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第一章 追放対策
第二十四話
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歩き出してからしばらくすると、先頭を歩いていたヴァンの足が止まった。そして、ヴァンは徹也達の方に向いて声をかける。
「よし!ここでいいだろう!それでは、各々戦闘を再開してくれ!」
ヴァンがそう言うと、生徒達は魔物と戦う為にそれぞれ散っていった。その生徒一人につき、一人の騎士が後を追う。
だが、徹也達は動かない。下手に動けば、魔物と遭遇する可能性が高まってしまうからである。
刀夜とクリスは、共に生徒と騎士であるので、流石に徹也達にずっとついているわけにはいかないので、少し徹也達から離れた。しかし、準備はしている。
徹也と治伽は休憩しているふりをしつつ、周りを見ながら警戒していた。いつでも反応できるようにするためである。
「だ、大丈夫、だよね……?」
不安そうに、舞が徹也に声をかけた。対策をしてあるとはいえ、完璧ではない。やはり不安なのだろう。そう思った徹也は、舞を安心させる為に言葉を紡ぐ。
「……ああ。できる限りの対策はした。もし、何かイレギュラーがあっても、お前らは助ける」
「……うん。でも、私達だけじゃないよ?皆で、帰ろうね?もちろん徹也君も」
舞は徹也の言葉を聞いて嬉しそうに笑ったが、頷いた後は真剣な顔になって、徹也に訴えかけた。舞のそんな訴えに、徹也は笑みを浮かべて頷き、こう返した。
「……ああ。帰ろう。必ず」
そんな徹也を見て、治伽も思わず顔を綻ばせる。だが、その顔は長く続かなかった。森の方から気配を感じたからである。それに気付いた治伽は、顔を歪ませて徹也に報告する。
「っ!徹也君!」
「っ!おう!」
治伽の声に、徹也はそう返事をして身構える。すると、森の中から凄い勢いでイノシシのような魔物が出てきた。徹也達は後ろに飛び、体勢を整えてそれを迎え撃つ。
「……横に避けるぞ。せーの、って言ったら右に飛べ」
「……ええ」
「……うん」
徹也の言葉に、治伽と舞は頷いて徹也の合図を待つ。イノシシのような魔物が近くまで突っ込んできた時、徹也は叫んだ。
「……せーのっ!!」
徹也の合図に合わせて、治伽と舞は徹也と共に右に飛んだ。その瞬間、森の方からきた風が、イノシシのような魔物を襲った。あっという間にイノシシは絶命し、バラバラになる。
だが、その風が、徹也達の方まできてしまった。それにより、徹也達は少し後ろに飛ばされてしまう。そこには木々があったが、それを抜けると、そこには何もなく、あるのは先が見えないほど深い崖であった。
風に押し出された徹也達は崖ギリギリで踏みとどまった。だが、またも風が地面をえぐり、徹也達を崖へと落とそうとする。
徹也は治伽と舞の手を取り《脚力強化》でここを脱しようとするが、足場が崩れてしまい踏み切ることができなかった。徹也は足場が崩れてから、すぐに《脚力強化》から《腕力強化》に切り替える。そして、治伽と舞を地面の方へと投げた。
「……おらっ!!」
「えっ……!?」
「て、徹也君!!」
徹也に投げられた治伽と舞は、地面の方へと飛んでいく。一方、徹也はそのまま崖に落ちていく……かに見えた。
徹也は上に手を伸ばす。すると、徹也の目に地面から覗く刀夜の顔が映った。そして刀夜は、徹也の方に手を伸ばす。その距離は、徹也と刀夜がお互いに目一杯手を伸ばしても、決して届かないものであった。
だが、徹也の顔には、恐怖も絶望もなかった。なぜなら、自分が助かることを確信しているからだ。
徹也と刀夜の手が伸び切った時に、徹也の足元に風が起こる。その風が、徹也を刀夜の方へと押し上げる。そして遂に、徹也の手が刀夜の手に届いた。
「引き上げるわよ!才無佐君!」
「はい……!」
刀夜はそう言うと、徹也を崖から引き上げた。刀夜に引き上げられた徹也は、地面に着いてから刀夜に話しかける。
「……治伽と、舞は、大丈夫ですか……?」
「……ええ。無傷よ。飛んできた二人をクリスさんが受け止めてくれたわ」
「そうですか……。上手くいってよかったです」
「そうね……。私達の方も、練習通りにできてよかったわ」
徹也は治伽と舞が無事だという事実を聞いて、安堵の息を吐く。そんな徹也を見て、刀夜は小さく笑みを浮かべてそう言った。
すると、治伽と舞とクリスが徹也と刀夜のところまで来た。そして、徹也に話しかける。
「だ、大丈夫!?徹也君!」
「徹也君!よかった……!無事で……!」
治伽と舞は、心配そうな声で徹也にそう言った。徹也はそんな治伽と舞の問に、手を挙げて言葉を返す。
「ああ。なんとか助かった。先生のおかげだ。ありがとうございます。先生」
「お礼なんていらないわよ。私はあなた達の教師だから」
