676 / 754
出発前の下準備 6
しおりを挟む今回の私の疑問。❝いつの間に?❞❝どうやって?❞
話だけならギルド間で使える水晶通信がある。でも、見た限り推薦人のサインはそれぞれ筆跡が違っているので、当然当人が書いたものと思われる。
もちろん、この国(この世界共通かも?)ではお手紙を届けるのに<ナイトバード便>があることは知っている。モレーノお父さまやマルゴさんへの手紙を届けてもらったからね。
だから今回もそうだと思うんだけど、ナイトバード便を使ったにしても、ラファエルさんから聞いていた話からするとここに届くのがちょっと早すぎると思うんだ。
という疑問を解消してくれたのは得意気に口角を上げていたギルマス、ではなく、やっぱりサブマスだった。
推薦人たちに信認証を届けていたのは、推測通りのナイトバード便。でも、ただのナイトバード便ではなく、たくさんいるナイトバード達の中でも早さと持久力がトップクラスのエリートナイトバードのみで構成される、<ナイトバード超特級便>を利用したそうだ。
水晶通信で推薦者たちの在宅確認を取りその日に合わせて超特急便を飛ばした、と簡単に言うけど、ジャスパーの現ギルマスや前ギルマスはともかく、通信用の水晶のないネフ村のオスカーさんの所にはいきなりナイトバードが飛んで行ったことになる。
いきなり突拍子もなく信認証などが届いた上に推薦人のサインを求められて、さぞ驚いただろうと思ったんだけど、そこはジャスパーで事情を聞いたマルゴさんがオスカーさん宛に手紙を書いてくれたので、すんなり話は通ったらしい。
それにしても<ナイトバード超特急便>か……。さぞかし経費が掛かったことだろう。そんなにお金を使ってしまってこのギルドは大丈夫なのかと心配すると、
「ああ。この件でうちが出したのは2回分の<水晶通信>代金と、ここからジャスパーまでの<超特急便>の費用だけだからな。大したことはないさ」
サブマスは軽く笑う……。
なんだか嫌な予感がして詳しく話を聞いてみると、今回のように特定の冒険者に対して<信認証>を発行する場合、不正防止を兼ねて、推薦人のいる各ギルドが自分の所から出した経費としてきっちりと証拠を残すことにも意味がある。と教えられた。
<信認証>欲しさに多額の賄賂と経費を自分で持った冒険者が過去にいたらしい。
そこまでして欲しい物なのかな? 私には使いどころがイマイチ想像できないんだけど……。
ただ、そうすると……。現ギルドマスターたちはギルドの経費として落とせるけど、前ギルドマスターのオスカーさんが使った経費はどうなるのか? ネフ村からラリマーへの距離が一番費用が掛かるのに、まさかの個人持ちなの!? と、思ったら、本当にまさかの個人持ちと聞かされて一瞬目の前が暗~くなった。
ちょっと! 私の大切なマルゴ&オスカー家に何させてくれてるの!? そんな大金を使わせてしまったこと、どうやってみなさんにお詫びすればいいの!?
一瞬だけパニックしかかったけど、(今度ネフ村に行った時にこっそり返そう)と決めて顔を上げたら、
「受け取らないと思うぞ?」
ニヤリと笑うサブマスと目が合った。
経費を受け取ったことがバレたら、今までのオスカーさんの華々しい功績に泥を塗るスキャンダルになると言われて、(……バレなきゃいいんでしょ?)と思った私は悪くないと思う。悪いのは、
「俺たちがバラす」
と言ったギルマス兄妹だ。
2人ともオスカーさんの弟子とか言ってなかったっけ!? 嬉々として師匠に迷惑をかける弟子なんて、どこの世界にいるっていうの!?
81
お気に入りに追加
7,544
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
魔力無しの私に何の御用ですか?〜戦場から命懸けで帰ってきたけど妹に婚約者を取られたのでサポートはもう辞めます〜
まつおいおり
恋愛
妹が嫌がったので代わりに戦場へと駆り出された私、コヨミ・ヴァーミリオン………何年も家族や婚約者に仕送りを続けて、やっと戦争が終わって家に帰ったら、妹と婚約者が男女の営みをしていた、開き直った婚約者と妹は主人公を散々煽り散らした後に婚約破棄をする…………ああ、そうか、ならこっちも貴女のサポートなんかやめてやる、彼女は呟く……今まで義妹が順風満帆に来れたのは主人公のおかげだった、義父母に頼まれ、彼女のサポートをして、学院での授業や実技の評価を底上げしていたが、ここまで鬼畜な義妹のために動くなんてなんて冗談じゃない……後々そのことに気づく義妹と婚約者だが、時すでに遅い、彼女達を許すことはない………徐々に落ちぶれていく義妹と元婚約者………主人公は
主人公で王子様、獣人、様々な男はおろか女も惚れていく………ひょんな事から一度は魔力がない事で落されたグランフィリア学院に入学し、自分と同じような境遇の人達と出会い、助けていき、ざまぁしていく、やられっぱなしはされるのもみるのも嫌だ、最強女軍人の無自覚逆ハーレムドタバタラブコメディここに開幕。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
【完結】番を監禁して早5年、愚かな獣王はようやく運命を知る
紺
恋愛
獣人国の王バレインは明日の婚儀に胸踊らせていた。相手は長年愛し合った美しい獣人の恋人、信頼する家臣たちに祝われながらある女の存在を思い出す。
父が他国より勝手に連れてきた自称"番(つがい)"である少女。
5年間、古びた離れに監禁していた彼女に最後の別れでも伝えようと出向くと、そこには誰よりも美しく成長した番が待ち構えていた。
基本ざまぁ対象目線。ほんのり恋愛。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
さこの
恋愛
ある日婚約者の伯爵令息に王宮に呼び出されました。そのあと婚約破棄をされてその立会人はなんと第二王子殿下でした。婚約破棄の理由は性格の不一致と言うことです。
その後なぜが第二王子殿下によく話しかけられるようになりました。え?殿下と私に婚約の話が?
婚約破棄をされた時に立会いをされていた第二王子と婚約なんて無理です。婚約破棄の責任なんてとっていただかなくて結構ですから!
最後はハッピーエンドです。10万文字ちょっとの話になります(ご都合主義な所もあります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる