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護衛旅 平穏って、なんだっけ……?
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「アリス!? どうしてここに!?」
視線の先で地面にべちゃりと広がっているスライムの名を呼んだ私に応えてくれたのは、舌足らずなかわいらしいライムの声ではなく、いつもよりも少し高く硬い、慌てたようなハクの声だった。
「ハク…? どうしてライムをこんな所で寝かせているの……? 風邪を引いちゃうよ……?」
私たちが話している間も動かないライムの体。
いつもなら離れた所から近づいて行く私に気が付くと、すぐに振り返って可愛らしい声で私の名前を呼んでくれるライムの声が聞こえない。
「ライム」
名前を呼ぶと可愛らしい鳴き声を上げながら笑ってくれるライムが、何の反応も返さない。
「ライム?」
もうすぐ触れる位置にまで手を伸ばすと自分から身を寄せて、時には腕に飛び込んでくれるライムが、今はピクリとも動かない。
「ねえ、ライム? 起きて? 一緒にテントに戻ろう……?」
指先に触れる感触は、水分を含まない、カサついた、使い終わったラップフィルムのようで……。
「………なんだ。ライムかと思ったら、違ったね。色が似ているから間違っちゃった。……ねえ、ハク? ライムはどこかな?」
なんとなく、触れた指先を離さないまま、ハクにライムの居場所を聞いてみる。
「えっと、にゃ? 驚かないで聞いてほしいのにゃ……」
どうにも言い辛そうなハクの声を聞いて思い当たり、
「もしかしてはぐれちゃったの!? だったら早く探してあげないと!! 迷子のライムが泣いていたら大変!」
指先に触れたままのラップフィルムのようなものを無意識に両手で掬い上げながら立ち上がり、急いで歩き出すと、
「待つのにゃ! ライムはそこにいるから落ち着くのにゃ!」
ハクが宙に浮かび、私の胸元に体当たりをした。
体当たりをした勢いのまま肩まで駆け上がって来たハクが宙を浮かびながら私の頬を小さな頭でぐいぐい押すので、押されて向いた先にあった繁みを覗き込んでみる。
「ライム? ここいるの? …………いないみたいだよ? ねえ、ハク。ライムはどこ?」
繁みの中には何もいなかったのでハクに視線を合わせてもう一度聞いて見ると、ハクはどことなくバツの悪そうな表情で、
「ここにゃ。ここにいるのにゃ」
ゆっくりと宙を移動して、ぽむぽむ、と可愛らしい前足で私の手首を叩いて見せた。
「…………いないよ?」
手をどけて下を見てもライムはいない。くるりと振り返って辺りを見回してもライムはいない。
視線が合ったニールは焦ったように下を向き、続いて視線の合ったスレイは困ったように首を傾げて見せた。
どこにいるのかともう一度だけ辺りを見回し、改めてハクに視線を向けてみると、
「ここにゃ! これにゃ! これがライムにゃ!」
ハクは焦れたように、私の手の中にあるラップフィルムのようなものを前足で指して見せた。
「……まあるくないよ?」
「丸くなくてもライムなのにゃ!」
「………動いてないよ?」
「動いていなくてもライムなのにゃ!」
「…………干からびてるよ?」
「干からびていてもライムなのにゃ! だから僕の話を」
「だって!! 生きているように見えないよ!? これがライムの訳がないじゃない!!」
私の手の中の、どう見ても❝生❞を感じさせないラップフィルムのようなものがライムだなんて信じられなくて思わず叫んでしまう。
同意を求めるようにニールとスレイに視線をむけると、2頭は後ろめたそうな表情を浮かべながらオロオロと足踏みをしているし、もう一度ハクに視線を戻してもハクの返事は変わらない。
この、乾いた、風が吹けばすぐにも飛ばされそうなものが、ライム、なの………?
