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護衛旅 集落 5 冒険者ギルドにて
しおりを挟むギルドマスターの苛立ち交じりのため息が、ギルド内に静寂をもたらした。
私が冒険者だと知って驚き騒いでいた冒険者たちや、元職員の処分を不服として声を荒げていた冒険者たちが一斉に静かになり、ギルマスの次の言葉を待ったからだ。
……腹黒そうではあるが現場とは馴染みのなさそうなギルマスだと思っていたから、以外なほどに影響力(もしや人望?)があってびっくりだよ!
ギルマスは周りの反応に特に気を留める様子もなく、少しだけ面倒そうに話し始めた。
「ギルド内で冒険者同士の乱闘を禁じている理由はなんだ?」
その質問に、元職員の処分に異論を唱えた冒険者は不貞腐れて答えなかった。代わりに近くにいた冒険者が、仕方なさそうに答える。
「基本的に俺たち冒険者は一般人よりも力や魔力が強い。だから争う時には周りへ被害が及ぶことが多い。ギルドで冒険者同士が争って依頼の為に訪れている一般人などを巻き込んでしまった場合、大怪我を負わせる可能性があるからだと思っているが……」
「まあ、そんなもんだ。あとはくだらない喧嘩で大怪我を負い、冒険者人生を棒に振ることにならないように、や、建物への被害の弁済の為に無理な依頼を受けて儚くなる冒険者が出ないように、など色々と理由はあるが。
だが、争いを禁じているだけで、一方的な暴力を黙って耐えろなんて規則はないぞ?」
つまり、喧嘩はダメだけど振って来た火の粉は遠慮なく払って良いってことだよね。一安心だ。と思っていたら、ギルマスの話は続く。
「それに魔法を使ったり魔物をテイムしているからと言って、どうして冒険者だと決めつける? 騎士や衛兵、傭兵である可能性もあるだろう? 雇い主の代わりに依頼にやって来た用心棒の可能性だってある」
つまりは、元職員が私が名乗る前に<冒険者>であると決めつけたことも、ギルドの職員としては不適格だったと?
「もしも彼女が依頼人だったらどうするんだ? 彼女に絡んだ冒険者たちはギルド内で依頼人に暴力をふるった上に罵声を浴びせ、それを見ていた職員は謝罪するどころか依頼人に対して一方的に見当違いの処分を突きつけるという愚行を犯したことになる」
ギルマスの話を聞いて、私に絡んできた冒険者のパーティーメンバーは一斉に顔色を悪くした。もちろん絡んできた張本人はもう、真っ白だ。
……うちのハクとライムに返り討ちにしてくれたから、もう私は怒ってないけどね?
ここまで聞いてやっと事態を理解したらしい冒険者の男は、ギルマスに頭を下げてすごすごとギルドを出て行った。どうやら仲良しだったらしい、元職員を慰めに行ったのかもしれないね。
なんとな~く、閉まるドアを眺めてからギルマスに向き直ると、
「君が声を挙げてくれたおかげで仕事が1つ減った。礼に部屋でコーヒーでも出すぞ?」
ニヤリと口元を歪めたギルマスが私に向かって小さな声で言った。
どうやら厄介払いのお手伝いをしたことになるようだ。
礼は不要だと首を横に振ると、ギルマスは軽く頷いて踵を返す。近くにいた職員さんにぼそりと「便宜を図ってやれ」と言ってくれたので、これをお礼の気持ちとして受け取ることにした。
「本日は同のようなご用件で?」
ギルマスに声を掛けられた職員さんが、私に向かってにっこりと微笑みを浮かべて用件を聞いてくれたので、
「前の街でギルドに行った時に、タイミングが悪くてポーションや薬類が不足してる時に大変なことがあったからここのギルドの様子を見ておこうと思って。足りないようなら販売するわよ?」
と答えると、ギルマスルームに戻りかけていたギルマスがぐるりと勢いよく振り返り、
「あんたっ! ここに売れるほどの大量のポーションを持っているのか!?」
「買う買う買う買うっ! 俺たちに買わせてくれっ!」
ギルド内が騒然となった。
……みんな、怖いから、ちょっと落ち着いて欲しいな。
特にギルマス?
「あいつ! クビにするだけでは手ぬるかったか! 罰則金を払わせるべきだった!!」
なんて叫ぶのはやめて。結構本気で怖いから!
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ありがとうございました!
大福の家族の心配をしていただいた読者さま、ありがとうございました!
少しずつですが回復してくれているので、執筆もがんばれそうです。
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