743 / 754
護衛旅 平穏な旅路 3
しおりを挟む
「アリス! ライムにアイスボールの【クリーン】添えをおかわりなのにゃ! 僕たちにはヨーグルト……今度は桃と葡萄なのにゃ!」
「おかわりなの~!」
「おかわりですの!」
「おかわりです!」
「は~い、どうぞ♪」
ブロック肉を使わないオークの肉料理祭り!は私的に何だか中途半端な気がしたので、祭り気分を盛り上げる為にワインを出してみた。
野営中に酔うのは危険だと思って今までは避けていたんだけど、ハクが提案してくれたんだ。少し大きめの防御結界まで張ってくれた上で。
おいしいオーク肉とおいしい(お手軽価格の方だけど)ワインで盛り上がったオデッタとアルフォンソさんは早々に酔いつぶれ、今はテントの中で熟睡中。
私たちは出した料理の残りを楽しみながら、アルフォンソ夫妻がとライムが解体してくれたオークのブロック肉を使った料理を調理中。たまにおかわりの声が掛かるけど、出している料理を残すような仔たちではないので安心しておかわりを出してあげる。
ちなみに今作っているのは焼き豚。今までは煮オークが多かったので今回はちょっとだけ変化を付けてみた。と言っても工程も味付けもそれほど大きく変わるわけではないので、ニールには不思議そうに首を傾げられたけどね。
焼き豚は煮る前にや表面を焼いているから!と説明したら、「それは主さまの作られる<角煮>と何が違うのですか」と聞かれて返事に困った。
なんとなく、気持ちの問題なんだよ~。飽きない為の!
ちなみに今回は塩豚も仕込んでみたよ。ブロック肉に満遍なく塩をすり込み、ラップの代わりにスライム皮をぴったりと巻いて、インベントリから取り出してテントの横に設置した冷蔵庫の中に入れるだけ!のお手軽品。
冷蔵庫をインベントリに入れると時間が止まってしまうから停車している時は忘れずに冷蔵庫取り出さないといけないけど、それ以外は放置しておくだけだから簡単だよね! 簡単すぎてオースティンの贈ってくれた冷蔵庫の半分を塩豚が占めるくらいに仕込んじゃった。おいしく熟成しますように!
「アリス! アイスボールのクリーン添えをおかわりなのにゃ!」
「アイスをおかわりなの~♪」
「はいは~い! ……今日はやけにアイスをいっぱい食べてるけどお腹は大丈夫なの? 凍らない?」
「「だいじょうぶ」なのにゃ!」
実はさっきから、ライムの食べるアイスボールのおかわりが5回を超えている。
夫妻がテントに入ったあと、ライムは一度従魔部屋に入り大量の肥料をインベントリ内に出してくれた。今日の解体で得たオークの廃棄部と今まで体内に貯めていた栄養で作ってくれたらしい。
それが終わって出てきたライムは、今度はアイスボール(に、【クリーン】をかけたもの)を食べたがり、最初は何も考えずに希望どおりに出していたんだけど、だんだん心配になって来た。
肥料を作り過ぎたせいで熱でも出ているのかとライムの額(らしきところ)におでこを合わせた私を見て、
「主さま? ライムお兄さまはお元気ですわ」
スレイが朗らかに笑う。ライムも、
「きょうはいっぱいがんばったからエイヨウホキュウのひなの」
と笑っているから、私の気にし過ぎのようだ。たまにはこんな日もあるだろう。