「ライムは」
「うああああああああああああああああっ………………!!」
「アリス!? 落ち着くにゃ!! ライムは」
「あああああああああっ! いやああああああああああああっ!!」
ハクが何かを言ったようだけど、よくわからない。
何故か私の耳は、どこか遠くで泣き叫んでいる女性の声しか聞こえなくなってしまった。
「アリス! アリス!! 大丈夫にゃ! 大丈夫だから……」
「ライム! ライムッ、ライムッ、ライムッ、ライムッ、ライムッ……!!」
「アリス! アリスッ! 僕の話を聞くのにゃ!」
「主! 主! ハク兄上、主が!!」
「主さまっ、お気を確かに!! 主さまっ!!」
私の手の中には、風が吹けば飛ばされてしまうほどの軽い感触。そして絶え間なく聞こえてくる女性の悲痛な叫び声。女性の声が何度も何度もライムの名前を呼んでいる。
そして唐突に気が付いた。
ライムが死んでしまったのだ、と。
同時に疑問が頭を過ぎる。
どうして、ハクやスレイやニールは、大切な、大切な仲間の死を私から隠そうとしていたのか?
そうして思い出す。思い出してしまった。
今日のライムは<アイスボール>ばかりを食べていたことを。
もしかして、水中毒……? それとも、アイスボールに含まれる魔力がライムを内側から攻撃した……? どちらにしても、私が、私の魔力で作ったアイスボールがライムを、死なせてしまった……?
「わたしが、ライムを殺した……」
「っ!? 違う! アリス、そうじゃない! ライムは死んでない!!」
私の心の声が漏れてしまっていたのか、ハクが泣きそうな顔で私を見ているのが見えたけど、
「ああっ……、ああああああああああああっ!」
聞こえるのは、女性の……、いや、私自身の声だけだ。
ぼやけた視界に映るのは、私の手のひら上のライムの遺体。
感じるのはガンガンと頭を殴られているかのような痛みと、体の奥底から感じる悪寒。そして、喉の奥に錆びのような臭いと味。
それらをどこか他人事のように感じながら、私はただただ、ライムの名を呼び続けた。
「……っ! 【スリープ】っ! 【スリープ】だっ! アリス、今は眠ってくれ!!」
ハクの悲痛な声が聞こえたような気がしたのと同時に、目の前が暗くなる。
意識を手放すことでこのどうしようもない痛みから逃げようとする自身をどこかで嗤いながら、ゆっくりと瞼を閉じる。
「……らい、む」
もう、ほとんど声になっていない呟きに、
「はぁ~い!」
かわいらしい返事の声が聞こえた気がして。
どこまでも都合の良い自分の耳を再度嗤いながら、意識を手放した。
ライム、ごめん……………。
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投稿が遅れてしまってすみません。
今日も読んでくださってありがとうございます!
視線の先で地面にべちゃりと広がっているスライムの名を呼んだ私に応えてくれたのは、舌足らずなかわいらしいライムの声ではなく、いつもよりも少し高く硬い、慌てたようなハクの声だった。
「ハク…? どうしてライムをこんな所で寝かせているの……? 風邪を引いちゃうよ……?」
私たちが話している間も動かないライムの体。
いつもなら離れた所から近づいて行く私に気が付くと、すぐに振り返って可愛らしい声で私の名前を呼んでくれるライムの声が聞こえない。
「ライム」
名前を呼ぶと可愛らしい鳴き声を上げながら笑ってくれるライムが、何の反応も返さない。
「ライム?」
もうすぐ触れる位置にまで手を伸ばすと自分から身を寄せて、時には腕に飛び込んでくれるライムが、今はピクリとも動かない。
「ねえ、ライム? 起きて? 一緒にテントに戻ろう……?」
指先に触れる感触は、水分を含まない、カサついた、使い終わったラップフィルムのようで……。
「………なんだ。ライムかと思ったら、違ったね。色が似ているから間違っちゃった。……ねえ、ハク? ライムはどこかな?」
なんとなく、触れた指先を離さないまま、ハクにライムの居場所を聞いてみる。
「えっと、にゃ? 驚かないで聞いてほしいのにゃ……」
どうにも言い辛そうなハクの声を聞いて思い当たり、
「もしかしてはぐれちゃったの!? だったら早く探してあげないと!! 迷子のライムが泣いていたら大変!」
指先に触れたままのラップフィルムのようなものを無意識に両手で掬い上げながら立ち上がり、急いで歩き出すと、
「待つのにゃ! ライムはそこにいるから落ち着くのにゃ!」
ハクが宙に浮かび、私の胸元に体当たりをした。
