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第三十四話 アテナさんへの質問

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「おはよう。Sクラスの諸君。ホームルームを始めるぞ」

 俺達がそれぞれ指定されていた席に座っていると、ローズの兄とアテナさんがそろって教室に入ってきた。
 その瞬間、先程まで少し騒がしかったのが嘘のように、教室がシンっと静まり返る。
 あ、ちなみに俺の席は横に四列の内、一番前の列の右端。つまり廊下側だった。
 出来ることなら席替えして欲しい位置だな……。
 まぁ、隣がローズだから別にいいんだけどさ……左斜め後ろにはエザもいるし。
 ただしボーグン、テメーはダメだ。なんで後ろがボーグンなんだよ!?俺もうこいつに四回ぐらいキレてる気がするんだが!?部屋も一緒だし、席も近いってどんな偶然だよ!?
 ……まぁ、悪い奴じゃないのは分かってるんだけどね?うん。根はいい奴だと思うんだよ。ちょっと性格がムカつくだけで。
 ……いや、ちょっとではないか。大分か。

「一応、出席をとるぞ。まぁ、席が埋まっているから欠席がいないのは分かるが、座っている席が合っているかの確認だけさせてもらう」

「その間に、私達の紹介をして、ちょっとだけ私が皆の質問に答えるわね。このクラスの担任を務めることになった、アテナ・シュウェットよ。それでこっちの人が、このクラスの副担任を務めることになった、ジェラー・ラウト。改めてよろしくね」

 へー……ローズの兄の名前ってジェラー・ラウトっていうのか……。
 っていうか俺なんで今まで知らなかったんだよ……。入学式の後大遅刻したからですね分かります。
 よし。これからは、ジェラー先生と呼ぶようにしよう。そうしよう。

「じゃあ、私に質問したいことがある人は手を挙げて」

 アテナさんがそう言ったら、クラスの大半の人が一斉に手を挙げた。
 み、皆そんなにアテナさんに聞きたいことがあるのか!?一体何を聞きたいんだろう?

「こ、こんなにいるの?そうね……じゃあ、三人だけよ。私の独断と偏見で、私に質問できる三人を決めるわ。他に質問がある人は後で個人的に聞きに来て。いい?」

「「「「「はい」」」」」

「ええと……じゃあ、ウィリア・アイフィズさん」

「はい!」

 アテナさんにウィリア・アイフィズと呼ばれた女子生徒は、横一列目の窓側の端の席に座る、髪型をツインテールにしている金髪の人だった。
 そのウィリアが、アテナさんに質問をするために席から立ち上がる。

「アテナ先生って、彼氏とかいたりするんですかー!?」

 あ、それは俺も気になってた。だってアテナさんって普通に美人で、彼氏とかいてもおかしくないし。
 恐らくだが、今この教室にいる生徒全員が気になっていることだろう。

「ええ!?か、彼氏!?……か、彼氏はいないわ。今まで魔王を倒すことだけを考えてきたし……」

「ほうほう……彼氏は、ですか。なるほどなるほど。分かりました!ありがとうございまーす!」

「え、ええ。つ、次にいきましょうか」

 質問が終わったので、ウィリアは席に座った。
 しかし、彼氏はいない、か……。これは好きな人や好意を持っている人がいる、ということなのだろうか?だとしたら、一体誰なのだろう……。まぁ、アテナさんとそこまで長い付き合いじゃないし、全くわからんけども。

「じゃあ次は……グラン・モルティブ君」

「はい!よっしゃあ!」

 横二列目の廊下側から三番目の席に座る、グラン・モルティブと呼ばれた男子生徒が勢いよく立ち上がった。
 ……あれ?今立ち上がった茶髪のグランとかいう奴、どこかで見たことがあるような気がするんだが……。気のせいか……?
 ……あ!思い出した!こいつ確かナンパ冤罪事件の時、俺の周りに集まってきた男子生徒の中で、一番最初に話しかけてきた奴だ!

「じゃあ、アテナ先生の好きな異性のタイプを教えてください!」

「異性のタイプ……?うーん……何かに対して熱心に取り組める人かしら……」

「なるほど……。分かりました!俺、頑張ります!」

「?え、ええ。何かは知らないけど、頑張って?」

 ……アテナさん、あからさまにピンと来てないみたいだな……。アテナさんって鈍感だったんだ……。
 グランは明らかに落ち込んだ様子で、自分の席に座った。
 ……頑張れよ。グラン。陰ながら応援してるぞ。
 まぁ、アテナさんには好きな人がいるかもしれないんだけどな。あくまで可能性だけども。

「次の人で最後ね。じゃあ最後は……コルト・フォーレンス君」

「はい」

 最後の質問ができる人に選ばられたのは、四角い眼鏡を掛けており、いかにも堅物という雰囲気を醸し出している、コルト・フォーレンスと呼ばれた黒髪の男子生徒だった。
 そんなコルトが、横四列目の廊下側の端の席から立ち上がる。
 さて、コルトはアテナさんへの最後の質問に何をもってくる?

「では、アテナ先生。私が今持っている一番の疑問をお聞きしたいと思いますが、よろしいでしょうか?」

「ええ。どうぞ。なんでも聞いて。私が答えられる範囲のものなら、なんだって答えてあげるわ」

「ありがとうございます。では遠慮なく、質問させていただきます」

 コルトはそう言うと、スッと右手の人差し指を上げ、俺の方に向けてきた。
 ……うん?俺?Me?何故に?Why?意味が分からないんですけど?

「アテナ先生は何故、このような者を推薦したのでしょうか。理由をお聞かせ願いたいのですが」

 あー、なるほど。そういうことね。理解したわ。
 ……いやアテナさんへの最後の質問に俺のことなんかーい!!
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