分からないのだ。
だからだろうか。生徒達は自然に近くの者同士で話し合いをし始めた。自由時間に生徒同士で交友したことにより、友人を作ることができたようだ。……ただ一人を除いてだが。
そんな一人のラノハに、一躍人気者となったミリアが話しかけた。
「ねえラノハ。ラノハはどこに向かってると思う?」
「……そんなの決まってんだろ。つうか話しかけてくんな。俺にそんな時間はないんだ」
ラノハはそう言って、話しかけてきたミリアを突っぱねた。
その言葉を聞いて、また生徒達の空気が悪くなる。特に一部の生徒達は、ラノハに対して嫌悪感をあらわにした。
だがミリアはいつものことだと言わんばかりに一切動じず、果敢にラノハに話しかけ続ける。
「え!?どこに向かってるか分かるの!?分かってるんだったら教えてよラノハ!」
「……うるせえな。なんで教えなきゃならねえんだよ。そもそも着いたら説明してくれるだろうが」
「分かってないなぁラノハは。皆で一緒に予想するから面白いんでしょ!」
「面白さなんていらねえんだよ。そんなのは仲良しごっこしてるお友達とでも話しとけ」
そんなラノハの冷たい物言いに、ミリアは少しだけ眉をひそめて口を噤んだ。
ラノハから自分たちは友達ですらないと、はっきり言われてしまったからである。
当然だが、先程嫌悪感をあらわにしていた生徒達は、さらにそれをさらに大きくした。その他の生徒達も、流石にラノハに対して嫌悪の視線を送る。
しかしラノハはそんな視線を物ともせず、一人先頭を歩く。
一人で先に行くラノハの後ろで、ミリアは完全にラノハと話す空気を失ってしまった。
周りの空気がラノハに対する嫌悪一色となったからだ。
そして、ミリアがラノハから離れたところで、あるそっくりな二人の女子生徒がミリアに話しかけてきた。
「ねえねえ。なんでミリアはあの、えっと……オタール君!に話しかけてるの?知り合い?気になるよねシルン」
「うんうん。シルアお姉ちゃんの言う通り、すっごく気になるよ」
「「ねー」」
顔がそっくりで、息もぴったり。シルアとシルンは双子なのだろう。
唯一違うところがあるとすれば髪色だ。姉であるシルアが金髪なのに対し、妹のシルンは銀髪である。
身長も髪型も似ているので、見分けるポイントが本当に髪色と声ぐらいしかない。
「え?うーん……。知り合いというか、幼馴染というか……。まあ、そんな感じかな」
そんな二人の質問に、ミリアはこう答えた。少し言葉を濁したのは、先程のラノハの友達ではない発言が尾を引いているのだろう。
「「へー!」」
「じゃあ、近所に住んでたとか?」
「もしかして、隣とか?」
「い、いや……どっちも違うかな……」
「「ええ!?」」
「それでなんで幼馴染なの!?もしかして一緒に住んでるとか!?」
「シルアお姉ちゃん。それは流石にないでしょ」
「いや、まあ、正解なんだけどね……」
「「うそ!?」」
そう。ラノハとミリアは同じ家に住んでいる。
十年前のあの時、ラノハを救った男がミリアの父親であり、彼がそのままラノハを引き取ったのだ。
そんなラノハとミリアの関係は、幼少期からの付き合いではあるが、幼馴染とは言えない……といったところだろうか。
もっとも、ミリアは何度もラノハと仲良くなろうとしたが、ラノハはそれらすべてを突っぱねて修行に没頭していた。
ラノハとミリアが同居していることを知った他の生徒達の反応は、ほぼほぼ二分された。
一方はラノハに対して妬みや嫉みといった悪感情を、もう一方はミリアに対して好奇な視線を。
言わなくても分かるだろうが、前者が主に男子生徒、後者が主に女子生徒である。
「「なんで一緒に住んでるの!?なんでなんで!?」」
「それハモるのすごいね……。流石双子……」
「「えへへ。そう?……じゃなくて!」」
「ほらまた……」
「目的地に到着した。私語をやめてくれ」
セフィターがそう言った事により、生徒達は足を止めて私語をやめた。
彼らの前には大きな壁、いや、扉があった。この先に何があるのか。それは、もう全ての生徒が察していた。
「説明は後にする。まず先にこの扉を開けるので、よく見ておくように」
生徒達にそう告げたセフィターは、扉の横に設置されているある台状の機械の前に立った。
その機械は掌の形に凹んでおり、掌を置くようになっていた。
セフィターはそこに掌を置き、意識を集中する。すると、掌をおいた場所から白い光が発生し、その光が台を伝って扉までいく。扉に描かれている線が全て発光した瞬間、扉がゆっくりと開いていった。
「……よし。では、中に入ろうか」
セフィターがそう言い、どんどんと開いていっている扉に向かって歩き始めたのを見て、生徒達もまた、セフィターに続いて歩き始めた。
生徒達はセフィターから何も伝えられていない。故にどこに向かっているのか、そこに何があるのかなどは生徒達には一切分からないのだ。