体当たりをした勢いのまま肩まで駆け上がって来たハクが宙を浮かびながら私の頬を小さな頭でぐいぐい押すので、押されて向いた先にあった繁みを覗き込んでみる。
「ライム? ここいるの? …………いないみたいだよ? ねえ、ハク。ライムはどこ?」
繁みの中には何もいなかったのでハクに視線を合わせてもう一度聞いて見ると、ハクはどことなくバツの悪そうな表情で、
「ここにゃ。ここにいるのにゃ」
ゆっくりと宙を移動して、ぽむぽむ、と可愛らしい前足で私の手首を叩いて見せた。
「…………いないよ?」
手をどけて下を見てもライムはいない。くるりと振り返って辺りを見回してもライムはいない。
視線が合ったニールは焦ったように下を向き、続いて視線の合ったスレイは困ったように首を傾げて見せた。
どこにいるのかともう一度だけ辺りを見回し、改めてハクに視線を向けてみると、
「ここにゃ! これにゃ! これがライムにゃ!」
ハクは焦れたように、私の手の中にあるラップフィルムのようなものを前足で指して見せた。
「……まあるくないよ?」
「丸くなくてもライムなのにゃ!」
「………動いてないよ?」
「動いていなくてもライムなのにゃ!」
「…………干からびてるよ?」
「干からびていてもライムなのにゃ! だから僕の話を」
「だって!! 生きているように見えないよ!? これがライムの訳がないじゃない!!」
私の手の中の、どう見ても❝生❞を感じさせないラップフィルムのようなものがライムだなんて信じられなくて思わず叫んでしまう。
同意を求めるようにニールとスレイに視線をむけると、2頭は後ろめたそうな表情を浮かべながらオロオロと足踏みをしているし、もう一度ハクに視線を戻してもハクの返事は変わらない。
この、乾いた、風が吹けばすぐにも飛ばされそうなものが、ライム、なの………?
「ライムは」
「うああああああああああああああああっ………………!!」
「アリス!? 落ち着くにゃ!! ライムは」
「あああああああああっ! いやああああああああああああっ!!」
ハクが何かを言ったようだけど、よくわからない。
何故か私の耳は、どこか遠くで泣き叫んでいる女性の声しか聞こえなくなってしまった。
「アリス! アリス!! 大丈夫にゃ! 大丈夫だから……」
「ライム! ライムッ、ライムッ、ライムッ、ライムッ、ライムッ……!!」
「アリス! アリスッ! 僕の話を聞くのにゃ!」
「主! 主! ハク兄上、主が!!」
「主さまっ、お気を確かに!! 主さまっ!!」
私の手の中には、風が吹けば飛ばされてしまうほどの軽い感触。そして絶え間なく聞こえてくる女性の悲痛な叫び声。女性の声が何度も何度もライムの名前を呼んでいる。
そして唐突に気が付いた。
ライムが死んでしまったのだ、と。
同時に疑問が頭を過ぎる。
どうして、ハクやスレイやニールは、大切な、大切な仲間の死を私から隠そうとしていたのか?
そうして思い出す。思い出してしまった。
今日のライムは<アイスボール>ばかりを食べていたことを。
もしかして、水中毒……? それとも、アイスボールに含まれる魔力がライムを内側から攻撃した……? どちらにしても、私が、私の魔力で作ったアイスボールがライムを、死なせてしまった……?
「わたしが、ライムを殺した……」
「っ!? 違う! アリス、そうじゃない! ライムは死んでない!!」
私の心の声が漏れてしまっていたのか、ハクが泣きそうな顔で私を見ているのが見えたけど、
「ああっ……、ああああああああああああっ!」
聞こえるのは、女性の……、いや、私自身の声だけだ。
ぼやけた視界に映るのは、私の手のひら上のライムの遺体。
感じるのはガンガンと頭を殴られているかのような痛みと、体の奥底から感じる悪寒。そして、喉の奥に錆びのような臭いと味。
それらをどこか他人事のように感じながら、私はただただ、ライムの名を呼び続けた。
「……っ! 【スリープ】っ! 【スリープ】だっ! アリス、今は眠ってくれ!!」
ハクの悲痛な声が聞こえたような気がしたのと同時に、目の前が暗くなる。
意識を手放すことでこのどうしようもない痛みから逃げようとする自身をどこかで嗤いながら、ゆっくりと瞼を閉じる。
「……らい、む」
もう、ほとんど声になっていない呟きに、
「はぁ~い!」
かわいらしい返事の声が聞こえた気がして。
どこまでも都合の良い自分の耳を再度嗤いながら、意識を手放した。
ライム、ごめん……………。
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