女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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<従魔>って、なんだっけ? 1

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「【アイスニードル】! ……こんな感じ?」

「完璧です! 行くぞ、オデッタ!」

「ねえ、アイスニードルって上から降ってくるものだっけ? 店のお客の話では、掌から出て標的に向かって飛ぶって……」

「そこは、ほら、アリスさんだから」

「そっか。アリスだものね」

 使い慣れた【ウインドカッター】ではなく【アイスニードル】を使っている理由。それは偏に依頼人の為。でも、

「きゃあ! 見て見て、アルフォンソ! 綺麗な状態でこんなにいっぱい!」

「ああ。これは良い値で売れるぞ。また解体の腕が上がったんじゃないか?」

「ふふっ、数をこなしてるからね♪ ねえ、アリスも見て~! とっても綺麗な糸よ」

 彼らに向けた背中に嬉しそうな声が掛かるけど、私は絶対に振り返らない。周囲を警戒しているフリ(【マップ】で周囲に敵はいないことを確認済み)をしながら、頑ななまでに背中を向けたままだ。

 だって、

「オデッタ。アリスさんに無理を言ってはいけない。さあ、つま先を落とすから少し離れて」

 そう言ってアルフォンソさんが振り上げた斧を落とす音が合計8回。つま先ひとつに何度も斧を振り下ろしている訳ではなく、ひとつのつま先につき一振り。つまり、合計8個のつま先。

 ……そう、背中にある魔物の死骸は<タランチュラ>。蜘蛛の魔物だ。

 初遭遇は少し前。林の側の道を進んでいる時にそいつはふらりとやって来た。

 マップスキルのお陰で魔物(敵意があるもの)が近づいて来ていることはわかっていたんだけど、ハジメマシテの魔物だったからどんな魔物かわからなかったんだ。だからその姿が見えた時には悲鳴を上げながらウインドカッターで真っ二つにし、マップ上でそいつが死骸の色になったことを確認してから放置。そのまま目を背けながら横を通り過ぎた。

「タランチュラの糸はお金になるのに採取しないのにゃ?」

 私が蜘蛛を嫌っていると知っているハクも、❝一応は言っておこう❞程度で私がタランチュラ素材をスルーすることを見逃してくれる。まあ、上位種のアラクネーの素材をすでに持っているからだろうけど。

 でも、思わぬところに敵がいた。

「えっ!? あれタランチュラじゃないの? ちょっと、アリス! どうして素材を放って行くの!? 馬車を止めて!」

 ……依頼人であるオデッタだ。

 彼女は私が上げた悲鳴を聞いて、最初はどんな魔物が出たのかと怯えたらしいが、私が魔法を1発放っただけでその後は警告の声も上がらなかったことで安心して、倒された魔物がどんな魔物だったのかと興味津々だったようだ。

 当然、倒された魔物に近づいたら馬車を止めると思っていたのに、私が通った後にタランチュラの死骸を見つけて驚いたらしい。私が、

「上位種の素材があるからいらないの」

 と答えると、

「え? 私たちは絶対欲しいっ! 止まって、止まってーっ!」

 オデッタは大声で私を呼び止め、アルフォンソさんは馬車を止めてしまう。

「そんなモノ、私は預からないからね? さあ、先を急ごう?」

 死骸でもタランチュラとは距離を置きたい私が断っても、

「え……? じゃあ、今ここでチャチャっと解体して糸と爪だけ回収するから、ちょっとだけ待って! ……売り上げの6…7割をアリスに渡すから、この素材を回収させてーっ!」

 即、交渉を持ち掛けてくる。逞しい彼女に感心しながらもすげなく断ろうとしたその瞬間、

「ニール、スレイ、止まるのにゃ!」

 うちの可愛い筆頭従魔しゅせんどハクが私の敵に回った。

「止まらなくていいからね!」

 素早く、ハクとは反対の指示を出したのに、なぜか止まってしまうニールとスレイ。後ろの馬車からあがる歓声を聞きながら、

(あれぇ? さっきまで彼らがこだわっていた序列って、何だっけ?)

 と思ってしまうのは、当然だよね!? 











 1匹分の素材回収だけで終わると思っていた私の希望を込めた予想は、依頼人夫妻がタランチュラの解体中に近づいてきたもう一匹のタランチュラのせいで狂ってしまった。

 彼らに気が付かれないように、無詠唱で林の中に放った【ウインドカッター】。

「ギッ…」
「えっ?」

 せっかく上がりかけた悲鳴を飲み込んで無詠唱で倒したのに、断末魔の声を上げたタランチュラ(やつ)のせいで、オデッタに気が付かれてしまったんだ。

「ねえ、アリス? もう1匹いたりするよね?」

「ん~……? うん。いるけど、林の中で危ないから諦めた方が良いよ? 私はここから動く気はないし?」

 依頼人に嘘を吐くわけにもいかず、とりあえず必死で言い訳した私の努力を無にしたのは、

「ぷきゅ!」

 うちの従魔の序列2位。でも世間では最弱の魔物である、可愛い可愛いライムだった。

 ぽよんぽよんと可愛らしく跳ねながら依頼人夫妻の元へ行くとその場で3度ほど跳ね、ゆっくりと林の中のタランチュラの元へと移動を開始する。

 その姿を見た依頼人夫妻は、

「ねえ、スライムが案内してくれるみたいよ?」

「ああ。か弱いスライムが案内してくれるなら、危険は少ないってことだと思う。アリスさん! すぐに回収して戻ってきますから、ちょっとだけ待っていてください!」

 嬉しそうにライムの後を追って行ってしまった。

 そして、林の中でどんなやり取りがあったのか。

 ❝すぐに戻る❞の言葉通り、アルフォンソさんがそのまま持ってきたタランチュラを解体しながら、

「こんな所までタランチュラが出てくるなんて、きっとこの林はタランチュラの宝庫だと思うの! 本当なら怖くて近づきたくないはずなんだけど……、アリスがいれば平気でしょ? もっと採取していきたいわ!」

 オデッタが放った言葉に、

「にゃーっ!(7割にゃ!)」

 すかさず鳴き声で返事をしたハクがちょっとだけ恨めしい。

 言葉は通じていないはずなのに、

「6割……、7割ですか? う~ん……、もしも、この糸がもっと良い状態で採取できるなら、7割、いや、8割お出しできますが」

「にゃにゃん!(8割で成立にゃ!)」

(アリス! 蜘蛛の腹を切らないように倒すのにゃ!)

 何故かハクとアルフォンソさんの間で交渉が成立してしまい、私がどんなに嫌だと言っても従魔たちの耳には入らない模様。

 ……私の可愛い<従魔>たち。ちっとも従ってくれないのに<従魔>って呼ぶの、おかしくないかな?
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