だからだろうか。生徒達は自然に近くの者同士で話し合いをし始めた。自由時間に生徒同士で交友したことにより、友人を作ることができたようだ。……ただ一人を除いてだが。
そんな一人のラノハに、一躍人気者となったミリアが話しかけた。
「ねえラノハ。ラノハはどこに向かってると思う?」
「……そんなの決まってんだろ。つうか話しかけてくんな。俺にそんな時間はないんだ」
ラノハはそう言って、話しかけてきたミリアを突っぱねた。
その言葉を聞いて、また生徒達の空気が悪くなる。特に一部の生徒達は、ラノハに対して嫌悪感をあらわにした。
だがミリアはいつものことだと言わんばかりに一切動じず、果敢にラノハに話しかけ続ける。
「え!?どこに向かってるか分かるの!?分かってるんだったら教えてよラノハ!」
「……うるせえな。なんで教えなきゃならねえんだよ。そもそも着いたら説明してくれるだろうが」
「分かってないなぁラノハは。皆で一緒に予想するから面白いんでしょ!」
「面白さなんていらねえんだよ。そんなのは仲良しごっこしてるお友達とでも話しとけ」
そんなラノハの冷たい物言いに、ミリアは少しだけ眉をひそめて口を噤んだ。
ラノハから自分たちは友達ですらないと、はっきり言われてしまったからである。
当然だが、先程嫌悪感をあらわにしていた生徒達は、さらにそれをさらに大きくした。その他の生徒達も、流石にラノハに対して嫌悪の視線を送る。
しかしラノハはそんな視線を物ともせず、一人先頭を歩く。
一人で先に行くラノハの後ろで、ミリアは完全にラノハと話す空気を失ってしまった。
周りの空気がラノハに対する嫌悪一色となったからだ。
そして、ミリアがラノハから離れたところで、あるそっくりな二人の女子生徒がミリアに話しかけてきた。
「ねえねえ。なんでミリアはあの、えっと……オタール君!に話しかけてるの?知り合い?気になるよねシルン」
「うんうん。シルアお姉ちゃんの言う通り、すっごく気になるよ」
「「ねー」」
顔がそっくりで、息もぴったり。シルアとシルンは双子なのだろう。
唯一違うところがあるとすれば髪色だ。姉であるシルアが金髪なのに対し、妹のシルンは銀髪である。
身長も髪型も似ているので、見分けるポイントが本当に髪色と声ぐらいしかない。
「え?うーん……。知り合いというか、幼馴染というか……。まあ、そんな感じかな」
そんな二人の質問に、ミリアはこう答えた。少し言葉を濁したのは、先程のラノハの友達ではない発言が尾を引いているのだろう。
「「へー!」」
「じゃあ、近所に住んでたとか?」
「もしかして、隣とか?」
「い、いや……どっちも違うかな……」
「「ええ!?」」
「それでなんで幼馴染なの!?もしかして一緒に住んでるとか!?」
「シルアお姉ちゃん。それは流石にないでしょ」
「いや、まあ、正解なんだけどね……」
「「うそ!?」」
そう。ラノハとミリアは同じ家に住んでいる。
十年前のあの時、ラノハを救った男がミリアの父親であり、彼がそのままラノハを引き取ったのだ。
そんなラノハとミリアの関係は、幼少期からの付き合いではあるが、幼馴染とは言えない……といったところだろうか。
もっとも、ミリアは何度もラノハと仲良くなろうとしたが、ラノハはそれらすべてを突っぱねて修行に没頭していた。
ラノハとミリアが同居していることを知った他の生徒達の反応は、ほぼほぼ二分された。
一方はラノハに対して妬みや嫉みといった悪感情を、もう一方はミリアに対して好奇な視線を。
言わなくても分かるだろうが、前者が主に男子生徒、後者が主に女子生徒である。
「「なんで一緒に住んでるの!?なんでなんで!?」」
「それハモるのすごいね……。流石双子……」
「「えへへ。そう?……じゃなくて!」」
「ほらまた……」
「目的地に到着した。私語をやめてくれ」
セフィターがそう言った事により、生徒達は足を止めて私語をやめた。
彼らの前には大きな壁、いや、扉があった。この先に何があるのか。それは、もう全ての生徒が察していた。
「説明は後にする。まず先にこの扉を開けるので、よく見ておくように」
生徒達にそう告げたセフィターは、扉の横に設置されているある台状の機械の前に立った。
その機械は掌の形に凹んでおり、掌を置くようになっていた。
セフィターはそこに掌を置き、意識を集中する。すると、掌をおいた場所から白い光が発生し、その光が台を伝って扉までいく。扉に描かれている線が全て発光した瞬間、扉がゆっくりと開いていった。
「……よし。では、中に入ろうか」
セフィターがそう言い、どんどんと開いていっている扉に向かって歩き始めたのを見て、生徒達もまた、セフィターに続いて歩き始めた。
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