刀夜が徹也の礼にそう答えると同時に、森の方からガサガサと音がした。そこから出てきたのは、タレン王国騎士団団長の、ヴァン・ルーカスであった。
「よし!ここでいいだろう!それでは、各々戦闘を再開してくれ!」
ヴァンがそう言うと、生徒達は魔物と戦う為にそれぞれ散っていった。その生徒一人につき、一人の騎士が後を追う。
だが、徹也達は動かない。下手に動けば、魔物と遭遇する可能性が高まってしまうからである。
刀夜とクリスは、共に生徒と騎士であるので、流石に徹也達にずっとついているわけにはいかないので、少し徹也達から離れた。しかし、準備はしている。
徹也と治伽は休憩しているふりをしつつ、周りを見ながら警戒していた。いつでも反応できるようにするためである。
「だ、大丈夫、だよね……?」
不安そうに、舞が徹也に声をかけた。対策をしてあるとはいえ、完璧ではない。やはり不安なのだろう。そう思った徹也は、舞を安心させる為に言葉を紡ぐ。
「……ああ。できる限りの対策はした。もし、何かイレギュラーがあっても、お前らは助ける」
「……うん。でも、私達だけじゃないよ?皆で、帰ろうね?もちろん徹也君も」
舞は徹也の言葉を聞いて嬉しそうに笑ったが、頷いた後は真剣な顔になって、徹也に訴えかけた。舞のそんな訴えに、徹也は笑みを浮かべて頷き、こう返した。
「……ああ。帰ろう。必ず」
そんな徹也を見て、治伽も思わず顔を綻ばせる。だが、その顔は長く続かなかった。森の方から気配を感じたからである。それに気付いた治伽は、顔を歪ませて徹也に報告する。
「っ!徹也君!」
「っ!おう!」
治伽の声に、徹也はそう返事をして身構える。すると、森の中から凄い勢いでイノシシのような魔物が出てきた。徹也達は後ろに飛び、体勢を整えてそれを迎え撃つ。
「……横に避けるぞ。せーの、って言ったら右に飛べ」
「……ええ」
「……うん」
徹也の言葉に、治伽と舞は頷いて徹也の合図を待つ。イノシシのような魔物が近くまで突っ込んできた時、徹也は叫んだ。
「……せーのっ!!」
徹也の合図に合わせて、治伽と舞は徹也と共に右に飛んだ。その瞬間、森の方からきた風が、イノシシのような魔物を襲った。あっという間にイノシシは絶命し、バラバラになる。
だが、その風が、徹也達の方まできてしまった。それにより、徹也達は少し後ろに飛ばされてしまう。そこには木々があったが、それを抜けると、そこには何もなく、あるのは先が見えないほど深い崖であった。
風に押し出された徹也達は崖ギリギリで踏みとどまった。だが、またも風が地面をえぐり、徹也達を崖へと落とそうとする。
徹也は治伽と舞の手を取り《脚力強化》でここを脱しようとするが、足場が崩れてしまい踏み切ることができなかった。徹也は足場が崩れてから、すぐに《脚力強化》から《腕力強化》に切り替える。そして、治伽と舞を地面の方へと投げた。
「……おらっ!!」
「えっ……!?」
「て、徹也君!!」
徹也に投げられた治伽と舞は、地面の方へと飛んでいく。一方、徹也はそのまま崖に落ちていく……かに見えた。
徹也は上に手を伸ばす。すると、徹也の目に地面から覗く刀夜の顔が映った。そして刀夜は、徹也の方に手を伸ばす。その距離は、徹也と刀夜がお互いに目一杯手を伸ばしても、決して届かないものであった。
だが、徹也の顔には、恐怖も絶望もなかった。なぜなら、自分が助かることを確信しているからだ。
徹也と刀夜の手が伸び切った時に、徹也の足元に風が起こる。その風が、徹也を刀夜の方へと押し上げる。そして遂に、徹也の手が刀夜の手に届いた。
「引き上げるわよ!才無佐君!」
「はい……!」
刀夜はそう言うと、徹也を崖から引き上げた。刀夜に引き上げられた徹也は、地面に着いてから刀夜に話しかける。
「……治伽と、舞は、大丈夫ですか……?」
「……ええ。無傷よ。飛んできた二人をクリスさんが受け止めてくれたわ」
「そうですか……。上手くいってよかったです」
「そうね……。私達の方も、練習通りにできてよかったわ」
徹也は治伽と舞が無事だという事実を聞いて、安堵の息を吐く。そんな徹也を見て、刀夜は小さく笑みを浮かべてそう言った。
すると、治伽と舞とクリスが徹也と刀夜のところまで来た。そして、徹也に話しかける。
「だ、大丈夫!?徹也君!」
「徹也君!よかった……!無事で……!」
治伽と舞は、心配そうな声で徹也にそう言った。徹也はそんな治伽と舞の問に、手を挙げて言葉を返す。
「ああ。なんとか助かった。先生のおかげだ。ありがとうございます。先生」
「お礼なんていらないわよ。私はあなた達の教師だから」
刀夜が徹也の礼にそう答えると同時に、森の方からガサガサと音がした。そこから出てきたのは、タレン王国騎士団団長の、ヴァン・ルーカスであった。
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