女神の代わりに異世界漫遊 ～ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ？～

護衛依頼。選り好みも冒険者の権利です！ 3

　依頼票に載っていた最初の条件では、王都付近の集落までの護衛で依頼料は25万メレ。30日ほどを想定しているが、それ以上の日数が掛かっても増額なし。

　という、手を出すにはちょっとリスキーに感じるものだったんだけど、詳しい話を聞いて理解した。

　❝王都付近の集落❞とあるのは、目的地がまだ明確ではないから。商売をしていけそうな引っ越し先を見つける旅になるからだ。そりゃあ、期間も正確には決められないよね。

　でも、それだとあまりにも悪条件過ぎて引き受け手が見つからなかったんだろう。期間を25日ほどとしたうえで、1日1万メレと譲歩していた。……正直、あまり変わらないと思うんだけどね？　

　でも、100万メレしか使えない内の25万メレの出費が、2人にとってはとても厳しいものだということは理解できる。　ただ、移動するだけで資金の4分の1が無くなるんだからね。2人にとっては精いっぱいの金額なんだろう。

　この、一見、冒険者にとっては不利な依頼をディアーナが弾かずに私に見せたのには、きっと理由がある。

　もちろん、この夫妻に同情した。というのもあるだろうけど、私の担当さんはそれだけで私にこの依頼を見せたりしない。私にとって有益なものになる可能性があると判断したからだ。

　だから、私は私たちの利益を考えて交渉をしなくてはいけない。

　う～ん？　こちらからの要望はどんなものがいいかなぁ？
　なるべく双方が損をしないように……、と考えていると、

(道中に、おいしい魔物はいるかにゃ～♪)
(どうちゅうに、おいしいクサははえてるかな～♪)

(おいしくない魔物でも売ればお金になるから、手当たり次第にいっぱい狩るのにゃ！)
(おいしくないクサでもアリスのやくにたつモノがあるから、いっぱいいっぱいさいしゅしようね！)

　ハクとライムがヒントを出してくれた。

　うん！　これなら私たちにも依頼人にもプラスになるはず！

　護衛依頼としてはかなり変則的になるけどね？　受け入れるか却下するかは依頼人の自由なんだから、ここは遠慮なく…………。


　・依頼期間は依頼人が引っ越し先に選ぶ王都付近の集落に着くまで。依頼料は何日掛かっても定額の25万メレとする(ただし、ひとつの集落に滞在する期間は最長３日。前の集落に引き返す際は、別途１日１万メレを支払ってもらう)。

　・道中に襲って来た魔物や盗賊を討伐したら、その権利は100％私のものとすること(ただし、欲しい部位(おいしい魔物の肉以外！)があれば夫妻の買取を受け入れる)。

　・道中で私が気になる魔物や植物を見つけたら、狩り・採取の為の時間を取ること(もちろん、依頼人の安全は厳守する。その際に依頼人も採取をしたら、依頼人の不要分を買取可能)。

　・移動中の食事は1日3回を基本とし、各自で用意すること(ただし、希望があれば1日分を1人1,000メレで販売するよ！　夫妻が自分で用意して商品を積む為の容量を食品で潰すのとどっちが得かな？) 。

　・希望があれば馬用の食事を1日分500メレで販売する(ただし干し草はなく野菜のみになる。草が食べたければ、道中、その辺に生えている草で我慢してもらう)。

　・2日に１回１人500メレで【クリーン】を強制販売するので購入すること。ただし、泉などで水浴びをした日は購入不要。１日１回の販売も可(食事の前に手に掛けるクリーンは無料とする)。

　・依頼人が調理の手伝いをしてくれたら、内容に応じてアルバイト代を支払う(寸胴鍋いっぱいの芋の皮むき1,000メレ、中鍋いっぱいの玉ねぎのみじん切り1,000メレなど。詳細は別紙に)。

　・依頼人が１日分の薪を拾ってくれたら1,000メレで買い取る(もちろん薪拾い中も護衛は付けるよ)。

　と、今思いつくのはこんなものかな？

　これらを文書にして依頼人夫妻に渡すと、2人はあんぐりと口を開けたり、ギュッと眉間にしわを寄せたりしながら考え込み始めてしまった。

　今日、無理に返事を決めなくてもいいと伝えてから、私は席を立つ。

　とりあえず、ディアーナにお願いして、参考になるような簡単な価格表を作ってもらわないとね！