どれだけアイスボールを食べても、ライムがお腹を壊すことはない!とハクが断言してくれたので、安心してアイスボールのおかわりを出し続け、調理の合間にはハクや皆に勧められるままに(高い方の)ワインを空け、気が付いたらいつの間にか眠っていたらしい。
両側をニールとスレイの大きな体に挟まれて、温かくて気持ちがいい目覚めなんだけど、何かが違う。
いつもなら私の体の下に潜り込んでクッションになってくれているライムと、首元で私を温めながら寝ているはずのハクがいなかった。
ニールとスレイに聞いたら「散歩では?」と笑って言うんだけど……。
野外で私が寝ている間にライムが私のそばを離れるなんて、これまではなかったんだ。ハクだって、敵を狩りに行くとき以外はいつだって側にいてくれた。敵を狩りに行くときだって、私が気が付く前に戻って来ていたし……。
なんとなく胸騒ぎがして、ニールやスレイが引き留めるのを聞かずに私は結界の外に出た。
月明かりの下、やっと視線の先に2匹を見つけた私は駆け寄ろうとして……。
一瞬だけ足を止めてしまう。
「………………ライム?」
視線の先のライムの体はいつもの可愛らしい丸いフォルムではなく、地面にべちゃりと広がっていて。それは自分の意思で変形している時の様な形態にも見えなくて……。
「………ライム!!」
一言で言うと、❝生❞を感じられない姿になっていたんだ。
「おかわりなの~!」
「おかわりですの!」
「おかわりです!」
「は~い、どうぞ♪」
ブロック肉を使わないオークの肉料理祭り!は私的に何だか中途半端な気がしたので、祭り気分を盛り上げる為にワインを出してみた。
野営中に酔うのは危険だと思って今までは避けていたんだけど、ハクが提案してくれたんだ。少し大きめの防御結界まで張ってくれた上で。
おいしいオーク肉とおいしい(お手軽価格の方だけど)ワインで盛り上がったオデッタとアルフォンソさんは早々に酔いつぶれ、今はテントの中で熟睡中。
私たちは出した料理の残りを楽しみながら、アルフォンソ夫妻がとライムが解体してくれたオークのブロック肉を使った料理を調理中。たまにおかわりの声が掛かるけど、出している料理を残すような仔たちではないので安心しておかわりを出してあげる。
ちなみに今作っているのは焼き豚。今までは煮オークが多かったので今回はちょっとだけ変化を付けてみた。と言っても工程も味付けもそれほど大きく変わるわけではないので、ニールには不思議そうに首を傾げられたけどね。
焼き豚は煮る前にや表面を焼いているから!と説明したら、「それは主さまの作られる<角煮>と何が違うのですか」と聞かれて返事に困った。
なんとなく、気持ちの問題なんだよ~。飽きない為の!
ちなみに今回は塩豚も仕込んでみたよ。ブロック肉に満遍なく塩をすり込み、ラップの代わりにスライム皮をぴったりと巻いて、インベントリから取り出してテントの横に設置した冷蔵庫の中に入れるだけ!のお手軽品。
冷蔵庫をインベントリに入れると時間が止まってしまうから停車している時は忘れずに冷蔵庫取り出さないといけないけど、それ以外は放置しておくだけだから簡単だよね! 簡単すぎてオースティンの贈ってくれた冷蔵庫の半分を塩豚が占めるくらいに仕込んじゃった。おいしく熟成しますように!
「アリス! アイスボールのクリーン添えをおかわりなのにゃ!」
「アイスをおかわりなの~♪」
「はいは~い! ……今日はやけにアイスをいっぱい食べてるけどお腹は大丈夫なの? 凍らない?」
「「だいじょうぶ」なのにゃ!」
実はさっきから、ライムの食べるアイスボールのおかわりが5回を超えている。
夫妻がテントに入ったあと、ライムは一度従魔部屋に入り大量の肥料をインベントリ内に出してくれた。今日の解体で得たオークの廃棄部と今まで体内に貯めていた栄養で作ってくれたらしい。
それが終わって出てきたライムは、今度はアイスボール(に、【クリーン】をかけたもの)を食べたがり、最初は何も考えずに希望どおりに出していたんだけど、だんだん心配になって来た。
肥料を作り過ぎたせいで熱でも出ているのかとライムの額(らしきところ)におでこを合わせた私を見て、
「主さま? ライムお兄さまはお元気ですわ」
スレイが朗らかに笑う。ライムも、
「きょうはいっぱいがんばったからエイヨウホキュウのひなの」
と笑っているから、私の気にし過ぎのようだ。たまにはこんな日もあるだろう。
どれだけアイスボールを食べても、ライムがお腹を壊すことはない!とハクが断言してくれたので、安心してアイスボールのおかわりを出し続け、調理の合間にはハクや皆に勧められるままに(高い方の)ワインを空け、気が付いたらいつの間にか眠っていたらしい。
両側をニールとスレイの大きな体に挟まれて、温かくて気持ちがいい目覚めなんだけど、何かが違う。
いつもなら私の体の下に潜り込んでクッションになってくれているライムと、首元で私を温めながら寝ているはずのハクがいなかった。
ニールとスレイに聞いたら「散歩では?」と笑って言うんだけど……。
野外で私が寝ている間にライムが私のそばを離れるなんて、これまではなかったんだ。ハクだって、敵を狩りに行くとき以外はいつだって側にいてくれた。敵を狩りに行くときだって、私が気が付く前に戻って来ていたし……。
なんとなく胸騒ぎがして、ニールやスレイが引き留めるのを聞かずに私は結界の外に出た。
月明かりの下、やっと視線の先に2匹を見つけた私は駆け寄ろうとして……。
一瞬だけ足を止めてしまう。
「………………ライム?」
視線の先のライムの体はいつもの可愛らしい丸いフォルムではなく、地面にべちゃりと広がっていて。それは自分の意思で変形している時の様な形態にも見えなくて……。
「………ライム!!」
一言で言うと、❝生❞を感じられない姿になっていたんだ。
91
お気に入りに追加
7,544
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
魔力無しの私に何の御用ですか?〜戦場から命懸けで帰ってきたけど妹に婚約者を取られたのでサポートはもう辞めます〜
まつおいおり
恋愛
妹が嫌がったので代わりに戦場へと駆り出された私、コヨミ・ヴァーミリオン………何年も家族や婚約者に仕送りを続けて、やっと戦争が終わって家に帰ったら、妹と婚約者が男女の営みをしていた、開き直った婚約者と妹は主人公を散々煽り散らした後に婚約破棄をする…………ああ、そうか、ならこっちも貴女のサポートなんかやめてやる、彼女は呟く……今まで義妹が順風満帆に来れたのは主人公のおかげだった、義父母に頼まれ、彼女のサポートをして、学院での授業や実技の評価を底上げしていたが、ここまで鬼畜な義妹のために動くなんてなんて冗談じゃない……後々そのことに気づく義妹と婚約者だが、時すでに遅い、彼女達を許すことはない………徐々に落ちぶれていく義妹と元婚約者………主人公は
主人公で王子様、獣人、様々な男はおろか女も惚れていく………ひょんな事から一度は魔力がない事で落されたグランフィリア学院に入学し、自分と同じような境遇の人達と出会い、助けていき、ざまぁしていく、やられっぱなしはされるのもみるのも嫌だ、最強女軍人の無自覚逆ハーレムドタバタラブコメディここに開幕。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
さこの
恋愛
ある日婚約者の伯爵令息に王宮に呼び出されました。そのあと婚約破棄をされてその立会人はなんと第二王子殿下でした。婚約破棄の理由は性格の不一致と言うことです。
その後なぜが第二王子殿下によく話しかけられるようになりました。え?殿下と私に婚約の話が?
婚約破棄をされた時に立会いをされていた第二王子と婚約なんて無理です。婚約破棄の責任なんてとっていただかなくて結構ですから!
最後はハッピーエンドです。10万文字ちょっとの話になります(ご都合主義な所もあります)
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~
青依香伽
恋愛
ルイーズは婚約者を幼少の頃から家族のように大切に思っていた
そこに男女の情はなかったが、将来的には伴侶になるのだからとルイーズなりに尽くしてきた
しかし彼にとってルイーズの献身は余計なお世話でしかなかったのだろう
婚約者の裏切りにより人生の転換期を迎えるルイーズ
婚約者との別れを選択したルイーズは完璧な侍女になることができるのか
この物語は様々な人たちとの出会いによって、成長していく女の子のお話
*更新は不定期です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる