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お引越し準備 11

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 皆さん。早急に大金が必要なのに、手元にお金がなかったらどうしますか?

 親元に借りに行く? お金持ちな親御さんならそれもあり、かな?

 お友達に借りに行く? う~ん……、担保を預けた上で確実に近日返済でき、利息を1割以上付けられるのならありかもだけど……。私的にはなし、かなぁ。 

 金融業者に借りに行く? うん、これは最終手段に置いておきたいかな。

 という訳で、❝借りる❞が嫌なら❝稼ぐ❞しかないんだけど。

 普通にどこかで雇ってもらって働いても、短期間で大金を稼ぐのはなかなか難しい。

 でも、この世界にはとっても便利な組織があるんだ!

 それが<商業ギルド>&<冒険者ギルド>!

 何か新しいレシピがあるなら<商業ギルド>! でも、これは審査がある上に入金までに時間がかかる。

 何か買い取ってもらえるものがあればいいんだけど、不要なものはこれまでの金策でほとんど売ってしまった。

 そんな時には<冒険者ギルド>! 魔物素材で不要なものはこれまでの金策でほとんど売ってしまったのは商業ギルドと同じなんだけど、冒険者ギルドここは魔物素材を売るだけじゃない。<依頼>を受けてお金を稼ぐことができるんだ!

 という訳でやってきました、冒険者ギルド!

 ディアーナへの挨拶よりもまずは依頼ボード! めぼしい依頼は早い者勝ちなので、まずはさっさと割の良い依頼の物色を!と思っていたんだけど…………。

 ❝バンッ!❞
「出たよ出たよ! 35,000! 他はないか他はないか? これはそんじょそこらの造血薬じゃあないんだぜ? あの!! 期待の新人アリスさんお手製の造血薬だ!」

 ❝バンッ!❞
「来たね! 50,000! 次は誰だ? あのアリスさんお手製……、おや、そこのあんちゃん、アリスさんを知らないと? そうかい最近この街に来たばかりかい。 アリスさんといえばこの街の冒険者の中ではちょっとした有名人だ! 黙って立ってりゃどっかの国のお姫さまプリンセス! にっこり笑えば、貢ぎ物を持った野郎どもが列をなして街を一周するってくらいの別嬪さんだが、怒らしたらあんちゃんの知ってるどこの家のかあちゃん達よりも恐ろしい!! が……、それでも最後は聖女さまのように優しいってことで、熱烈な信じ…ファン! 熱烈なファンを日々増やしている、今この街のギルドで最も話題の冒険者だよっ」

 ❝バンッ❞
「良いね良いね! 60,000メレ! ノリの良いあんちゃんは嫌いじゃないぜ? そんなあんちゃんに大サービスだ! この造血薬の詳しい情報をタダで教えてやるよ!
 この、アリスさんお手製の造血薬は見た目良し、効き目良し、何よりも味がいい! えっ? 造血薬は死ぬほど不味いのが当たり前? 不味くない物はインチキ品じゃあないかって? チッチッチッ! あんちゃん持ってる情報が古いねぇ。 アリスさんの造血薬は❝不味くない❞ってのはこの街の冒険者たちが自分の体で試してるし、何よりもあの!<商業ギルド>が認めてレシピを売りに出す準備中ってぇ代物だ!」

 ❝バンバンッ!❞
「おっと! 出たね85,000メレ! そうだ、この造血薬のレシピはまだ販売前。 つまりこの機を逃がしたら、次はいつ手に入れるチャンスがあることか……。おっと!これは!」

 ❝バンバンバンッ!!❞
「100,000! 100,000メレが出たよっ! さあ、次はないか? 次はないか!?」

 突然<冒険者ギルド>で始まったオークション……、と呼ぶより逆バナナの叩き売り!みたいなノリの販売会。

 今テーブルをバンバンと叩きながら<造血薬>を高値で売ろうとしているのは、自称<金はないが腕は良い。金欠中堅冒険者>さんだ。

 依頼ボードに向かっている途中で声を掛けられた。

 私の作った造血薬を買いたいのだけど、装備品を新調したばかりでお金がない。どうか、なんらかの労働と引き換えに造血薬を2~3本譲ってくれないか?と。

 造血薬だったら新たに作った物(複製で数もそれなり)があるので、ここで小金を稼ぐのも悪くない。

 ギルドに卸すよりも直接お客さまに買ってもらう方が高値で売れるから、私の代わりにポーション類を売ってくれるなら、アルバイト代として造血薬を3本譲る。ただし、私の代わりにギルド内での販売許可を取ること。許可が取れなかったらこの話はなかったことに、と約束をして、私がパーティーの勧誘を受けているのでは?と様子を見に来てくれた私の担当職員シルヴァーノさんにポーション類を一旦預かってもらってから彼とは別れたんだけど。

 いくつかの依頼を選び、ディアーナに受付処理をしてもらってから向かった酒場しょくどうの片隅で行われていた、逆バナナの叩き売り……じゃない!オークション。

 気が付くと、

「もうないか? もうここで打ち止めか!? ここで気合を見せて高額買い取りをして見せたら! アリスさんのキス…は無理だろが、飛び切りの笑顔が付いてくるかも…っと!」

 ❝バンッ❞
「おっさん、男を見せたねっ! 105,000! おっと!」

 ❝バンバンッ❞
「ねえさん、気合が入ってるね! 108,000!! これならアリスさんも感激して握手のひとつも」
「110,000だっ」
「113,000だぞ!」
「115,000よっ」

 ❝バンバンバンッ❞
「良いね良いね! お次は誰だ!?  120,000メレって言ってみようぜ!! !? うぎゃわっ…!?」

 どこまでも値上がりしていく造血薬の価格に一瞬思考回路がショートしかけたけど、ハクが彼に飛びかかり、頬に力強いに肉きゅうキックを浴びせるのを見て慌てて繋ぎ直した。

「そこまで! 造血薬がそんなバカみたいな高額になるわけがないでしょっ!? あと、勝手に私の笑顔や握手をノベルティ代わりにしないで!!」

 彼の発言を早く否定しておかないと、私に火の粉が掛かって来てしまう。

 高く買い取って貰えるのはありがたいんだけどね? 次からまっとうな商売をするのに障りが出るかもしれないから、おバカなサービスはしないんだ。 私が彼に文句を言い終わるのを待って、私の自慢の保護者たちからも彼に一言……。

 ❝ばむっ! ばむっ!❞
「いてっ、いててっ!」
「ぷぎゅ~~~っ!(アリスはそんなにやすくないぞっ)」

 ❝バシッ! バシッ!!❞
「あがっ!? あががっ!!」
「ぶにゃあああああああっ!(アリスに触れたければ国家予算を持ってくるのにゃっ!)」

 ……抗議の❝かわいい❞攻撃と共に苦情が入る。

 ……ハクとライムの怒っている様子を見て、心がほっこりしたのは内緒だよ?

 だって、ハクとライムなら「握手くらいで商品の値段が上がるなら、どんどんサービスしてやれ」って言うかと思ってたんだもん。

 ごめんね? でも、私を大切に思ってくれているのが改めて感じられてとっても嬉しいんだ! 今日のごはんはハクとライムの好きなものを好きなだけ作ってあげるから許してね?
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