無能なオタクの異世界対策生活〜才能はなかったが傾向と対策を徹底し余裕で生き抜く〜

辻谷戒斗

文字の大きさ
上 下
11 / 93
第一章 追放対策

第十話

しおりを挟む
 あれから二時間ほどの時間が経った。徹也と治伽はその時間ずっと探し続けたが、今まで開いた本のどこにも必要な情報は載っていなかった。これだけ探して、まだ全体のほんの一部でしかない。その事実に、徹也は大きなため息を吐いた。

(これだけ探して、まだ見つからないのか……。まずいな……。これじゃあきりがない……)

 徹也はそう考えて、またため息を吐いた。そして、また一つの本棚を探し終えた徹也は、一段落ついたので治伽のところに行く。

「望月。そっちはどうだ?」

「……全然駄目。手がかりのての字もないわ」

「そうか……」

 徹也と治伽は同時にため息を吐いた。ため息を吐きすぎだが、吐かないとやっていられないのだろう。

 すると、書庫の扉が開いてクリスが書庫の中に入って来た。そして、徹也と治伽のところまで来て、二人に声をかける。

「すいません。そろそろ移動を開始しましょう。武器選びに間に合わないので……。武器庫で他の人達と合流して、そのまま武器選びになります」

「……分かりました。ただ、訓練が終わった後の自由時間にこの書庫を使っていいですか?」

 徹也はクリスにそう聞いた。徹也はこの書庫をいつでも使えるようにしておきたいのだ。今日は手がかりを得られなかったが、探し続ければ必ず見つかるはずだからである。

「……私だけでは判断できませんが、恐らく大丈夫だと思います。後で聞いておきますね」

「……はい。よろしくお願いします」

 クリスの返した言葉に、徹也は確定ではないのかと思い少し顔をしかめた。

 また、徹也は同時に自分の予想が当たっていれば、恐らく長居することは許されないだろうと思っていた。徹也と治伽に、情報が入らないようにするためである。

「では、行きましょう――」

「ちょっと待ってください」

 クリスが徹也と治伽を武器庫に案内しようとしたが、治伽がクリスを呼び止めた。そんな治伽の手には、一冊の本が握られていた。

「この本、持っていってもいいですか?」

「はい。構いません。では、一度部屋に戻りましょうか。それぐらいの時間はあると思うので」

「ありがとうございます」

「では、今度こそ行きましょう」

 クリスがそう言い、扉に向かって歩き出す。徹也と治伽はそんなクリスの後に続いた。扉を開き書庫から出て、まず部屋に向かう。

 するとあるき始めて少ししてから、徹也が治伽に話しかけた。

「その本、何が書いてあるんだ?」

 徹也は治伽にそう聞いた。治伽が持ってきたということは、必要な情報が書かれた本なのだろうと、徹也は考えたのだ。

「……目次を見たら、歴代の王の名前が並んでいたの。だから、歴史の本なんじゃないかって……」

「……なるほどな。何らかの情報があればいいんだが……」

「……そうね。後で一緒に読んでみましょう。今日の夜、才無佐君の部屋にこの本を持って行くわ」

「……俺が望月の部屋に行くのは駄目なのか?」

 徹也が治伽にそう聞いてしまった。徹也はただ、本を持って自分の部屋に来るよりも自分が望月の部屋に行った方が早いという考えでそう言ったのだが、治伽は徹也のその発言に対してジト目を向けながら言葉を返す。

「……女子の部屋は、男子禁制なのよ」

「そんなこと聞かされてないが……」

「……暗黙の了解よ」

「いや初めて聞いた――」

「き、ん、せ、いなの!とにかく、今日の夜に才無佐君の部屋に行くから」

「……はい」

 これは引き下がるしかないやつだと、徹也は思った。治伽がここまで強く言ってきたら、徹也には折れる選択肢しか残っていない。返す言葉も思いつかなかったのだ。

 一方、治伽は周りの目を気にしていた。部屋は女子は女子で、男子は男子でという風に分けられており、治伽の部屋だと人目につきやすいのだ。しかも恋の話題は、漏れればすぐに拡散してしまう。それで舞と優愛に伝わってしまってはいけないと、治伽は思っていた。

 それに比べて徹也の部屋は、人目につきにくい場所にあり、行きやすくバレにくい。なので治伽は、強引になろうとも徹也の部屋にしたかったのだ。

 もっとも、治伽には男子が部屋に来ることへの恥ずかしさもあったとは思うが……。

「……分かったらいいのよ」

(いや、分かってないけどな……。まぁ、そういうことにしておこう……)

 治伽はそう言って歩くスピードを上げた。徹也は治伽の言葉に対してこう思ったが、それを口に出すことはなかった。

 そして徹也は、クリスと治伽に置いて行かれないように、歩くスピードを少し上げたのであった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

ボッチはハズレスキル『状態異常倍加』の使い手

Outlook!
ファンタジー
経緯は朝活動始まる一分前、それは突然起こった。床が突如、眩い光が輝き始め、輝きが膨大になった瞬間、俺を含めて30人のクラスメイト達がどこか知らない所に寝かされていた。 俺達はその後、いかにも王様っぽいひとに出会い、「七つの剣を探してほしい」と言われた。皆最初は否定してたが、俺はこの世界に残りたいがために今まで閉じていた口を開いた。 そしてステータスを確認するときに、俺は驚愕する他なかった。 理由は簡単、皆の授かった固有スキルには強スキルがあるのに対して、俺が授かったのはバットスキルにも程がある、状態異常倍加だったからだ。 ※不定期更新です。ゆっくりと投稿していこうと思いますので、どうかよろしくお願いします。 カクヨム、小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

同級生の女の子を交通事故から庇って異世界転生したけどその子と会えるようです

砂糖琉
ファンタジー
俺は楽しみにしていることがあった。 それはある人と話すことだ。 「おはよう、優翔くん」 「おはよう、涼香さん」 「もしかして昨日も夜更かししてたの? 目の下クマができてるよ?」 「昨日ちょっと寝れなくてさ」 「何かあったら私に相談してね?」 「うん、絶対する」 この時間がずっと続けばいいと思った。 だけどそれが続くことはなかった。 ある日、学校の行き道で彼女を見つける。 見ていると横からトラックが走ってくる。 俺はそれを見た瞬間に走り出した。 大切な人を守れるなら後悔などない。 神から貰った『コピー』のスキルでたくさんの人を救う物語。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

追放王子の気ままなクラフト旅

九頭七尾
ファンタジー
前世の記憶を持って生まれたロデス王国の第五王子、セリウス。赤子時代から魔法にのめり込んだ彼は、前世の知識を活かしながら便利な魔道具を次々と作り出していた。しかしそんな彼の存在を脅威に感じた兄の謀略で、僅か十歳のときに王宮から追放されてしまう。「むしろありがたい。世界中をのんびり旅しよう」お陰で自由の身になったセリウスは、様々な魔道具をクラフトしながら気ままな旅を満喫するのだった。

無能と呼ばれた魔術師の成り上がり!!

春夏秋冬 暦
ファンタジー
主人公である佐藤光は普通の高校生だった。しかし、ある日突然クラスメイトとともに異世界に召喚されてしまう。その世界は職業やスキルで強さが決まっていた。クラスメイトたちは、《勇者》や《賢者》などのなか佐藤は初級職である《魔術師》だった。しかも、スキルもひとつしかなく周りから《無能》と言われた。しかし、そのたったひとつのスキルには、秘密があって…鬼になってしまったり、お姫様にお兄ちゃんと呼ばれたり、ドキドキハラハラな展開が待っている!?

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...